17.呪術の砲
「魔力充填最終確認完了! 秒読み開始! 発射まで十……九……八……七……六……五……四……三……二……一……発射!」
――オオオォォォォ……。
無骨な大砲から放たれた真っ赤な光が、低い唸り声のような音と共に、テルジリア軍の方向へと一直線に進んでいく。
――やがて、それが収まった頃には、そこの射線上には草すらも生えておらず、抉られた大地しか残されていなかった。そのすぐそばには、ぎりぎりのところで逃げ遅れた頭だけの
「凄いわ……」
「部隊一つが丸々吹っ飛んじまった……」
サフィーとブリーツが驚愕している。
「ブリーツ、再編成!」
ブリーツ達が、
「どわっ! 今度は何だよ!」
「榴弾砲!
榴弾砲によって、アーチャーウォーカー三体が被弾、うち一体が大破した。
「ま、まずいわ。アーチャーは一旦退いて!」
サフィーが叫ぶと、アーチャーウォーカーの集団は、後退を始めた。
が、その直後、二発目の榴弾砲が着弾してアーチャーウォーカーの数体が爆発四散し、更に砂煙の中からゼゲが数体なだれ込んできた。
ブリーツの隣で立ち止まって弓を打っていたアーチャーウォーカーが、ゼゲのマシンガンを浴び、地に伏した。
「ゼゲが増えてきたな。こんなに接近を許すのはまずくないか?」
「
「アーチャー連中、本格的に後退し始めたな」
「このままじゃ、やられる一方だからでしょうね。私達は後退する機体の補助に専念して、後はあの部隊に任せましょう」
「あの部隊?」
ブリーツが聞いた時、ナイトウィザードの横を、リーゼが高速で通り過ぎた。それは一体ではなく、複数体だ。
「ライトムーバーよ。敵が
「へえー、ウィザードエンチャンターの集団ってことは、マリーもあの中に居るのか。おーいマリー! 気を付けて行って来いよ! てか、俺が代わりに行ってもいいぞー!」
「さあね。最低限、
そう言っている間に、ゼゲがまた数体増えた。
「あのさ、ゼゲの勢いが止まらないんだが? あいつらが行っちゃったら、守りが手薄になって辛いんじゃね?」
「まーた楽すること考えてたでしょ。あの部隊は、あれが本来の目的で、今までは消費を抑えて戦ってたのよ。とはいえ、戦力が居なくなるのは間違い無いから、厳しくはなるでしょうね」
「まじかー……」
「とにかく、私達はここが正念場よ。アーチャーウォーカーに接近を許す前に、なるべく多くのゼゲを撃墜するのよ!」
「はいはい……」
サフィーは、アーチャーウォーカーを攻撃しているゼゲに急接近し二刀流で一刀両断した。
ブリーツも渋々、マシンガンを打っているゼゲにファイアーボールを打ち込んでいった。
手近なゼゲから次々と処理していく二人だったが、突然、ブリーツのコックピットに衝撃が走った。
「おわっ!」
ナイトウィザードに、ゼゲのマシンガンが命中したのだ。幸い、かなりの遠距離からで、大した被害は無い。
「あーっ! あのゼゲ、一発当てて逃げていきやがった! こっちは一発当たっただけでもどうなるか分からないボロに乗ってるってのに~」
「深追いは禁物よ、ブリーツ」
ブリーツが言ったそばから、サフィーが釘を刺した。
「はいはい、分かってますよ……でも、ちょっと憂さ晴らしはさせてもらおうかな」
ブリーツは、ナイトウィザードの両手を頭の前に突き出した。
「
ゼゲの上空に、突如、暗雲が湧いた。そして、その暗雲から雨のような稲妻が、暗雲を中心に、その一帯のゼゲを襲った。
ライトニングテンペストをうけたゼゲは装甲に傷を負い、またあるゼゲは関節部から腕部を引き裂かれた。
「ありゃ……これでも雷の中級魔法なんだがな」
「あんた、雷苦手なのね。エクスプロージョンよりも威力が低くない?」
「でも敵さんあんなに逃げてくぜ」
「それは単にライトニングテンペストが派手だからでしょ。それに、少なくとも、こっちに範囲魔法を使えるレベルの魔法使いが居ることは分かったんだから、逃げて当たり前だわ。あっちは殆ど近接仕様だし、ちゃんとした範囲魔法使いなら、勝てる見込みは無いもの」
これをきっかけにゼゲの勢いは弱まり、アーチャーウォーカーの後退はスムーズに進むようになっていく。そんな中、
「十三分後に二射目の
「
伝令係の声を聞いたサフィーは叫んだ。
「ちょっと待ってくれ、誰か補助魔法を一通り……いや、防御と速度だけ強化してくれればいっか。かけてくれー!」
ブリーツは、そう言いながら、戦場を右往左往している。
「ちょっと、このタイミングで何する気? まさかまたリーゼが壊れるようなことするんじゃないでしょうね」
「ま、まさかぁー」
「……滅茶苦茶嫌な予感がするけど……まあいいわ。私は先に退避するからね」
「おう。すぐ戻るからな」
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