第37話「別荘到着」

 中に入ると予想してたほどすごい豪邸ってわけでもないけど、それほど小さいってわけでもなく、一軒家にしては大きいレベルと感じる大きさはあった。別荘なのにうちより大きいってどんだけお金持ちなんだ…。

「それじゃ部屋割教えるからついてきてね~」

 そういう冬香ちゃんの後を俺達四人はついていく。どうやら階段を登っていくから部屋は二階にあるらしい。にしても荷物が重い…。

 っと思っていると冬香ちゃんがこっちを振り返って言ってくる。

「みんな荷物あるから一人ずつ階段登ったほうがいいかも~…」

 その言葉にいち早く美花が反応する。

「あ、確かにその方がいいかも」

 そう言った後こっちを振り返って一段階段を降りながら言ってくる。

「みんなー!一旦バーーーックーーーー!!!!」

「え?え?バック?」

 そういって自分の鞄を差し出す琴美。…こいつ天然の馬鹿か?ほれみろ、美花が困った顔してやがるじゃねえか。

 俺は意味を間違えている琴美に指摘することにした。

「戻れって意味だろ?琴美…少しは分かれよ…」

「はっ…。そういうことだったのか…」

 琴美は差し出した鞄を引っ込めた。俺は琴美の後ろにいるから表情はわからないが多分恥ずかしがっているのだろう。耳が赤くなってやがる。

「そういえば思ったんだが、別に降りなくてもここで登り終わるの待ってればよくないか?」

「あ、そっか。ナイスアイディア玲!」

「どーも」

 さっき美花がバーックって言った時にそう感じてはいたのだが、琴美の天然に突っ込まざるを得なかったので、言うのが後になってしまった。

 っというわけで、俺達は一人が登り終わるまで階段で待つことにした。

 順番としては冬香ちゃん、美花、琴美、香奈枝、俺という感じに階段を登った。

 そしてみんなが登り終わった後、冬香ちゃんがてきぱきと部屋の場所と部屋割を教えてくれて、俺は一人部屋になることとなった。まあ、男と女一つの部屋に泊まるわけにもいかないからこれが正解だとは思う。

 部屋の広さに感嘆としつつ、持ってきた荷物の整理を行っていた所、ドアを3回叩く音が聞こえた。

「玲ー。ちょっといい?」

「おう、ちょっと待ってな」

 声の主は美花だった。特にやばいものが転がっているわけではないが、整理している途中でモノが散乱としているため、少しだけ整えて出迎えることにする。

「入ってきていいぞー」

「ん。失礼します」

 ドアが開かれると美花が部屋に入ってきて後ろ手にドアを閉める。そして、部屋をぐるっと見渡して俺の荷物がある方に目を向ける。

「へえ…一人って考えると結構広いね。あっ片付けの途中だった?邪魔してごめんね」

「別にいいよ。確かに一人にしては大分広く感じるわ。そっちはどんな感じなん?」

「こっちも多分同じぐらいの広さだと思うんだけど、冬香ちゃんと同じ部屋ってこともあって狭く感じるかなあ…。別に冬香ちゃんの荷物が多いとかそんなこと思ってるわけじゃないけど!」

「そ、そう…。まあ、女の子はそれなりに持ってくるもんもあるだろ」

 まあ、何をもってきているとか詮索はしないけどさ。という言葉を飲み込んで俺は美花がここに来たわけを聞くことにする。

「で、何か用があった感じ?」

「ああ、そうそう。冬香ちゃんが食事する場所とか、この家のどこに何かあるかを説明するからさっきいた下駄箱辺りに集合してほしいってさ」

「わかった。すぐに向かうよ」

 俺はそういうとゆっくりと立ち上がる。

「ねえ、玲は軽井沢に行くって話になって何か思い出すことなかった?」

「?急になんだよ。なんかあったっけ?」

「そう、ならいいわ。先に降りてるね」

「お、おう」

 美花は快い回答を得られなかったのか、足早に階段を下りて行った。軽井沢…軽井沢…ん…なんかあったっけ?

