41話「お風呂後に」

 大富豪の決戦が終わり、みんなが順番にお風呂に入った後、大富豪をやった場所と同じ場所に再集合となった。

 お風呂後ということもあり、みんなパジャマか部屋着に着替えている。美花は家でも使っている青を基調としたチェック柄のパジャマ。琴美はパジャマというより部屋着に近いが昼間の服装とは違く上下共に動きやすそうなスポーツウェアっぽい服。香奈枝もパジャマというよりは私服に近く、ハーフパンツにYシャツの上に薄いパーカーを羽織っている。冬香ちゃんはピンク色のもこもこした服を着ている。アニメとかでよく見るけど実際に着ている人っているんだなあ…。また女の子しかいないからなのか、シャンプーのいい匂いがこの空間には漂っている。

「さて、全員が揃った所でさっきの罰ゲームやっちゃいましょっか」

 全員集まって軽く雑談をしていたところ、唐突に美花が手を合わせながらとてもいい笑顔をしながらそう言ってきた。すごーーくいい笑顔をしているな…あれ絶対に何か企んでいるとか思えないんだよな…。

「くぅっ!ついにこの時が来てしまったかあ!」

 琴美が頭を抱えてオーバーリアクション気味に反応する。その様子を見て冬香ちゃんがくすくすと笑みをこぼす。香奈枝もにこにこしながらその様子を眺めていた。

「ついにきちまったなあ…。で、罰ゲームは何をするんだ?」

「ふっふっふっ。よくぞ聞いてくれました玲君」

「それは…どうも」

 美花はなんかどこかにいる博士みたいな反応をし、眼鏡をかけているわけでもないのに眼鏡をくいっとあげる仕草をした後、俺の方を指差し決め顔で罰ゲームの内容を告げてくる。

「ポッ○ーゲームをしてもらいます!!」

「「はあ!?」」

 俺と琴美は驚きを隠せなかった。そして琴美が美花に反論する。

「なーんでポッ○ーゲームなんだよ!」

「いや、楽しそうだから?」

「それなら他のでもいいじゃねえか!」

「そう…そんなに琴美が言うのならもうひとつ選択肢を与えるわ」

「お?なんだ?」

「昼間に玲が食べたあのアイスを食べるか、これかどっちがいい?」

「くっ…!」

 琴美がうろたえていた。確かにあの味を知っているものなら食べたくはない。だがしかし、もう一つの方はかなり恥ずかしい。……俺は琴美に選択権を譲ろう。もう俺的には罰ゲームなんだし無心でやればいいやと考えるとどっちでもよくなってきた。

「琴美選んでいいぞ」

「え…うーん……。じゃ、じゃあ…ポッ○ーゲームで」

 琴美は少し悩み、そちらを選択した。

 それを聞いた美花はそれはもう罠にはまった餌を見るがごとく俺達をほくそ笑んで、後ろに置いてあった袋からポッ○ーを取り出す。悪巧みしてるようにしか見えない…。

 そして美花はルール説明を始めた。

「ではポッ○ーゲームの説明をはじめまーす。ルールは簡単。お互いの口と口が近づく直前までやってもらいまーす。その判断をするのは私達三人でーす。もちろん途中で折れたりー、どっちかが顔を離してしまった時点でゲームオーバー、もう一回やり直しでーす。ではではどうぞ」

 そういって俺にまずはポッ○ー1本を渡してくる。

 そして俺と琴美は向かい合うと琴美が他の三人には聞こえないぐらいの小さい声で話しかけてくる。

「どうするよ玲…」

「仕方ない、やるしかないだろ…」

「そ、そうだけどさ…。その…か、仮にだけど!く、唇触れちゃったら…ど、どうする?」

 琴美は顔を真っ赤にしながらそう聞いてきた。

「どうするもなにも、その時はその時だろ…。とりあえずさっさとやっておわらせちまおうぜ」

「う…うん。そう…だよね」

 会話が終わり俺が口にポッ○ーを咥えると、まだちょっと顔の赤い琴美が近づいてきて、反対側のほうをくわえ込む。そしてお互い食べ進める。

 琴美は恥ずかしいのか目を瞑ったまま食べ進めてきている。反対に俺はそんな琴美の表情をずっと見ていたのだが、近づいてくるにつれて俺もだんだんと恥ずかしくなってきた。

 すると半分もいかないぐらいでいきなり琴美の目が開き俺と目が合うと、いきなり慌て始めて折ってしまった。

「あーあ。もうちょっとだったのになー」

 その横では美花が残念そうにそう呟いていた。そして箱からもう1本取り出し、俺に渡してくる。

「はい、これもう一回」

 俺は渡された後、残りを全部食べきる。

 すると、琴美がなんかあわあわし始めて何か呟いている。

「か、かか…間接……」

「ん?関節がどうかしたか?痛めたのか?」

「い、いや!大丈夫……。さっきはごめん」

「いや、大丈夫だって。次は最後まで目を開けるなよ?俺が目を開けておいて、最悪の場合は俺から折るから」

「う、うん…」

 俺の言った言葉に頷いた琴美は、どこかいつもの男勝りな雰囲気は消えていて、完全な乙女へと変わっていたように見えた。

 そんな姿に少し萌えたなんて絶対に誰にも言えん…。

 さっきのように俺が咥えると、反対側から琴美が咥え、お互い食べ進める。

 そして半分くらいを過ぎ、もう後少しで触れてしまう…っというところまできても美花からの声はかからない。いったいどこまでやらせるつもりなのだろうか…。そこで俺はあることに気がつく。

 琴美のやつずっと目を瞑りながら食べ進めてきてるから、ペースが衰えてないじゃねえか!

 だいたい近づいてくればお互いが触れ合わないように調整をしながら食べ進めていくのだが、琴美はなぜかずっと変わらないペースで食べ進めてきていた。このままではこっちが調整したところで、触れてしまうことは避けられない状態だった。

 それにどうせあの美花のことだろう、俺達が触れ合うぐらいまでやらないと気がすまないはずだ…。だったら仕方ない、ギリギリまで粘って何も声がかからなかったら折ろう。それしかない。

 そう思っているうちに琴美はどんどん近づいてきていた。そろそろ本当にまずい。折るしかないか…。

「はーいそこまでー」

 そんなことを思った瞬間、美花から終了の合図がかかり、終わった安堵からか今度は俺から折った。

「二人ともお疲れ様ー。非常に楽しませてもらったよー」

 意気揚々と俺達に声をかけてくる美花。そして俺の横ではまた琴美が何か呟いていた。

「…いとの……せつ…す…」

 呟き終わった後、なぜか顔が真っ赤になっている琴美だった。

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