第39話「大富豪」

その後、色々な場所を巡って帰ってきた夜、夕飯を食べ終えメイドさんが作ったデザートを待ちながらみんなでトランプをして遊んでいた。

「よっしゃー!また1位ー!」

「はあ!?またー!?玲強すぎー!」

「ごめんな。大富豪だけは自信があるんだ」

「くっそー!カートは弱かったくせに!」

 琴美がぎゃんぎゃん騒いでいるがこれが結果なのだから仕方ない。さっきから俺が3連続トップ、琴美は3連続最下位であった。そして、今回も俺はトップ。これで4連続であった。

「ほらほら、がんばらないとまた最下位だぞー」

「わ、わかってるって…!今度こそ…!」

 そんなこと言っているが、今のところ他の誰よりもカードを持っている数は多いし、交換により強いカードは持っていないはずだ。俺があげたのハートの4と、スペードの5だし。

「わ~またあがれました~」

 次に上がったのは冬香ちゃんだった。前回の三位から順位が上がったのだが、まあ順当なところだろう。さて、これで残るは美花と琴美と香奈枝となった。現状、さっき二位だった香奈枝が有利といったところだろうか。

「……んっあがり」

「うわああ!まじかよおお!」

 次にあがったのは香奈枝だった。残りのカードは全て強力だったから、多分順番の巡り合せだったのだろう。最後に出したのが2のスペードで、すでにジョーカーは出終わっているので場が流れる。そして順番は琴美からとなる。

 すると琴美が不敵な笑みを浮かべる。

「ふふっ…ごめん美花…今度こそ最下位抜けられそうだわ」

「そう?私だって負けるつもりはないよ?」

「…っ!そういってられるのも今のうちまでだし!!」

「そこまで必死になることかよ…」

 そう溜息まじりに呟いておく。本当にそう思ったからだ。なんでそこまで必死になる必要があるのかね…。

 ちなみに現状は琴美が三枚、美花が二枚である。枚数で見れば美花が有利ではあるが、琴美にはなにか案でもあるのだろう。

「それじゃあ、いくよ美花!」

「うん!」

 琴美は場上にハートの4を出す。…結局それ最後まで残してたのか。ごめんな使えないやつ送って…。でもこっちにとってもいらなかったんだ。

 そう心の中で謝っていると、美花がにこにこしながら琴美を見ている。

「な、なんだよ」

「ごめんね琴美。また最下位で」

「そ、そんなわけ…!これで私が勝つ…!」

「これを見てもそんなこと言えるかな?」

 美花はカードを場上に出す。そのカードは8のダイヤだった。

「「「あ…」」」

 俺は思わず声が出てしまったのだが、この戦いを見ていた冬香ちゃんと香奈枝も気がついたのか声がでてしまっていて、俺と重なって三人はもる形となる。

 そして、8切りをくらった琴美はがっくりと肩を落としていた。

「ふふーんっごめんねー琴美!」

 そういって美花は最後のカードを出す。これで琴美の4連続最下位が決定した。

「ま、また負けた…」

 そうがっくりと肩を落としている琴美に声をかける。

「琴美…お疲れ」

「あ、ありがと…。勝てると思ったんだけどな…」

 そういって琴美がカードを渡してくる。その残り手を見て思わずカードの種類を呟いてしまう。

「ハートの3とダイヤの2…か」

 まあ、この手なら少しでも数字が高い4を出すのは当たり前だよな…。

 俺が呟いた言葉が聞こえたのか、その言葉に美花が反応する。

「ひえ~私8がなかったら負けてたんだ!あっぶな~」

 本当に驚いていっているのだろうが、どうもその言い方だと皮肉めいてるようにしか聞こえないんだが…っと心の中で呟いておく。

 するとそんなところにメイドさんの声が聞こえる。

「みなさーん。ケーキ焼き上がりましたよー!」

「あ、は~い!」

 その呼びかけに声の聞こえた方を向いて美花が答える。

「それじゃあ一旦休戦ね。また食べ終わったら続きやろっか」

「そうだな…っと」

 そんな美花の問いかけに俺が答えて立ち上がる。

「とりあえずまずはケーキ食うか。ちょっと俺楽しみにしてたし」

「そうだね~あの子のは本当においしいから、期待してっ…いいと思うよ~」

 そう冬香ちゃんが立ちながら言って来る。ってか、そもそも別荘でケーキ作れるとかどんだけ設備いいんだよ…。っと思っているとみんなが食卓の方に向かっていくのに、琴美だけまだ座ったままだった。

「おいおい、そんなにショックだったのか?」

「あー、いや、ちょっと分析ってかさっきのゲームを思い出して、どこかミスがあったんじゃないんかなーって考えてた」

 こいつ、そんなことしてるのになんで毎回負けるんだ?実は本当は強くて、カードの運に恵まれてないんじゃないのだろうか。そう思ってしまった。

「そうか。んま、今はそんなことよりケーキ食べに行こうぜ。きっとうまいだろしさ」

 そういって琴美に手を差し伸べる。そして琴美はその差し伸べた手を握る。

「そうだねっと。ありがと」

「お、おう…」

 自然と手が出てしまった自分に驚きつつ、俺と琴美も食卓へと向かった。

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