きっとまずい

 一週間ほど経った。


 僕の生活はそれほど変わらない。


 普通に学校に行き、適当に授業を受け、休み時間は寝た振りをして過ごす。


 清水さんとツバサ君には避けられている気がするけれど、もともと滅多に話すことなど無かったのだ。何も変わらない。


 下校途中にあの気配を感じれば、僕はそこへ向かい、未完成な人の形をした化け物を倒す。たまに頭部や上半身が食われた死体を見るが、もう慣れた。


 この町の行方不明者は日に日に増加している。頭部や上半身が無くなった死体も、いくつか見つかっているそうだ。もちろんそれは全て、僕が食事途中の化け物を倒した場所で。


 それでも学校が普通にあるのだから、やはりこの町の危機感は非常に薄い。まあ、そろそろ休校になるとの噂もあるようだけれど。


 この連続失踪事件、連続殺人事件――いや、連続食人事件か。これの被害者は日に日に増えていて、警察の話では現在100人近くになっているそうだ。相当な数だが、これでも、被害者の数は食い止められている。


 食い止めている。


 この僕が。


 毎日2匹以上、多い時は5匹ほど、事件の犯人に当たる生物を倒している。僕がいなければ、この町は既に全滅していたかもしれない。


 しかし、僕のやっている行為は、事件の進行を少し遅くしているだけに過ぎない。


 なんとか、他に手を打たないと、このままじゃ、きっとまずい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る