第8話 反魂の術
義経軍の宿営地。
闇に紛れて忍び寄る知成ら斥候たち。
「まさに源氏の軍勢……」
「と、知成さま、あれを」
部下が指さして注意をうながす。
ゲルから出てきたのは義経と弁慶だ。
「ば、ばかな!あれは義経と弁慶ではないか」
知成は怒りと恐怖に震えた。
「なぜこんなところにいるんだ」
「うっ!」
横にいた部下が頭を落とした。
「どうした?」
肩をつかんだ部下はすでに死んでいた。崩れた部下の首に刺さっている針が一本。
「これは!?」
「義経さまは、すべて承知よ」
カラス天狗が背後から声をかけた。
「うぬっ!」
振り向きざまに抜きはなった知成の太刀だが、カラスは宙に舞っていた。
針が知成の額に刺さり、白目を剥いた。
~~~~~
「ほう、知成ではないか」
義経が平知成の顔をのぞきこんだ。
縛り上げられた知成は胡座をいている。
「この男だけは眠らせました。起こします」
カラスが針を首筋に打ち込んだ。
「そう不機嫌な面をするな、頼朝に日本を追われた者どうしではないか」
「……」
憮然として横をむいている知成。
「なんとか言え」
弁慶が知成の肩をつかんだ。
「ぐうっ」
骨の砕ける音がした。
「ふん、まあよい。それよりも安徳天皇だ。あれは本物か」
鞘で顎をあげさせる。
「そう言うおぬしこそ、本物の義経か」
「どういう意味だ」
「衣川で討たれたと聞いているぞ。それにこの弁慶……西行法師が反魂の術で作った
「ふふふ、よく知っているな。いかにも衣川で死んだのはわたしの影武者よ。そして弁慶は西行が途中で打ち捨てたのをわたしが拾って完成させた。いまや不死身の鬼神だ!」
「さては禁断の術を使うたか。
「こやつ、知りすぎております」
カラスが手にした針を構える。
「鞍馬寺の魔王殿に賊が押し入り、秘仏に封印してあった
知成は挑むようにまくしたてた。
「さすがは元検非違使。では草薙の剣のことも、知っていると助かるのだがな」
義経が口を大きくあけると喉の奥から毛むくじゃらの触手が這い出てきた。
知成の悲鳴があがった。
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