二章

女子中学生が一人で

 失踪者は順調に増え続けていた。同時に、変死体の発見も増え続けた。


 連続失踪事件と、連続殺人事件――さすがの警察も、この二つの事件に何らかの関係性があると考え、学校も一時閉鎖となった。


 遅すぎる対応だが。


 僕はというと、今現在も町中を走り回って化け物退治に勤しんでいる。


 学校閉鎖となったからには、もちろん外出も控えるように言われているのだけれど、そういうわけには行かない。僕が化け物退治をやめてしまったら、被害は拡大するばかりだ。


 実際、学校が閉鎖になってから化け物退治の効率も上がり、被害者は減っている。警察は自分たちの迅速な対応のおかげだと思っているようだが(まあそれも確かに間違っていはいないのだが)完全にこの僕のおかげである。


「――くらえっ」


 すぱっと化け物の首が飛ぶ。


 本日4匹目。


 こいつらを倒すのも、慣れたものである。人間ほどの大きさの生物をナイフで殺す、といった経験を僕以上にしている中学生はいないだろう。もはやプロフェッショナルだ。


 これだけ何度も奴らと戦っているのだが、僕は一度も危険な目にあったことがない。危険な目にあっている人を目撃することはあっても。


 ――奴らは、僕を襲ってこないのだ。


 あれだけ躊躇なく人を殺し、人を食べる化け物が、僕には一切興味を示さない。僕に気づくとこちらに目はやるのだが、気にした様子も無く無視を決め込む。奴らにとって、僕が唯一の敵であり、危険であるはずなのに、その僕だけを、全く意に返そうとしないのだ。


 理由は、分からない。


 しかしまあ、それは僕にとって都合のいいことで、特に気にすることではないのだが。


 ――次は……家の近くだな。


 気配を感じ、次の現場へ走る。


 平日の昼間であるというのもあるのだが、事件が公になってから、さすがに町の人通りは減っている。住宅街ですら、ほとんど人は歩いていない。


 なので――そんな住宅街を人が歩いていると目立つ。


 ――ましてや、女子中学生が一人で歩いているなんて。


「あっ! 水石くん!――なにしてるの? こんなところで」


「し、清水さん!? 清水さんこそ、ひとりで歩いてちゃ危ないよ」


「それは水石くんも同じでしょ?」


 いきなりの清水さんの登場に、僕は焦る。心臓が跳ね上がる。


「あ、もしかして、またナイフを振り回して戦ってるのかな? 学校が休みになって、被害者が減った理由って、やっぱり水石くんのおかげ?」


 ――心臓が飛び跳ねて肋骨を突き破るかと思った。

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