第4話 ~新しいクラスの憂鬱~

 A組になってから早1週間。俺ことひがし裕人ひろとは、早くも少しだけ新しい学校生活に嫌気がさしていた。

 その最大の原因は、クラスで五月蠅い女子三人組、橋本はしもと保田やすだ長山ながやま。もう既に「あたしらA組のエースだから~w」とか自称してるデb・・・おっと危ない、ええと、まあ、かなり体格のいい3人だ。この3人、中学校の時から五月蠅かったが、3人が同じクラスになったのはこれが初めてだと思われる。中3の時に五月蠅かった、というか羽目を外しまくっていた男子テニス部なんて今思えばかわいいものだ。当然毎日朝から夕方までクラスにいるわけだからストレスばかり溜まる。おとなしく本を読んだりしていても集中できるわけがない。


 今日は昼休みに3人に絡まれそうになったがB組に逃げ込んでやりすごした。帰りのショートホームルームが終わってから荷物をまとめて速攻で教室を出る。目指すのは、昼休みに逃げ込んだB組教室。B組の担任はショートホームルームが早すぎて一種の名物化している先生だから、もう教室には数人しか残っていない。

「お、裕人か」

「ん、今日も逃げてきたか」

そういって迎えてくれるのは亮と智明。こいつらさっさと部活行け。っと、俺自身も行ってないから人のことも言えないか。

「あ、東じゃん」

「今日あの自称エース実際クズ3人になにやられたん?」

「クズというと本当のクズに失礼だよねー」

亮と智明の2メートルほど右からそういって俺を見るのは、上村、岩永、立花の女子3人。こいつら確か高校でも放送部を続けるはずだが早急に部活に行く気はさらさらないようだ。

 そうやっていつもの<会合>に突入する。<会合>といっても内容はその日にあったこととか噂とかの情報交換とか、他愛もない話だ。15分くらいだろうか。人によっては長いと思うだろうが中3の時はこれ以上に長かった。今では誰もが忙しくなっており、そんなに時間はとれない。A組でのストレスを、こうやって放課後の時間で紛らわしているわけだから俺にとってもかなり貴重で大事な時間だ。

 誰かが「そろそろ部活行く?」と言い出すと、全員が名残惜しそうに、けれども一斉に荷物を持つ。中3の時からの習慣だ。最近この<会合>に参戦するようになった智明や普段は五月蠅いうるさい岩井も黙って倣う。すでに俺たちしかいなかった教室の窓を施錠し、カーテンを開ける。

「じゃ、また明日」

「うん。部活頑張ろ」

「てか今日ちょっと長すぎじゃねーか?」

「え、こんな時間?!」

「先輩たち絶対怒る・・・」

今日は慌ただしくお開きとなってしまった。

 っしゃ、と俺は小さく声を出し、弓道部の部室である弓道場に向かう。今は仮入部だが、さすがにこれ以上遅れるとやばい。先ほどの<会合>でリフレッシュできた俺は、廊下を軽くスキップでもするかのように歩き出した。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


4月14日(Thu)

 新年度初の<会合>があった。今日はあたし、美里、彩乃、古泉、東、内田の6人。誰だっけ<会合>なんて大層な名前決めた人。とりあえず今日はA組のブス共がかなりやばいことを把握した。どう隣のクラスから叩くか。考えておかねば。

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