第3話 奥州平泉


『奥州平泉』


 炎に包まれる高台の館。

その前で仁王立ちの弁慶。悪鬼の形相だ。



川岸から炎を見上げる義経主従。小舟が何艘ももやってある。

「カラスよ、泰衡をだませたようだな」


「影武者に義経さまの鎧をつけ、顔を焼いてまいりましたゆえ、しばらくは気づきますまい」

 黒いカラスのような影が松の樹上にいた。

「ただ弁慶はその巨体ゆえ、身代わりの立てようがありませんでしたが」


「黄金は?」

「はっ、すべて舟に積みました」

「泰衡の悔しがる顔が目に浮かぶわ」

「義経さまを裏切った罰です」


「義経さま、おそくなりました」

 茂みより現れた巨人弁慶。針鼠のように箭が刺さり、折れた槍の穂先や、手首のついた剣が身体中から生えていた。


「死んだふりをするのに手間取り、立ち往生でごまかしてまいりました」

「不死身の弁慶なれば、それは苦労したであろう」

 痙攣するように笑う義経。


「して、これからどこへ?」

「まずは蝦夷で兵をかき集め、そこから大陸に攻めこむ」

 義経は乗船した。

「皆のもの、出立じゃ!われに続け!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る