第10話 カルトの悲劇 Ⅲ

 それから2時間かけ作戦の概要や人員配置が説明された。


 アーガイルは立ち上がり両腕を円卓に突き立て宣言する。

「作戦説明は、以上だ。各々持ち場に戻り次第、人員配置を速やかに行ってくれ。諸君らの健闘は、そのまま、この街の命運を握るものであると心得よ。解散」

アーガイルのその一言で、全員が会議の始まりと同じように一斉に立ち上がり一礼し、それぞれ去っていく。司令官達が去りヘレンとマルティナ、アーガイルだけがその場に残った。

「アーガイル様、彼女の事は伏せたままでよろしいのですか?」

マルティナのその問いに少し疲を感じたのか眉間をつまみながら、アーガイルは落ち着いた声で答えた。

「余計な混乱を避けるためだ。彼女を敵に差し出すような暴挙に出るものも居ないとも限らない。」

マルティナは少し不服そうに頬を膨らませる。そこには、見た目通りの幼さが感じられた。

「ティナちゃんは、まだ若いなー」

それを見て、ヘレンが茶々を入れた。それに対して、マルティナはより不機嫌そうに

「ヘレンおじさん、子ども扱いしないでください。私だってアーガイルさんの側近になったんだから」

「ヘレン…あまりからかってやるな。ティナも今の俺の立場は総司令官だ。さて…」

アーガイルは、呆れながらに仲裁した。そして、真面目な声音を漏らしヘレンを真っ直ぐに見据え

「ヘレン。お前にはもしもの事があったとき、例の少女を連れて逃げてもらいたい。必ず守り切れ______」

ヘレンは、一瞬いつものおちゃらけたへんとうをしようとして、息をのんだ。アーガイルの眼孔は鋭く、すべてを震え上がらせるような凄みがあった。その表情を見て息をのんだ。その表情は、冗談などではなく本気でそれをヘレンに求めている表情だった。

 ヘレンは黙ってうなずくことしかできなかった。

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