夜の空を眺めよう。

夜の空を眺めよう。


無数の高層建造物がその身体にブスブス突き刺さって、痛い痛いと呻いている。


夜の空を眺めよう。


無数の眩い人工の光がその身体を食い破り、痛い痛いと呻いている。


ここは東京。大きな街。たくさんの人。僕は田舎者。


天まで届くヒエラルキーはそのまま東京の高層建造物群のよう。ここは凄いところです。


いいオトコ、いいオンナ、お金持ち、高級車、高級レストラン、高級マンション、それらの象徴と細かいイデオロギーを剣にして、騎士達は日々騎士道精神溢れる決闘を繰り広げています。


そうかと思えばたくさんの庶民たちが、いかがわしい、生臭い諸所のあまり口に出したくない事情からたくさん傷ついて、その傷を癒すためにまたしてもいかがわしい、生臭い諸所に頼ってまた傷ついていきます。


僕はこの街で暮らす年数が長くなるほど、耐え難い焦燥と理由のない大きな不安に襲われ、脳神経はちぎれそうになり、吐き気は酷くなるばかりです。ここ最近で10kgは痩せました。そして時折、理由のない激しい怒りにも襲われます。周囲の物を殴りすぎて爪が剥がれました。


日々酷くなるばかりの強迫観念を抱きながらすごす日々は辛いです。薬はまだ飲んでいません。ニコチン、アルコール、カフェイン、それらも日に日に量がますばかり。


夜の空を眺めよう。


まるで星の詰まったバケツを夜の空にひっくり返したみたいに、星が縦横無尽に瞬くあの夜の空。


夜の空を眺めよう。


カエル、コオロギ、蝉の鳴き声を、少し冷たい夏の夜風が指揮する夜のオーケストラ。


ああ。あの夜の空は、幼き頃の僕が見た、ただの幻想?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る