第10話 意志

「10秒動かないだと!? キサマ、私をナメているのか! それとも俺が怖すぎて『不死』なんていう頭のおかしいことを言いだしちまったかぁ? まあ、お前を今すぐ殺せばいいだけの話だ!!」

 私は少年の意図がわからない。本当に『不死』だとしても、なぜ自分の身を傷つけるような行動をするのだろうか? それか、あの化け物を倒す算段があるのか?


 少年はニヤリとした笑みを浮かべこう言う。

「じゃあ約束通り10秒数えるぜ。10、9―――」


「ならば、望み通り殺してくれるわぁぁあぅぁぁーー!!」


 化け物は鋭い尾で少年をズタズタに切り裂き、さらに追い打ちをかけるように肉片一つ残らないぐらいに攻撃した。結果、少年の体は血に混ざって、跡形もなくなった。


 私はあまりの光景に思わず嘔吐した。そのとき―――


 血に混ざって跡形も残っていない少年の体が徐々に形を成していき、元の人間の姿に戻ったのだ。 信じられない。私は驚嘆と共にこう感じた。これが『白い死神』の由縁か、と……


「もう10秒経ったよな? なあ、バケモン、驚いてないで答えろよ。」


「お前……人間なのか?」

 化け物の問いに少年はこう続ける。

「まあ、多分人間かなギリギリのところで。 じゃあ、バケモン、俺はお前に10秒間の猶予を与えたが、結果、俺を殺せなかったな。 次は俺の番だ。お前を殺す番」


 少年は化け物の前に飛び出し、ナイフで首の辺りを切ろうとした、瞬間だった―――


「ウィル、私を殺すんだ? またあの時みたいに、私を殺すのね。お願いだから、もう殺さないでよ!」


 化け物が少女の姿に化けた。ウィル? もしかして少年の名前なのか……?


少年の様子は、というと、苦虫を噛んだような表情になっていた。


「アーシャの姿になりやがって……お前、楽に死ねないぞ……」

 その言葉に少女になった化け物がこう言う。


「俺はお前の記憶を覗き込んだ。俺たちは異獣ガイズと呼ばれていてな、各々で特殊な能力をもっているんだ。俺の場合は『変身』と相手の過去の記憶が分かる能力だ。お前には辛い過去があるようだな。愛する人を殺したくもないのに殺し、信じていた人に裏切られ、人に殺され続けた過去がよ……。お前は恨んだだろう。この世界を…、人間をよ…。お前の心は闇に囚われ、永遠に癒えることのない絶望に沈んでいる。なあ、お前、俺と一緒に人間を皆殺しにしようぜ。俺の仲間になれよ。どうだ? いい考えだろう?」


 少年はこう返す。

「ああ、俺は人間を恨んでたさ。でもな、俺が殺した人間のためにもこの罪を背負い、生きていくと決めたんだ。その人たちのためにも……お前を殺す!」

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