神様、私に送信ボタンを押す度胸を下さい。
電車で半時間ほどの街にいる友人から、唐突な連絡が来た。
「遊ぼう! 会おう! 暇だよね!!!」
そりゃ暇だけど。
「も~~~~なんか、さみしくって! いきなり呼びつけて会える奴があんたしか思い浮かばなかったー! これも万年孤独のアンタだからこそね!」
ほっとけ。
孤独じゃない、孤高だ。わたしは孤高なのだ。
この世界にひとりぽっちなんじゃない。世界に私しかいないだけなのだ。
とかなんとか、さみしさを理屈で塗り固める。
も、ガッチガチ。
アレだ、ここで「実は私もさびしいの」とか素直に言える性格だったならここまで孤高をこじらせる羽目になってなかっただろう。
周囲とウェイウェーイ☆ と軽いノリで肩組んで深夜の都会になだれ込むくらいの度胸があれば、今の私はもうちょっとした芸人とかになっていたかもしれない。
しかし、自慢じゃないが度胸もなければ素直さも皆無。
我ながら、孤高の素質、ありすぎ。
本とか出版してみようか? この孤高っぷりが高じて金が入るならぼっちにも意味があるってもんだ。
題して、「孤独のあなたが孤高になる方法」。
……世の中に面倒くさい意地っ張りが増えそうなのでやめよう。
そういうわけで、万年孤独と称される私のもとには、暇を持て余した友人たちがよく気まぐれにお誘いをくれる。
大抵「明日空いてる?」とか。
どんだけ暇だと思われてんの、私。
一応、社会人だっつーの。
まあ、空いてます。空けますよ。シフトに都合のつく職場ですからね。
そんでもってそういう急なお誘いをしてくるやつらって、大体が失恋とか結婚とかそういう孤高とは無縁の崇高な、こりゃもう崇高なお悩みを抱えて連絡してきてるわけでね。
イイイ(布団の端をカミながら部屋中転がりまわる)
他人の幸せばかり祝い続けて幾星霜。
他人ばかり見送り続けて幾星霜。
他人の幸せに逃げて行ったお金、幾数万。
もう、二十代の半ばである今から、溺愛する高校生の姪っ子の花嫁姿を見送る自分を思い浮かべ覚悟を決める今日この頃。
最近、ついにハッピーエンドの小説が読めなくなりました。
みんな幸せに終わるストーリーなんざあるわけねーだろこんちくしょう。
そういう卑屈な精神を着々と養い、
そういうことを考える自分に酔っていたら、
なんだか一人が楽しくなってきました。
いや、ほんと。
けっこういけるわ。
夕暮れ時のひぐらしの声とか、閉店間際の蛍の光とか、すげーしっくりくるようになってきた。
この胸の痛みとか、なんか、癖になってきたかもしんない。
孤独って……快感?
現実逃避のため部屋に未読の本がないと落ち着かないという病状が悪化し、どんどん床に積まれていく古本の山がこれ以上増えないうちに、友人各位に連絡しようと思う。
件名「さびしいから助けて」。
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