第4話 スープ
「二人、泊まらせてほしいのですが…」
と、私は宿屋のおばあさんに話していた。こんな夜更けに宿が空いてるとは、思わないがダメ元で聞いてみたのだ。
おばあさんが残念そうに答えた。
「すまないねぇ。もう空き部屋がないんですよ。」
「そうですか……」と私が宿を立ち去ろうとした時、おばあさんが喋り出した。
「ちょっとお待ち! 今から宿を探しても営業してないと思うよ。だから、私の家に泊まったらどうだい?」
おばあさんのご厚意を嬉しく思った。
「じゃあ、泊まらせていただきます。あなたもそれでいいですよね?」
と白髪の少年に諭す。
「別にいいですよ。俺は…。」
私たちはケスから少し離れた森の中にある、おばあさんの家に到着した。
「食べるものはスープとパンぐらいしかないけど、良かったら食べてね。」
おばあさんは私たちのために、食事を作ってくれた。
「ありがとうございます。食事まで用意してくださって、この御恩は忘れません。」と私はお礼を言った。
おばあさんはニコニコ微笑んでいた。
「いいんだよ。私もね、おじいさんに先立たれてから一人暮らしでね。あなたたちが来てくれたお陰で寂しくないよ。私はもう寝るから、もし用があったら起こしてくださいね。あなたたちは2階の好きな部屋で眠っていいからね。」
と、おばあさんは自分の部屋に眠りに行った。
「さあ、スープが冷めない間にいただきましょうか。」
私はスープやパンを食べ出した。少年もスープを飲んでいた。すると彼は涙を流していた。
私は驚き、彼に訊いた。
「なぜ、泣いているの?」
それを聞いた少年は涙を拭い、こう言った。
「俺にも、まだ涙が出るんだな…。」
彼の悲しみと嬉しさが混ざったような表情を私は忘れられない。
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