第2話 ~クラス分けと仲間たち~

 いつもは遅刻ばかりする俺だが今日に限っては早めに校門を通過し、高1用の受付に向かう。受付に座っていたのは、

「え、山口先生?」

「なんだ。居たら悪いか」

「・・・いえ」

中2の時に担任をしてもらった山口やまぐち未沙みさ先生が何食わぬ顔で座っていた。貴女一応所属は中学校でしょ中1の受付にいるべきでしょうが普通。

「今日からお前も高校生だから勉強しろよ」

「(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ)・・・・はい」

この学校は中高一貫校だから、中高の先生方が同じようにあちこちで仕事をしている。そもそもなんで俺たち高校生まで入学式をやらなければならないかと思うが、ほんの6年前までは高校1年生から普通の中学校から受験して編入してくる生徒が半分いたそうで、その人たちのために内部から進学する人たちも巻き込んで入学式をやっていた名残だそうだ。めんどい。


 山口先生から渡された名簿を見て、自分の名前を探す。えーっと、は、ひ、・・・と、あったあった。前山佳樹まえやまよしき。さすがにこの単純な名前だと印字ミスはない。クラスはB組。っしゃ。場所はわかるからさっさと行きますk・・・

「前山~~~~!!」

背後から何か自分を呼ぶ声がした。振り返らなくてもわかる。この声は、

洸希こうき?」

「んなわけねーだろお前トモダチの声すら忘れたのかよ」

「え?あーすまんひがしか」

「すまんで済むなら警察は要らん」

「すまんで済まないなら世の中の警察忙しすぎだろ?!」

小学校時代同じ塾でなんだかんだで今でも話すひがし裕斗ひろとは、俺の知ってる人間の中では一番のツッコミ役なのだが、今日はどうしたことやら。

「お前何組?」

「A組。お前B組だろ?」

「何で知ってんだお前暇人か」

「その辺の情報覚えるのとか学生の基本だろ」

「なんだよその学生の基本って」

こいつ。上村うえむら立花たちばなの習性がうつったのだろうか。

「じゃあ聞く。りょう智明ともあきのクラスは?」

古泉こいずみ内田うちだか?B組だろ」

「どうせあてずっぽうだろ・・・なんだと、あっているだと・・?」

やはり、こいつは侮れない。正直適度な距離を保っておきたいがいいやつではあるから難しいところだ。敵に回さない限りこいつは安全だと思う。


 新しいクラスに入ると、すでに教室内は男女問わずあちこちでグループを作って騒いでいた。見回すと、あの五月蠅い岩永藍がこっちを向き、何を思ったのか盛大に噴き出した。あいつの思考回路だけは一生かけても理解できない自信がある。他にも古泉亮や内田智明など、そこそこというか普通に仲が良かった男子も結構いる。2人は俺に気づくと笑顔で手招きしてくれた。ありがたい限りだ。

 最初は勉強したくないしたくないとしか思っていなかったが、友達やクラスメートたちはほんの1か月前の中学校時代と変わらなかった。

___高校生活、どうにかやっていけそうだ。

 俺は落書きも何もない机を避けながら、亮と智明のいるところへ向かった。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


あたしのクラスはB組。同じクラスは前山と内田と古泉。仲がいい人間が男子しかいない。美里と伊織いおりはC組で彩乃あやの海里かいりはA組。女子はけっこうばらけた。それでもとりあえず高校生活やっていけそう。安心。

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