4個目 仲間を増やすこと

マルディアの中心街に戻って、野菜やら果物やら買って、街を歩いていた。

「このくらい買えばいいだろ。」

料理は一様作れるが、人に食べさせるとなると少し抵抗する。

ユウヤは「食べられりゃ大丈夫さ」とか言ってたけど・・・

考えていたら、なにやら先が騒がしい。

人も集まってるし、何かあったのだろうか。

何か嫌な予感がする。人混みを抜けて見ると・・・

「こんな世界だから助け合うんだろ?」

腑抜けた声が聞こえた。見ると、ユウヤが大柄な男達に囲まれてた。

「俺達はそこの小娘らに用があるんだよ!お前には関係ねぇだろ!」

ユウヤの後ろには怯える少女と睨む騎士装備の女性がいた。

「女性が困っているのに助けないのは紳士として放ってはおけないからね!・・・ん?」

やべ、目があった。

ユウヤは目で訴える。「助けてくれ」と。

アホだ。だけど、このままにしておくのも面倒だ。自分は和解を試みた。

「あのー、何があったかよくわかりませんが、通行の邪魔なのでやめてもらえませんか?」

「ああ!?誰だお前?さてはこいつの仲間か?」

断じて違うと言いたい。

「ちっ、埒が明かねぇ。こうなったら決闘デュエルだ!」

決闘デュエル』。俗に言うPvPだ。

「確かにそっちのほうが簡単だな。よし!受けて立つ!ゴフッ」

ユウヤは自信満々で胸張って言った。私はその胸に右フックを食らわせた。

「おい。何やってんだ。」

「何って・・・人助けだけど?・・ぐはっ!」

足のスネを蹴った。

「あの・・・ごめんなさい。こんなことになってしまって。」

後ろにいた騎士装備の女性が声をかけた。

「大丈夫です。紳士足るもの、人助けは基本ですから。」

また謎のイケボ?で喋ってやがる。

「そういやなんでこんなことに?」

一番の疑問だった。

「えっと、私達があの人達に囲まれていたのを割り込んで助けてくれたんです。」

だがそれは後悔に変わった。

「勝てばいいんだよ勝てば!」

味方誤射フレンドリーファイアあったっけこれ?」

「怖いこと言うなよ!」

そんな話をしてたら、決闘デュエルの申請がきた。大柄な人達はこちらを睨んでいる。

「ここまできたら断れないよなぁ・・・」

嫌がりながら申請の許可ボタンを押した。

瞬間。強制転移され、場所は闘技場アリーナ

プレイヤー情報が表示される。2対5。敵は全員レベル60越え。

「全員前線職か・・・」

剣術士ブレイド二人、撃槍士バニッシャー二人、守護士ガーディアン一人。

こちらは前線の剣術士ブレイドのユウヤと後衛の妖術師ソーサラーの私。正直に言って不利だ。

「準備はいいですね?では・・戦闘開始ファイト!」

「ちょっと待て!早すぎないか!?」

戦闘開始の合図がなり、ほとんど無計画の状態で戦闘が始まった。

「はぁ・・・『シールドクラフト』!」

圧縮空気の盾をつくり、身を守る。

「よっしゃ!前線は任せな!」

お前しかいねーよ馬鹿。

「あの剣術士ブレイドやっちまえば、あとは簡単だ!さっさと終わすぞ!」

「前線を上げよう!『ディフェンスシフト』!」

守護士ガーディアンの敵がチームの防御力を上げる。

「こんなの余裕だぜ!『ベルセルク』!」

ユウヤが自己犠牲強化をして、突っ込む。

「喰らえ!『ラッシュスパイク』!」

怒涛の連続攻撃で、守護士ガーディアンのHPが減っていく。敵の顔も苦痛に見える。

「どっちが悪役だよ・・・おっと!」

咄嗟に身体を捻らせ、攻撃を躱す。敵の剣術士ブレイドが近くまできていた。

「ちっ、ひらひらと・・・」

流石にここまで近いと、不利だ・・・

「ちょっと離れてもらえるかな!『ヘブンスプレス』!」

目の前を魔力の力で爆発させ、敵を吹っ飛ばす。

「そのまま・・・『ボルトショック』!」

強めの電撃が降り注ぎ、敵の体力を奪う。

「ぐはっ、ちくしょう・・・!」

魔法の威力は絶大で、剣術士ブレイドの体力は瀕死まで削った。

「そらよっと!」

ユウヤの攻撃を受けた守護士ガーディアンの体力がゼロになり、その場から動かなくなる。

「よし!まずは一体!」

そう言ってユウヤは撃槍士バニッシャー二人と、剣術士ブレイドに立ち向かった。

「馬鹿!そんな体力じゃ負けるぞ!・・・『ブリザードゲイン』!」

氷の刃が剣術士ブレイドの体力を奪い、戦闘不能にする。あと三人。でも高火力を持つ撃槍士バニッシャー。二人となるとさらに気をつけないといけない。ユウヤの体力はあと三分の二だった。

「馬鹿な奴め!いくぞ!『ブレイクインパクト』!」

二人の撃槍士バニッシャーが高威力の技を発動させ、ユウヤに降り注ぐ。あれをまともに二発も喰らえば、いくら体力満タンの守護士ガーディアンでも無理だろう。だけどユウヤは違った。

