第五怪奇談 その名は酒呑童子





 僕は、息を切らしている姫華さんを中に入れる。

 落ち着かせるためだ。

 姫華さんは、会話ができるような状態には見えなかった。

 

「肉はまだかのう?」


 僕は、汗を流す。

 冷や汗だ。


 こいつ、タイミングがbad過ぎるだろ。

 しかも、肉の補充を要求してくるとは。

 さては僕の分も食べたな?。


 …。


 って!、やばい今この状態の桜子を見られたら!。


 僕は、姫華さんの方を見る。

 姫華さんは、目を丸くしていてパニックの頂点に達していた。


「きゃあぁモゴモゴ…」

 僕は、すぐさまに発狂していた姫華さん口に手を当てて耳元でささやく。


「落ち着いて…。安心して、大丈夫ですから。こいつは、鬼みたいなんですけど害はないので…」

 先ほどまで、鍋を荒らしていたが秘密だ。

「これは、これは随分と畏れているのう…」

 酒が入っているからか、少し顔を赤らめながら桜子は口にする。

 そして、桜子は「それに」と前置きをして。

「第一ワシは。酒呑童子という名がある。桜子などと固有名詞をつけるでない」

 と、鬼は続ける。

 いや、桜子はおまえがいったからそう思っただけで…え?。


 今なんつった?


 酒呑童子?。

 日本三大妖怪の?。

 おいおい、調子に乗り過ぎだろうこの鬼。

 

 鬼の戯言は、置いといて僕は姫華さんをリビングまで案内する。

 

「ん~ホントなのじゃが…。まぁいいかのう…」

 

 鬼の小さい声は僕には聞こえなかった。


 

 




 

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