第5話 四拾参



【こんにちは】


「いらっしゃいませー!」


【これは何ともお元気そうで】


「ええ挨拶は元気良く!ですよ」


【なるほど、それは確かにそうですね】


「そうですそうです。私もね以前は違ったんですけど、うちの子に躾けてるうちに自然と声が出る様になっていって今じゃコッチが地になっちゃいましたよ」


【そうでしたか。お嬢さんもお元気ですか?】


「そりゃもう元気も元気。育ち盛りの食べ盛りなもんだから、こうしてパートを始めたくらいですよ」


【それは凄い。さぞかし沢山食べるのでしょうね】


「あははは。冗談をそんな風に返されたの初めてです。お友達に面白い人だって言われません?」


【そうですね、面白いとは言われませんがよく人と違うと言われます】


「確かに、何か人と違う独特な雰囲気がありますねえ。あの、ひょっとして前にお会いしてません?」


【え…ええ、以前に少しだけ。私の事を覚えているのですか?】


「ええと、すみません。何となくそんな気がしたんですが…ハッキリとは…」


【そうですか…いや、それが普通です。もう随分と前の話ですし】


「そうなんですか。あ、すみませんご注文はお決まりですか」


【そうですね普段食べ物を口にする事は無いのですが…ではたい焼きを1つ。おや中身が色々有るのですか?うーん…ではお勧めのをお願いします】


「それなら小倉がお勧めですよ。ここの御主人ね、元和菓子職人さんで手作りの餡子が美味しいんです。はいどうぞ」


【ありがとうございます。お代はここへ置きますね】


「はい、ありがとうございました」


【なるほど、コレは確かに鯛ですね。それに焼き立てで暖かい】


「ふふふ、良かったらお茶を淹れますからそちらのベンチへどうぞ」


【申訳ありません。せっかくのお誘いなのですが、次の予定がありまして】


「そうなんですか、もっとお話ししたかったのに残念です」


【あの…私はちゃんと話相手になれましたか?】


「ええ、是非またいらしてください」


【そうですか、それなら良かった。また来ます、それまでどうかお元気で】


「ありがとうございます。お客さんもお元気で」


「何かしら…懐かしい?久しぶりに親戚に会った時ってあんな感じなのかしらねえ」

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