第八怪奇談 男のシンボル
僕は、姫華さんをリビングに寝かせた後、シャワーを浴びながらふと思う。
帰りたくねぇ。
だってさ、親父にもう帰ってくんな言われたの2、3日前ぐらいの話だろ?。
僕だって、もう二度と帰るもんかって思って東京に来たんだぞ。
それがさ、親父死んだんでちょっくら帰ってきましたなんて言える訳ないだろうがよ…。
そんなことを思っていると、鬼が脱衣所から何かしゃべっている。
シャワーの音でなんも聴こえなかったし、何よりめんどくささがあって適当に。
「うんうん、そうだね」
と、返す。
あぁ、考えんのも嫌になってきた。
そのまま、浴室のドアを開けて着替えを…、着れない。
おかしい、確かに準備していたはずの僕の衣服が消えている。
さてはあの鬼、僕の衣服をとっていたずらしたな…。
僕は、鬼がこれしか着るな。
と、言わんばかりに置いてある、タオルを腰に巻いてリビングを目指す。
ふつふつと、僕の心に怒りが煮えてくる。
僕は、勢いよくリビングのドアを開ける。
「僕の服どこにやったんだよ!」
「え?ごめんね、私わかんないや」
と、姫華さんが答えてくれる。
そっか、姫華さん起きたんだ…。
死のう。
僕が人生の終わりを感じた時、主犯が遅れてやってくる。
「あやつの服、穴が開いていたからのう。しかたなし、ワシが交換しておこ…」
そこには、僕の準備していた服ではない服を手に持っている鬼がいた。
そいつは、僕を見て口をあんぐり開ける。
「へ、変態がおるのじゃ!」
「ち、違う僕は!」
必死に反論する。
反論というか、正論だ。
「僕は、ただ服が無かったからこうやって来たんだよ!」
「ワシは、ちゃんと服の話をしたのじゃが?」
うえ!?そんな事…。
あ!あの適当に返したやつか!。
「と、取りあえず服をくれ!」
僕が一歩鬼に近づこうとした瞬間。
僕の腰に巻かれていたタオルが、地球の重力に吸われる。
その、白くふわふわなタオルは、重力の法則にしたがいリビングの床に落ちた。
それと同時に、僕の男のシンボルが鬼に目視される。
心の火が消える。
体が灰になって消えていくみたいだ…。
玄関のドアが開く。
「おい!夜中だろうが!うるせぇぞ!」
たぶん、この下の部屋の住人であろう人が登場する。
怒りを体現しながら、リビングに近づいてくる。
ま、まずい今入られたら…!。
容赦なくその男は、リビングに入りながら口を開く。
「たく、何やって…。ナニヤッテンノ?」
見た目は、30手前ぐらい。
パジャマを着ていて、見るからに今まで寝てましたよ感が出ている。
とりあえず、この人の誤解を解かねば。
「それは、僕にもわかりません。ただ、僕は変態じゃないですし頭もおかしくありません」
「そっか、ちょっと待っててな」
おもむろに、男はポケットに手を突っ込む。
そこから、ケータイという通信機器を取り出す。
そうすると、男は誰かに電話するみたいだ。
慣れた手つきで、操作をして耳元にケータイをあてる。
そして、つながったのか口を開くと。
「もしもし、警察ですか?」
「アウトぉおおおおおおおおおおおお!」
僕は、すぐさまケータイを奪い去り地面に叩き付ける。
「待ってくださいよ!なんで僕が通報されなきゃいけないんですか!?」
「あぁ!オレのケータイがぁあああああ!ふざけんじゃねぇぞてめぇ!」
「僕の問いに答えてくださいよ!意味が分かりません!」
「いや、え?だってさ、誰でも通報するってこんなの。大丈夫、警察の方が君の話をきちんと聞いてくれるからさ」
遠い目をするな、遠い目を。
「ほ、ほら二人ともなんか言ってあげてよ!」
僕は、二人の方向を見る。
も、もう、バカ鬼と姫華さんに頼るしか…!。
バカ鬼、放心状態。
姫華さん、気絶。
「二人に、君はナニをしたんだね?」
疑いが増した。
遠くでパトカーのサイレンが鳴り響く。
どうやら、僕の迎えが来たようだ。
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