「『ディフェンススイッチ』!」

攻撃力を捨て、防御力を上げるスキルを発動し、降り注ぐ攻撃をギリギリ耐えた。

「ちょっ、なんで死なねぇんだよ!」

「格が違うんだな!これは!『オフェンススイッチ』!」

逆に防御力を捨て、攻撃力を上げるスキルを発動しながら攻撃し、撃槍士バニッシャー二人の体力を一気に削る。

「まだまだ!『疾風迅雷』!」

いつかの森で発動した技を使い、敵二人を一瞬で戦闘不能にする。

「ひっ・・・こんな奴らに勝てる訳ないだろ!」

流石に無理と察したか、残りの剣術士ブレイドは武器を捨て、降参した。

「ふぅ・・ギリギリだったぜ。」

体力がほとんど無い状態だったし、無計画。明らかに危険だったけど、ユウヤのおかげで勝利した。

「馬鹿だったけどやるじゃん。」

こうして、この世界に入ってから初めての決闘デュエルに勝利して、人を助けた。


「えっと・・・助けてくれてありがとうございます!」

「すごいね!あんなに劣勢だったのに!」

深々と頭を下げて、感謝した少女と勝利に驚く女騎士が声を掛けてきた。

「ふっ・・・あんな奴ら大したことありませ・・ぐふぉ!?」

「すみませんうちの者が迷惑かけちゃって。」

ユウヤの脇腹に肘打ちしといて、謝っておく。

「いやいや迷惑だなんて!むしろ感謝だよ!助けてくれたし、すごいものも見せてもらったし!」

騎士装備の人がそう言ってもらえると少し照れる。

「うーん何かお礼をしたいんだけど、君達は何がいい?」

お礼なんていらないと言おうとしたら、

「それじゃあ、一緒に住まない?うちの家の部屋空いてるからさ!」

私の家だって言ってるだろ。しかも初対面の人に同居求めるのはまずいだろう。

「え?・・・えーと・・・」

女の子の方は当たり前の反応をする。でも、

「そうね。宿暮らしは大変だし、あなた達がいいのなら。」

「「ええ!?」」

女騎士の方まさかのOKだった。思わず女の子と同時に声を上げてしまった。

「マジですか!?いやー、言ってみるもんだな!」

こんな奴の話に乗るなんて、もしかしたらこの女騎士の人は馬鹿なのだろうか?

「そうだ。自己紹介がまだだったね。私は、リサ。そしてこの子は私の妹のリナ。」

「ど、どうも。」

この二人は姉妹でゲームしてたんだ。兄弟がいない自分にはわからないことだけど。

「次はこっちだな。俺はユウヤ。こっちは・・・」

自分の名前を自分で言おうとしたら、

「・・・・女装癖があるサキだ。こいつ、リアルじゃ男だから・・・・」

「おい。ユウヤ。決闘デュエルしろ。」

どうやらこいつは今殺らないといけないらしい。

「うえぇマジ!?って本当に申請きたし!」

「断った瞬間お前を捨てていく。」

「これ俺がボロボロにされるのが見えるんですけど!」

「大丈夫。腕が2本無くなるだけだよ。」

「怖っ!超怖っ!笑顔だけど目が笑ってねぇぞ!」

「あと三秒で決めろ。決闘デュエルで死ぬか、今死ぬかを。」

「もう殺人犯だよお前!くそ!こうなったら返り討ちにしてやる!」

困惑している姉妹を無視して、1体1で決闘デュエルすることになった。


開始早々最強魔法を発動させ、わずか三秒で決闘デュエルは私の勝ちになった。


「マジで死ぬかと思った・・・」

家に戻ってきた私たちは、ボロボロのユウヤを無視して、家の部屋割りを確認していた。

「ずいぶん立派な『マイハウス』ね。本当にいいの?」

「ああ、仲間が増えるのはいい事だしね。」

「えっと、その・・・・」

「ああ、リナさん何かあった?要望なら聞くよ?」

「ああ、嫌なんでもないです!」

リナさんは両手を左右に揺らした

「しっかし剣術士ブレイド妖術師ソーサラーで、レベルは80越えかー。通りで強いわけだわ。」

「リサさんの職業は?」

「さん付けしなくていいよ。あなた達とそんなに年齢変わんないから。えっと、私の職業は守護士ガーディアンで、レベルは73。」

黄緑色の髪に鎧。まるで竜を狩るゲームのキャラに似ているのは黙っておこう。

「んで、リナの職業は施療神官クレリックで、レベルは51。」

施療神官クレリックは回復魔法に特化した職業で、回復魔法が使える人が戦闘にいるかいないかで大きく変わることがある。一様、妖術師ソーサラー施療神官クレリックほどではないが、回復魔法が使えるので、施療神官クレリックの職業の人はあまりいない。

「私、こんなにレベル低いのにここにいていいんですか?」

リナは不安そうに聞いてきた。

「大丈夫だよ。住む所にレベルは関係ないから。特に自分の所はそうしてる。」

さっきから不安そうな顔をしていたが、今の言葉で落ち着いたようだった。

「なに口説いてんだ?お前。」

「・・・・もう一回やるか?」

「すまん。聞かなかったことにしてくれ。」

所詮ヘタレか。

「まぁ、とりあえずこれから世話になるリナとリサよ。よろしくね二人共。」

「よ、よろしくお願いします。」

「おう!よろしくな!」

「うん、まぁ、よろしく。じゃあ夕飯の準備をしようか。」

こうして、新しい家に新しい友達が増えた。だけど、この世界は、少しずつ恐ろしいものが近づいているそんな気がした。

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