4.何かしらの決意




私のAdditionは「透明化」

そのままだけど、自分自身が透明になることが出来る

全く皮肉というのはこの事だと思う

存在感が薄い人間に

こんな能力を与えるのか、神よ



「……消えた?」



消えた私を不思議に思い

彼はキョロキョロと辺りを見渡す

私は痛む右耳を抑えながら

這いつくばりながら外へ出た

溢れ出る血が指の間をダクダクと線を引いた



「……匂う、まだ近くにいる」



彼は私を追う気だ 鼻が利くらしい

今度こそ食べられる



「(血っ……!!はやく逃げなきゃ!!)」



どこに?


視界に入ったのは屋上

そこにある煙突のようなものからは

黒い煙が黙々と出ていた

あそこなら匂いをごまかせる……?


どこへ行っても逃げられないのは知っていた

だけど本能では理解してなかったの






今日来たばかりの学校を全力で駆け抜ける

もちろん屋上への場所なんてわからず

ずっと同じようなところを駆けていた


ふと窓の外をみた

なんということだ

彼が私を探しているではないか

しかも目までばっちり合ってしまった

透明化はそんなに長くは持たない

次使用できるのは私が死んだ頃であろう

彼は笑うわけでもなく

私を見流し走っていった

まずい、このままでは追いつかれてしまう




「屋上へ行きたいんですか?」


「!!」



さっきまでいなかった黒髪の少女がいた

私が気づいていなかっただけかもしれない

追われていることもあり

つい過剰な反応をしてしまったのが

悪かったのか、少女も驚いている



「……あいつに追われてるんですね 可哀想

屋上へは奥の階段を

ずっと登っていけば着きます」



どいつもこいつも

かわいそうだけで助けもしない

「ありがとうございます」と礼を言い

屋上へ向かった







屋上へ辿り着くと嫌な匂いが鼻を刺激した

なんだこの匂いは

鉄を溶かして腐らせたようなひどい匂いだ

だけど、ここなら血の匂いは届かないだろう

一安心という訳ではないがどこか気が緩んだ

ドッと疲れが押し寄せ

息を切らしながら倒れた

ただ逃げることだけを考えて

必死だったんだから、当たり前だ



「(どうしてこんなに必死なんだろう)」



ふと頭をよぎった

同時に音がした



「……」



息を呑んだ

彼は触れていなくてもわかる

冷たい顔でそこに立っていた



せめぎあう感情を黙らせ

私は心の温度をなくした




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