第6話 衝突と真実
「う、嘘でしょ…。いやぁぁぁーー!!」
私は嗚咽しながら泣き叫んだ。昨日まで、あんなに元気で優しいおばあさんの変わり果てた姿に、どうしようもない後悔が押し寄せた。
おばあさんを助けることは出来なかっただろうか…。自分自身を責めた。
その姿を見た少年は驚き、こう言った。
「アンタ、もしかして死体を見るのは初めてなのか!? すまない。見せない方が良かったな。」
その少年は、おばあさんの変わり果てた姿に悲しみの表情すら浮かべていなかった。
少年の薄情な態度に私は腹が立った。
「何で、あなたはおばあさんのこの姿を見て、何も思わないのっ!! あなたは…、悲しくないの? ねぇ、答えてよ…。」
少年は口を開く。
「もう遅いんだよ。死んでしまった人間は生き返らない。悲しいが、これが現実なんだ。」
「やっぱり、あなたは殺人者ね。人の死をその程度としか考えてない、化け物よ。誰もがあなたみたいに割り切れないわ。」
彼にキツく言い過ぎたと後で思った。
「私はおばあさんの仇を取りに行く。あなたは逃げるなり、好きにすればいいわ。じゃあね。」
おばあさんを殺した奴を必ず殺す。奴はまだ、この周辺にいるはず。
「待てよ。」
少年は私を引き止めた。
「アンタさ、仇を取るって言ってるけど、その仇の場所に心当たりがあるのか? 復讐に我を忘れたら、仇が取れるもんも取れやしねぇぜ…。」
「あなたは何が言いたいの?」
私は彼の言葉の意味を知りたかった。
「だ・か・ら、俺ならそいつを見つけられるってことを言ってんだよ。」
彼はそう言うと、おばあさんの亡骸をじーっと見出した。
「なるほどな…。」と、彼は何かを得たかのように微笑んだ。
「どうしたんですか?」と私が問うと彼はこう答えた。
「いや~、これは人間が殺したんじゃないと分かった。ここをよく見てほしいんだが…」
彼は、おばあさんの首の切断面を指差し、こう言う。
「人間が切ったにしちゃあ、綺麗過ぎる。いくら、腕の立つ剣士でもこんなに綺麗に切れることはあまりない。しかも、この毛がおばあさんを殺したのは人間じゃないってことを物語っている。」
彼の手には、明らかに人間とは違う毛が握られていた。
彼はこう続ける。
「しかも、おばあさんの体はまだ温かい。まだ、死んで間もないってことだ。居るぞ、おばあさんを殺した奴がこの近くの森のどこかに…。」
私は彼と共におばあさんの家を出た。
絶対に許さない。そいつを…。
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