第27.5話「その時彼女達は」

 玲への電話を切り終え、琴美のいるブランコの方へと歩き出そうとしたのだが、やはりというかなんというか、玲は執拗に折り返しの電話をしてきた。なので、一言だけメッセージを送り、すぐに返ってきた返信を読むだけ読んで携帯の電源を落とす。そして琴美の方へと歩き出した。

 あの部活の時、琴美は明らかにわかりやすい行動をした。あんな行動を見せたら他の三人に勘ぐられてしまう可能性だってあるのに…。だから私は家に帰る前に琴美と話をする必要があると思い、琴美をすぐに追いかけた。案の定琴美は下駄箱で捕まえることが出来、その後色々な話をするためにこの公園へとやってきた。

 そして今はその話が終わったのだが、まだ少しだけ念を押す必要性があると考えたため、玲に一旦電話をしておこうと思ったのだ。まあ美奈でも良かったんだけど、美奈に混乱して欲しくないってのはあったから、玲にしたんだけど…まさか近くにいるとは思わなかった。あの時、玲に安心してもらうためにテレビ電話にしたんだけど、迂闊だった。まあ後で美奈にはこのことについて言っておこう。今回のは急にだったからごめんねって。

 さて、琴美との話をちゃちゃっと片付けてお家に帰りますかー。玲の作ってくれた料理も気になるし。

 私はブランコに座って俯いている琴美の前に仁王立ちで腕を組み見下ろす。

「琴美。顔を上げて」

 琴美は顔を上げて私の顔を見る。その顔は完全に参っている顔で、私と目があった瞬間すぐに目をそらしてしまった。さすがに言いすぎたかもしれない。

「ごめん言いすぎたって。でももしこのことがばれたら意味がないの。それはわかるよね?」

 琴美は無言で頷く。

「じゃあこれからはちゃんと言った通りにできる?」

 またも琴美は無言で頷く。これじゃあまるで幼稚園児を相手にしてる気分になる。あーもう本当にイライラしかしないなあ今日の琴美は。いつもはそんな子じゃないのに。

「返事は?」

「……は…い」

 琴美は体を震わせながら、弱々しく返事してきた。その姿はどこかの奴隷にしか見えなくて、傍から見たらカツアゲしてるようにでも見えてるんじゃないかと思ってしまう。

 私はそんな琴美の姿を見て溜息をつきながらお願いをすることにした。

「はあ…もういいわ。最後に一つだけお願いというか命令というか…いいよね?」

「はい」

「これ以上私の計画の邪魔をしないこと。もし邪魔してばれた時は覚悟しておいてね?」

 琴美は肩を震わせながら、弱々しく頷くだけだった。まあ、無理もないかかなり強めに言ったつもりだから。

「それじゃあ私帰るから。また明日ね」

 そう言って琴美をおいて公園を出る。

 さて、これによって琴美はもう下手なことはしなくなるはず。ただもし玲に勘づかれたとしてその時の対応をどうするかだなあ…そこは考えとかないと。今まで琴美はしっかり仕事をしてくれていたから考えてもなかったけど、今日みたいなことがあるとこのことも考えないと…。

「まあ、考えるだけ無駄か」

 私は独り言を誰にも聞こえないくらいの声で、それでも自分に言い聞かせるように呟いた。

 どうせ悩んだって結果は見えてるんだ。これ以上考えたって無駄だ。だってになるのだから。邪魔なんてさせない。あんな奴なんかに邪魔なんて絶対にさせない。あの子の過去や好意なんて知らない。必ず私が玲の隣にずっといるって昔から決まってるんだから。

 そう私は心に言い聞かせながら帰り道を歩いて行った。

 

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