リンネの螺旋
兄1
その封筒に書かれていた住所と、街の名前が一緒であることに気付いた。そのあとのぼくの行動は早かった。
ソウエンはまさかジョーとぼくが『それ』に関わっているなんて思ってもいないだろう。彼女の勤める研究所が半年前にある程度の情報開示をしたこともきっと知らない。ぼくは研究者ではないから、本来ならば機密に近いその情報を知る権利はない。全てはぼくが手に入れた立場が幸いした。ぼくは必然的に『それ』の存在を知った。
ぼくは溜まっていた有給を利用し、一週間の休みを取った。妹に会いに行くよ、とジョーに言ったら、彼は特に怪しむでもなく「そうか」と短く頷いた。
ぼくは二日かけて遠出の準備をし、始発の汽車に乗るため、早朝にマンションを出た。エントランスを出たところで振り返り、その白い鉄筋コンクリートを見上げると、ここ四年間の彼との暮らしがなんだか嘘みたいに思えてならなかった。
ぼくは背広のポケットに手を突っ込み、中にある鍵を強く握った。不確かな幸せを確固たるものにするため、ぼくには戦う必要がある――。
罪でも罰でもやってくるがいい。
ぼくはその前方、いくらでも迎え撃ってあげるから。
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