足を踏み入れた
モア達が向かっていた場所は、学校だった。
向かっている途中で、予想は付いていた。
――僕が『ここではないどこかに行きたい』と願った場所。
その場所に、モア達は向かっていた。
モア達がよじ登っている校門をよそ目に、僕達は学校の裏に周った。裏側にあるグラウンドに入り、グラウンドのトイレから校舎に入る。ここには鍵が無いため、知っていれば侵入することは容易なのだ。
校舎内にも何匹かモアがいて、皆同じ場所に向かって歩いていた――僕達のクラス、教室である。
「あった……!」
清水さんが『それ』を指さして言った。
「あれが入り口だよ」
教室の真ん中あたりに、巨大な黒い穴があった――否、穴というよりは円だ。巨大な黒い円。物体ではなく、透けて見えて、通り抜けられそうなのだが、どこまでも深い闇のような奇妙な円。
「……どうして今更になって、モアがあんなに出てきて、入り口まで出てきたんだろう」
清水さんはつぶやくように言う。
僕にはなんとなく――なんとなくだけど、その理由に予想が付いていた。
「……とにかく僕はあの穴に入って、ラスボスを倒してくればいいんだよね。そしたら、全部元通りに――元通りの世界になるんだよね」
僕がいたくないと願った世界に。
「ラスボス――うん、そうだね、そうだよ。あっ、わたしも行くよ?」
「えっ……? 清水さんは行く必要無いんでしょ? それに、危ないし」
「ここまで一緒に来たんだから、最後まで付き合うよ。それに、ここにいた方が危なそうじゃない。ラスボスがいるとしても、水石くんと一緒のほうがきっと安全だよ」
清水さんはそう言うと、僕の手を強く握った。
「わかった。じゃぁ、付いてきて。清水さんは……僕が守るよ」
うん――と、清水さんは頷く。
僕達は二人揃って、黒い穴――『どこか』への入り口に、足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます