第四怪奇談 キムチ鍋
一
「生まれ変わった…」
家具が設置された、我が家を見て感動する。
取りあえず、夕飯にするかぁ。
今日買ったばかりの時計を見て思う。
もう5時だ。
「それにしても疲れた…」
そうして、僕の今日の疲れの原因に目をやる。
そいつは、スゥースゥーと気持ちよくリビングに寝ている。
今、枕にしているクッションは、今日出会った時からお気に入りになったらしい。
関係ねぇ、早く夕飯作らないと。
時間は有限だ、夕飯も有限だ。
僕は、今日買ってきた具材を冷蔵庫から取り出す。
今日の夕飯は、ちょっと遅れた引っ越し祝いをかねている。
初日にいろいろあり過ぎた。
いや、東京に来た時からか。
おっと、また思い出に
なんだか思考が夕飯からとうざかる。
なんでだろ?。
今日の夕飯は、キムチ鍋だ。
祝いの時は鍋にしよう、という経緯で鍋が確定し。
たまたま、キムチ鍋の素が安かったのでキムチ鍋だ。
鍋に水を入れる。
キッチンに備わっている、ガスコンロの上にそれを置き火をつける。
ちょっと、煮たって来たら肉を入れる。
時間をおいて、野菜と素を入れる。
キッチンにキムチ鍋のいい匂いが立ち込める。
お手軽クッキングだ。
「いい匂いじゃのう」
さっきまで、気持ちよさそうに寝ていた鬼がこちらにやってくる。
パッと見は、幼女そのものだがよく見ると
「ほら、皿を持っていけ。そうすれば速く食えるぞ」
鬼に指示を出す。
「うるさいのじゃ!」
鬼は、なんとすでに右手に忍ばせた箸で直接キムチ鍋を狙う。
マナーもへったくれもねぇ!。
そうして、肉をごっそりつかみ口にほうばる。
鬼は、肉を
「かぁー、うまい!」
と幸せそうに一言。
おいこら、ふざけんな。
「なにが、かぁー、うまい!だよ。おかしいだろ皿にわけろよぉ!」
と僕が指摘する間に更にこいつは、罪を重ねる。
やばい、こいつ肉のみを食い散らかす鍋を囲んだうえで注意すべきモンスターだ!。
このままでは、僕は肉を食べられない!。
僕の肉防衛本能に火が付く。
箸を携えて、いざ参る!。
そんな矢先。
ピンポーンと、インターホンが鳴る。
ちっ!、こんな時に…。
僕は、素早く箸をおき、鬼に「残しとけよ!」、と釘を刺しつつ玄関に向かう。
「はいはい」
扉を開け、出るとそこには、息を切らした姫華さんがいた。
そして。
「たすけて!」
と叫ぶ。
僕の東京新生活が狂い始める。
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