『夢空間』は、夢の途中。

 その日の帰り道。

「何があったん?」

「何もなかったし!ってこれ、いつまで聞く気?」

「ちひろがちゃんと答えるまで。」


 亜矢が、私と原田先生との間柄を気にしている。


 別に、初めてあった人に、「『夢空間』を知ってる。」と言われ、警戒しない方がおかしいだろう。


 でも、心の奥底で何かがモヤモヤしている。

 このモヤモヤって、なんだっけ。


 まぁ、考えるだけ無駄か。



「ただいまー!」

「あっ!お帰りー!ちーちゃん!」

「もう、その呼び方、やめてってばぁー!」



 帰宅しゅーりょー。

 そして、ごはーんターイム!


「ねぇ、おかあひぁん。」モグモグ

「どうした?あと、ちゃんと食べ終わってから喋りなさい。」

 ン.ゴックン「あのさ、原田基弘ってひと、知ってる?」



 すると、お母さんからは、予想だにしない答えが返ってきた。








「あぁ。もっくん?」








 ……もっくん?








「ちーちゃん、覚えてないと?ほら、私の!」









 お母さんの弟?


 私の中で、すべてが繋がった。


 もっくん……もとい、原田基弘は、私の母の弟だったのだ。そういや最近全然会ってなかったからな。


 そして、私がずーぅと言っている『夢空間』。


 あれを創ったのが、原田基弘だったのだ。



 すべてを思い出した。


 記憶喪失でもしたんじゃないかってくらい、忘れていた。



 原田基弘のこと。

 夢空間のこと。


 そして……私の初恋のこと。






 私は、原田基弘のことが、






 


「お母さん!もっくんの今の住所、知ってる?」




 私は家から飛び出した。


 お母さんから住所は聞いた。


 すぐ近くの高層マンションだった。


 インターホンを押す。


 手が震える。


 でも、今すぐ伝えたい。


 そのまっすぐな思いが、彼女を動かした。



「はーい。原田です。」

「ハッハッ か、神崎で、す。」


「ちょっと、待ってろ。」


 先生が降りてきた。


「どうした?こんな時間に。」

「あのね!先生!」









「私、全部思い出した。」

「先生が、あのもっくんだってことも。」

「先生が、夢空間を創ったことも。」

「そして、私が、先生を…………







 ずっと好きだったこと。」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る