初が多すぎて……意外と困りません!?

「うぅ。まさか、あんな展開になるなんてー。」


 私はそんなことを呟きながら、廊下を歩いていた。


 あっ、言ってなかったが、私のアルバイト先は、『コンビニエンスストア』なるものらしい。


「これが……『残念』?でも、さっきは……」

「ロアンちゃん!」

「えぇ!?武さん!?どうしたんですか?」


 なんと、向こうから走ってきたのは、高山…じゃなかった。武さんだった。


「えっと、さっきはごめんな。」

「いえいえ。全然気にしてませんし…」

「それで、さっきの続きなんだけど…」


 ドキッ


「今、聞いてもいいか…な?」


 え!? 今!? 今聞いちゃう!?

 私は軽いパニックに陥り…これが『パニック』ですか。じゃなくてー!


 やばいです!ちょっと、ドキドキがとまりませーん!ダレカタスケテェー!


「駄目、かな?」

「いえいえ!全然ウェルカムです!」

「ふふっ。ロアンちゃん、面白いね。」


 カーっと、自分の顔が赤くなっていることが分かります。


 これが『照れ』ですか。


「じゃあ、聞かせて貰えるか…な?」

「………はい。」


 ドキドキが止まらない。でも、今言わなきゃ。


「私と………」

「えっ?」



「私と付き合ってください!」



………うぅ。言っちゃったよ。私。


 二人の間に沈黙が流れる。……気まずい。


「あの、駄目、ですか?」


「………えっと、」

「あっ!やっぱり、後で聞かせてください。まだ、心の準備が出来てないので……」




「分かった。」




 分かっちゃうのー! 自分でいって何だけど、そこは引き留めて欲しかったな~なんて。


「……じゃあ、また後で。」


「はい。また。」


……気まずいよー!でも、仕事頑張らなくちゃ。


「じゃあ、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

「まず、ロアンちゃんには……」

「はい。……」


 私は簡単なレジ打ちを教えてもらいました。


「………っと。これでいいですか?」

「うん。ロアンちゃん、飲み込みはやいね。」

「いいえ。それほどでも……。」


 実は、教えてもらっている最中、ずっと、長い指に目を引かれていたのは内緒。


「じゃあ次は……」


 と言うように、私は様々なことを教えてもらい、次々にマスターしていった。


「……じゃあ、今日はここまで…と言っても、大体のことは今日教えたから、明日は、また細かいことを。」

「はい、ありがとうございました。」


 そして、今日のお仕事はおわり。……のはずなのだけど。


「じゃあ、着替え終わったら、裏口に来て。」

「……?なぜですか?」


 そう言うと、武さんは、私の耳元で、


「さっきの答え。」


 と囁いた。


 私は真っ赤になって硬直してしまった。


「じゃ、お疲れ。」

「は、はい~。お疲れさまです。」


 そして、私は着替え場所に戻っていった。


 シュル シュルシュル


 コンコン「開けまーす!」

「どうぞー。って、あれ?明さん?」

「やっほー。ロアン。調子はどう?」

「オールオッケーです。」


 この方は、前、実験所で『お世話係』としてついてくれた、坂口明さん。


「今日は、どうだったか?」

「まぁ、はじめてのことがたくさんありましたが、楽しかったです!」

「……そっか。よかったな。」



「じゃあ、私はこれで。」

「うんじゃ、お疲れ~。」


 そして、私は裏口に行く。


 歩く度にドキドキが高まっていく。


 今日は、初がたくさんあったな。


 そんなことを考えながら、武さんのいる裏口へと、足を進めていった。

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