快晴の土曜日
あの後、将吾はキララを家まで送り届けた。
「ありがとう。また明日」
家の前に設置されている、門のような柵の内側に入り、小さく手を振ったキララは、微笑んでいた。
「うん、また明日、おやすみ」
同じく手を振る将吾も笑顔を見せる。挨拶が交わされた後、キララはゆっくりと、家の玄関の扉の前まで行き、中に入っていった。
バタンッという、扉の音が聞こえ、中に入った事を確認すると、身体の方向を変え家路につく。沢山の色々な話をしながら歩いた為か、あたりはもう随分と日が落ちていた。
まるで、夢のような出来事だった。
告白を受けた側であった将吾だが、好きな子と付き合えた。という点では、キララと対して変わらない。
自然と足取りは軽くなっていた。まだ自宅までは10分ほど距離があるが、それほど、苦痛ではない。キララと将吾の家は、わりと近い方だった。今回の告白を受ける際、一緒に帰っていたのはそのせいでもある。
所謂、幼馴染み、というわけだ。
「キララとデート、キララとデート。」
軽い足取りは次第にスキップじみたものへと変わっていった。リズムをつけながら歌うように、そう何度も呟いた。夜道を1人で浮かれ、歩いている様は、なかなか不審だ。
「昼間は映画を見に行くとして、じゃあ夕方は?夜は?っていうか、恋人同士の初デートってどこまで許されるんだ?あー、わっかんねぇ!」
軽かった足取りは、少しだけ正常なものに戻ると、頭をガシガシと片手で掻きながら1人、悶々と考える。
彼はまだ18歳になったばかりだ。つまり、思春期真っ只中、それに付け加え、女の子とデートなんて人生で初めてなのだ。そりゃあ、考える事は多いことだろう。
「こりゃあ、家帰ったらプラン立てなきゃかなぁ」
少し俯きながら苦笑いを、浮かべポツリと呟いた。
*********
ーーー次の日、約束の朝がきた。
眠い目を擦りながら将吾は起床した。昨日の夜、いろいろ考えたが何も良いプランは浮かばなかった。髪はボサボサで寝癖が酷い。待ち合わせの時間よりもだいぶ早い時間にアラームをかけた。念入りな準備をする為だ。
ベッドに横たわっていた身体をゆっくりと起こすと、青を基調とされたベッドと机、椅子に少年漫画が並べられた本棚。六畳半ほどのシンプル部屋が瞳に映った。
将吾の部屋である。散らかっているわけではないが、片付けなきゃいけない程、余分な物もない。殺風景とも言える部屋だ。
ボサボサの髪を手ぐしで直しながら、自身の部屋の扉を開け、洗面所へ向かう。将吾の部屋は二階建ての二階。洗面所は1回の風呂場付近にある。極々、普通の一軒家だ。
蛇口を捻り、水を勢いよく出すと、両手で水をすくいバシャバシャと音を立て、顔を洗っていく。
洗顔、歯磨き、を終え、最後に前髪をポンパドールのようにしてピンで留めれば、御上 将吾の完成だ。
「よっしゃ、着替えて行くか」
頬を両手の平で叩けば、気合い注入完了。
幸い、今日は朝から両親は仕事で留守だ。独り言の量が多少、多くなるが、気にしない。それよりデートだ。
ーーーキララはどんな服で来るんだろう。
「セクシー系のピチピチの服だったりして、ぶはっ、はは」
1人で言って1人で想像して1人で勝手に笑う。そんな不思議な行動をしてしまうぐらいには、将吾のテンションはあがっていた。
お気に入りのジーンズにTシャツ、上にはシャツを羽織り、ハットなんかも被っちゃったりして、と手を伸ばすが辞めることにした。いかにも、決めてきました。っていうのも恥ずかしい。
「俺、人生初カノと初デート、いっきまーす」
玄関で、靴を履き、元気よく誰もいない家に対して、挨拶をして、扉を開けた。
うん、快晴だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます