第3話 接触

「この辺は人が少ないと思ってたんだけどな。俺に何の御用でしょうか? 女騎士さん。」


少年の言葉を疑問に思った。なぜ、私が女騎士だとわかったのだ!?

私は少年に問う。

「なぜ、鎧も付けていない私を女騎士だと思うのですか?」


少年はニヤリと笑みを浮かべこう答える。

「そんなの簡単だ。まず立ち振る舞いや歩く音などから日々訓練しているということがわかる。あと、こんな夜更けに俺に用があるのは、賞金稼ぎぐらいなものさ。しかし、賞金稼ぎなら俺を寝てる間に殺そうとする奴らが多い。だから、賞金稼ぎじゃないという考えに至った。この町に居てると否が応にも噂話が聞こえてきてな。このタラデルには美人な女騎士がいるという噂がね。こういう理由から、アンタは、その女騎士だと思った。そしてアンタは「女騎士」というワードに興味を示し、質問してきた。アンタがこのタラデル唯一の女騎士イリカだろう?」


私は一杯食わされたような感覚に襲われた。少年の観察力と推理力には驚きを隠せない。

私は剣を向け、こう言う。

「いかにも、私がイリカだ。ひとつお前に問いたいのだが、お前が白い死神か?」


少年は訝しそうに答える。

「白い死神ですか…。確かにこの町に来てからは、そういうふうに呼ばれますが、僕は死神ではなく、人間ですよ。」


こんな皮肉を言う少年に私は腹が立った。

「貴様、殺されたいのか? もう一度問う。お前がザレムスを滅ぼしたという白い死神かっ!!」


少年は急に真顔になり「ああ。」と言った。


「貴様には、タラデル城まで同行を願おうか。」



少年はこう続けた。

「俺は牢に入れられて、いずれ斬首刑になるわけだろう。今日だけ、今日だけでいい。宿に泊まらせてくれないか? 寝不足で疲労困憊なんだよ。」


確かに最後の情けぐらいは懸けてやってもいいだろう。

「いいでしょう。今日は泊まらせてあげます。ですが、あなたが逃走を図ろうとしたら、その場で斬り捨てます。いいですね?」


「ああ、構わない。」

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