8.平和ボケ馬鹿





朝の準備が一通り終わり

朝ごはんの支度をすることにした

私はまあまあ朝には強い方だから

もうあのけだるげな感じはないが

弥代くんは朝に弱いらしく

眠そうにウトウトしてる

時々するあくびで見える彼の八重歯は

鋭く尖っていた



「弥代くん、朝ごはん食べる?」


「お前冗談で言ってんのか?

俺は人間しか食えねえよ」


彼は自分のAdditionについて話してくれた




Addition:平成の大飢饉


彼は幼い頃にAdditionが発現し

人間しか食べれない体になってしまった

彼もこのAdditionは好きじゃないみたいで

出来るだけ死にたがってる人や

生きる希望がない人を

彼の判断で食べているらしい

食べるといっても丸々全て頂くわけではなく

体の一部分をもらって食べるみたいだ


なんだか思ったよりも良心的な食人鬼だった



「出来るだけ、最小限にしたいんだ

でもまあこっちだって命がかかってるし

食う時は容赦なく食う」


「意外といい食人鬼なんだね」


「……はは、なんだお前それ

食人鬼に良いも悪いもねえだろ 馬鹿か」



ベットの上にあぐらをかいている

彼は馬鹿にするように私を見て笑った


今は朝の9時42分 当然学校は遅刻

前にいた学校、外の学校の事だけど

そこは割と厳しいところで 遅刻すると

放課後残って反省文を書かなければいけない

一度だけやったことがあるが

生徒指導の先生たちに囲まれながら

延々と反省文を書かされるのは

正直地獄である


だけど今の学校、千条高校は

とんでもないほどゆるい

制服はあってないようなもんだし

途中で出入りする人たちや

血まみれの人だっている

それは今のところ弥代くんだけだが


血まみれ……

ハッと気づいた時にはもう遅かった



「あー!!ちょっと弥代くん

そこ、どいてどいて!!」


「あ?なんだよいきなり」


「やっぱり……シーツが血まみれ

もう、前洗ったばっかなのに!!」



弥代くんが座っていたところは

見事に真っ赤に染まっていた

まだ乾いていたからよかったものの

それでも洗わなければ

今夜私が寝るところは床になるだろう



「別にいいじゃん、シーツぐらい」


「良くない!!

お風呂貸してあげるから入ってきて」



お風呂あっちだからと指を指した

弥代くんは抵抗があるのか知らないが

なぜかちょっとたじろいで拒否をした

だけどそんなの関係ない

こっちもこれ以上汚されるのは勘弁だ



「え、それはお前」


「つべこべ言わないで!!ほら行って!!」


「え、あ、おう……」



結局半ば無理やり

弥代くんをお風呂に入れることに成功

その間に血で汚れた制服を勝手に洗った



「(怒られるかな、でも汚いし)」



洗濯機のスピードモードのボタンを押し

洗濯物が出来上がるのを待った



「あ」



着替え、どうしよう

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Addition ねこち @Re_rgrg

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