 俺は記憶の奥の方まで思い出そうと頑張る。するとほんのわずかな断片的な記憶が思い出される。が、すぐに起こった頭痛と共に一瞬でまた記憶の奥の方へと消えていった。

 なんだ…?俺はここに昔来たことがあるのか…?もし、さっきの記憶が本当なら昔俺は誰かとここに来ていたことになる。それも同年代の女の子と…。


 下駄箱に向かうと既に俺以外全員が集まっていて雑談をしていた。

「ごめん。部屋の片づけをしていたら遅くなった」

「あ、玲さん。やっと来ましたね~。それじゃあ全員揃ったので色々と案内しますね~」

 冬香ちゃんは俺が来たことを確認すると、会話の輪から抜け出し廊下を歩いていく。まずは1階から案内するらしい。

 リビングやら、トイレ(しっかり男女別になっていた)やらこれから生活するのに必要であろう場所を全て案内され、最後に食事はこちらでしますよ~と案内された場所に向かうとすでに料理が出来上がり、取り皿なども用意してあった。

 すると冬香ちゃんが今度は席の案内を始めた。

「えーっと、美花ちゃんはあそこで、琴美ちゃんはあそこ。でー、香奈枝ちゃんは琴美ちゃんの奥で、玲君は美花ちゃんの奥ね」

「りょうかーい」

「…うん」

「わかったわ」

 そう三人が言って言われた席に着く。

 それにしても準備がいいというかなんと言うか、冬香ちゃんも案外ちゃんとしてるなーっと改めて関心していると冬香ちゃんから声がかかった。

「ほら、玲君も」

「あ、ごめん」

 さっき言われた席へと向かい、座ると美花から声がかかった。

「どうしたの?」

「いや、なんでもないさ」

 全員の着席を確認した後、冬香ちゃんが美花に声をかける。

「それじゃあ美花ちゃん。号令かけて?」

「え、私が?」

 美花は驚いた顔をして、右手の人差し指で自分を指した。

 それに琴美がつっかかる。

「そうっすよ!美花は部長なんだからさ!」

「そういうことですね~」

 冬香ちゃんもそれに乗る。

 すると、美花はなにかを納得したような顔になってため息をつきながら号令をかける。

「はぁ…。それじゃあ、いただきまーっす」

 その言葉に、琴美は元気に箸を持ちながら、冬香ちゃんは礼儀良く手を合わせてお辞儀をしながら静かな感じに、香奈枝は両手を合わせて小さめに、そして俺も両手を合わせ小さな声で各々がいただきますっと言った。


 メイドさんが作った昼食をありがたくいただき、みんながお腹いっぱいになりくつろいでいたところ冬香ちゃんが手を挙げる。

「はい。せっかく軽井沢に遊びにきたのですから~今からどこか遊びにいきませんか?」

 その言葉に琴美が反応する。

「おー!いいねいいね!どこ行く?どこ行く?」

 俺は、乗り気になって勝手に話しを進めようとする琴美を落ち着かせ、他の二人に同意を求めることにする。

「琴美落ち着け。美花は?」

「まあ、いいと思うけど?」

「香奈枝は?」

「…まあ、せっかくだからいいんじゃない」

 香奈枝の同意を得たのを聞き、部長である美花が話を進める。

「って言ってもどこにいくの?」

「じゃあまずは有名な白糸の滝とかどうですか~?」

「おっ、いいんじゃないかしら?軽井沢にきたらまずはそこって感じするし!」

「いいと思うぜー!」

「いいと思う」

「それじゃあ、そこに行きましょ~!」

 冬香ちゃんが両手を合わせ、笑顔でそういってみんなに同意を促す。

 みんなそれに同意して、その場は解散となり各自部屋に戻って荷物をまとめて再集合という形となった。

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