雑誌が人を選ぶのではない。

美容師と意思の疎通がうまくいったことがない。



自分のコミュ力の欠如が問題なんだ……と思っていた。というか、それがそもそもの原因である。雑誌かなんか開いて、「こうしてください」と写真を指さすのが一番良いとは聞いているものの、


いや、ムリ。


だって、「お前そんなにかわいくなれると思ってんのかよ(笑)」とか、

「髪型だけ似せても美人にはなれませんよー(笑)」的な、


美容師の嘲笑を(勝手に)感じるんだもの!!!!!



つーかどの程度の長さがあればこうなれるのか全く分からないし。

自分の現在の状況をそもそも、把握できてない。

そんな状態でさかしらに? オシャレな雑誌を手にして? 美女の写真をゆびさし? 「これになりたい」っておこがましいにもほどがある自分の願望を口にするわけでしょ???

そんな最終奥義使えるの、美女だけだから。

雑誌とか、美女しか装備できないアイテムだから。



と……思ってましたよ。うん。



考えすぎにもほどがあるんだよね。知ってる。さすがに、わかる。自覚してる。こうして文字で読んでみるとさ、自分の心の闇をまのあたりにした衝撃で、色々悲しくさえあるもんね。


ファンタシースターとかモンハンのキャラみたいにさあ、その日一日の自分の姿をコマンドで決められたら……いいのに……(白目)


毎回美容院で一万円捨ててくるこの悪循環。鏡の前で、「これに一万か……」とつぶやく悲しい習慣を捨て去りたかったこの数年。

ついに、運命の美容師に出会いました。


シャレっけのカケラもねえおっさん!!!

しょっぱなから「松坂桃李に似てるって言われない?」と馴れ馴れしいおっさん!!!(せめて女子に例えろ)

「かわいいかんじ? 美人な感じ?」とざっくりしたリクエストだけで「おっけーまかせて~」とざっくざく人の髪を剪定していくおっさん!!!


なのに……すごくあか抜けた姿にしてくれるおっさん……!!!


トキメキメモリアルってこういうゲームでしたっけ???

トキメキのあまり不整脈になりそうよ、あたし。


ああ、このド田舎にこんな逸材が隠れ住んでいるなんて!!! ワンダーランド・ニッポン! 八百万の神の国! ステキ! 一生ついてくわ!!




と、




思っていた美容師さんが亡くなった。





個人経営だったせいで、美容院自体も閉店。

……気に入ってたんだけどな。大好きだったんだけどな。

生まれてこの方ずっと美容室難民だった私がやっとみつけたお店……。


また難民として新規開拓したお店で一万を捨てる羽目になった今日、

鑑の前に立ち尽くして自分を見つめながら、いろんなことを考えている。

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