19.結界展開
「だめ、間に合わない……来る……!」
「バリア」
カノンの声と同時に
そして直後、
「うおおおおぉぉ……!」
「くぅっ!」
「うっ……うぅぅっ……!」
ブレイズ、杏香、カノン、三人の悲鳴が響く中、カノンは一段と苦しそうにしている。魔法兵器にはカノン自身の魔力を使うからだ。カノンは相当な魔力量を持っているが、敵の
「まずい……わよね……!」
杏香が傍らのスイッチを押すと、
「くっ、結界が聞いてるとはいえ、生身じゃ長くは持たなそうね……でも、やるしかないでしょ!」
体が焼けるように熱い。それも普通の熱さではなく、炎以外の何か不気味なもので、体中を炙られているような感覚だ。これが
加えて、バリアから漏れた、目の細かい何かの破片が時折吹きこんできて、
「<光>と<圧>
視界一面に白い光の壁が広がる。辺りは一気に明るくなり、発射した杏香の目も目が眩むようだ。
杏香は、両手に持った属性銃で、
「光の属性弾はオリジナルなのに……!」
「あたしが自前で、こんな激レア属性弾使ってんだから、耐えなさいよおぉぉぉぉ!」
全身に火傷や切り傷を受けながらも、杏香は耐えている。
「ぐ……これは……!」
杏香の目の前の赤い光が、徐々に薄くなっていく。どうやら、耐え切れたらしい。
「……何とかなったみたいね」
杏香はは属性銃を腰に戻し、ハッチを閉じた。
「ふぅー……」
杏香が座席にぐったりと寄り掛かる。
「大丈夫か杏香!?」
「なんとかね、体中、傷や火傷だらけだけど、致命的に深いのは無いと思う。はー、服がまたボロボロだわ」
「か……可愛かったのに……勿体無い……」
杏香の通信機からカノンの激しい息遣いが聞こえる。
「コックピットは開けない方が良かったんじゃねえか?」
「色々とリスクをはらんでることは分かってるんだけど……今回は仕方ないでしょ、ブレイズ。こうしなけりゃ、やられてたかもしれないもん。それより、カノン、大丈夫!?」
「はぁ……はぁ……だ、大丈夫……」
杏香はその答えを聞いて不安になった。カノンは大丈夫だと言っているが、かなり息が上がっている。魔法でこれだけ息が上がるほど消耗したのなら、これ以上魔力を使えば命の危険がありそうだ。
「仕方ないわね。一か八か……」
杏香は手動で榴弾砲の射出角度を設定した。
「何やってんだ杏香!?」
「忠告されたばかりで悪いけど……」
杏香がコックピットのハッチを開け、榴弾砲を発射し、発射された榴弾砲に、属性銃の照準を合わせた。
「この射角なら、あの赤い光の根元まで届く筈だけど、本当に狙い通り飛ぶかどうか……」
そう言いながら、杏香は属性銃の引き金を引いた。
「<風>と<圧>
杏香は榴弾砲に
そのうえ、赤い光の発射装置がどれだけの強度を持っているかも分からない。榴弾砲が直撃しても壊れないのか、それとも多少コースを逸れても爆風で壊れる程度のものなのか……。
杏香は不安で仕方がなかったが、それが成功か失敗かは、次の瞬間の光景が物語っていた。
赤い光の発射装置があるであろう地点から、赤い光が発せられたからだ。その光は
榴弾砲は、赤い光の発射装置に命中したか、その爆風に巻き込んで破壊したのかは分からないが、いずれにしても、赤い光の発射装置を破壊するのには十分な威力は出せたらしい。。
「やった……カノン、大丈夫!?」
「う……杏香……」
カノンの声色が、目に見えてますます弱くなっている。
「意識が朦朧としてるみたい。早い所、医者の所へ連れてった方がいいわね」
「ああ。癪だが、先に戻らせてもらおうぜ」
「大丈……夫……」
「無理しなくていい。後はあたし達で何とかするから、カノンは休んでて」
「杏香も休めよ。あんなことして傷が浅いはずねえ」
ブレイズの言う通り、杏香の全身に出来てしまった傷には深いものもあるが、致命的な傷が無いことは、杏香自身で判断できた。
「大丈夫、この間のよりはマシよ。それに、あたしの場合、肉体的な怪我だけなんだから、意識の方は、はっきりしてるわ。むしろあたしも
「へっ、相変わらず凄えファイトだぜ。が、無理はするなよ?」
「分かってる。次にはもっと無茶な任務が待っているんだから、こんなところで無理してたら、体がもたないわよ」
杏香達は出来るだけ早くキャンプへと向かったが、カノンはその後、魔力の副作用で数日間、頭痛や吐き気に見舞われることとなった。
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