愛しかたにも作法があってな。

仕事帰りにメールで招待を受けた。


姪っ子の家だ。

私は高校生の彼女を溺愛している。




もう、顔を見れば何かを貢がずにはいられないほどカワイイ。


ゲーム実況が好きだと聞けばそれを視聴し、ポケモン通信がしたいと言われればカセットを買って2日で寝る間をなくして鬼のようにプレイし続け通信できる状態までこぎつけた。彼女が水タイプを選べば私は炎タイプを、彼女が草タイプを選べば水タイプを選び、育て抜き技を選び抜いて最終的に姪っ子ちゃんに色違いのポケモンを献上し、交換でいただいたポケモンはどんなものであれレベルを積ませて大切に育てている。



生まれたときから見ているともう可愛くて可愛くて、私なぞにできることはカネをばら撒き何かを献上することくらいなのでそれで彼女の笑顔が買えるならいくらでも札束を積むというか、ぶっちゃけ連載しているストーカー小説もこの迸る私のエナジーをモデルに書いているくらいの溺愛っぷりだ。我ながら気持ち悪い。実は、読み返してトホから自分が透けて見えて大変ドン引きした。



絶対ないと思うが、もし彼女がホステスになったら私は足繁く店に通ってひと月の稼ぎを全て彼女に注ぎ込むであろう。





彼女がまだ生まれたてのあかんぼだったときのことを覚えている。


私の膝くらいまでの身長で足元にじゃれついてきたときのこと、


一度手を繋ぐと食事時ですら離してくれなかったあのときのこと、


さすがに不便なのでそっと振り解こうとしたが5歳児の握力とは思えぬ力で握り締められておりびくともせず愕然としたこと、


いつも会えば笑顔で走ってきて全身でハグをしてくれるその力が明らかに年々増してきており、突撃→ハグの流れで軽く肺から空気が絞り出されること、


プレゼントを差し出すと嬉しそうに抱きついてまた離れなくなるのだがそのときアナコンダに捕食される動物の映像がなぜか脳裏に浮かぶこと、


こないだついにクラスの男子をすっぱ抜く握力数値で学年一位を記録したこと、





……?


……とにかく彼女は愛情豊かで、ちょっぴりたくましい素敵な女の子なのである。

ほんと。





そも、アラサーであり恋人もいない、友人付き合いもなかなか淡白な私に抱きついてくれる人は今や皆無。知らねば知らぬで生きていけるが、誰かが愛情もって抱きついてくれるそのあったかさを知ってしまえば、もうダメだ。

独り身が余計染みて悲しくなる。


そうして内心毎回泣きそうになっている私の気持ちなど露知らず、姪っ子は姿を見せるたび、全力で締め上げ……いや、抱きついてきてくれる。

ありがたいことだ。



「なにも買ってもらわなくたって、私はハムちゃんのこと好きなんだからね!」


と、


言ってくれる彼女の言葉に号泣しながら、私は今日も土産を買って会いに行く。



金で報いることができる気持ちではないと分かっているのに、それ以外のやり方を知らないあさましさである。

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