6
眩しい。見えるのは赤くて細い血管。わたしは目を閉じているのか。そう思って瞼を開こうとするけれど、なかなか開かない。辛うじてできた糸のような隙間から、白い光が入り込んでくる。生臭い変なにおい。声が聴こえてくる。そんなに必死に、誰を呼んでるの。
「ソウエン、ソウエン! しっかりして!」
あ、わたし? 呼ばれているのは、わたしか。そう認識した瞬間、右半身に強烈な痛みが走った。チカチカッ、と弾ける瞼の裏の星。こわい、これ、なに、どうして。ざらざらと乱雑に入り込んでくる映像。緑色。金色。ナイフ。哥哥。ハイド。あ、ああ、そうだ、哥哥がナイフ持ってて、知らない番号は、
『ごめん、ぼく』
、あ、あああ、痛い、肩、痛い。声が出ない。わたしの手を握る手。冷たくて力強くて、ああ、この手があれば大丈夫だと思う。叫び過ぎて息が苦しい。空気を吸い込むたびに右半身が痛く意識を保つのがつらくて、でも起きなきゃ。こんなに懸命にわたしを起こしている人がいるのだから。
「あ、あ……」
目を開けると、リゼがいた。涙にぬれた顔。必死にわたしのことを呼び続けている。応えなければ。そう思うのに、声がでない。ハイドが、どうなったか、きかなくちゃ、
「ソウエン……わ、わかる? 意識ある?」
あるよ。ちゃんとわかる。真っ青になって震えてるリゼに安心してよって微笑んで、ごめんね心配かけたねって、早くそう言うつもりで口を開くんだけど、口からはこれしか、
「ハ、イド……ハイ、ド、どうし、生きて、リゼ、おねがい、ハイドが……」
涙があふれる。どうしたの、あの子はどこにいるの。ナイフを向けられたの。あんな悪意、初めてみた。
「大丈夫、生きてるわ。あなたが守ったのよ」
あ、あああ。ならば、それならば……。
「よかっ、た」
光が消える。声が遠のいていく。
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