第18話「急な出来事と買い出し」

 次の日の朝、両親達から共働きになるので帰りが遅くなってしまうことが俺達に告げられた。そのため飯を作ることや皿洗いは自分達で作ったり、洗ったりしないといけなくなってしまった。まあ、平日限定ではあるのだが…。そして、そのことが告げられた朝、何故か張り切って美花達姉妹が料理を作りたい!っと言ってきたので、今日の料理は美花達姉妹が担当することになった。

 そして今は学校の帰り道で美花と一緒に帰っている途中である。

「そういえば、今日の夕飯何かリクエストある?」

 俺が今日の朝のことを思い出していると、美花が今晩の夕飯について聞いてきた。

「うーん…。それじゃあ美花の得意な料理がいいかなー」

「え!?」

「え、なんで驚いてんの?」

「い、いやあ…そうなるとハードル上がるなーっと…」

 美花が驚きながらこっちを見て言ってきたので、美花の方をチラ見しながら言い返すと、照れ臭そうに頬をかいた。

 それを見て俺は今素直に思っていることを言うことにした。

「別に大丈夫だって。二人が作ってくれるだけで嬉しいんだから、味なんて気にしないよ」

「う、うん…。じゃあ頑張るから買い物手伝って」

 美花は顔をこっちに向けないまま俺にぎりぎり聞こえるぐらいの大きさの声で言ってきた。

「お、おう。それぐらいは手伝わないとな。せっかく作ってもらうんだし」

「うん。それじゃあ一旦家に帰ってからね」

「あー、そっか財布とりにいかないとか」

「そうそう」

 美花は頷くと少しだけ歩くスピードを速めた。そしてその後、軽く世間話をしてると家に着いた。

「玲は外で待ってて、財布だけ取ってきちゃうから。それと鞄貸して」

「はいはい」

 俺は素直に美花に従って、鞄を渡して玄関の外で美花が待つことにする。

 そしてそれから10分ぐらい経ってから玄関を開けてドアを閉める音がした。

「おまたせー。それじゃあ行こうか」

「おう」

 美花がこっちに来てから声をかけて、スーパーへと向かう道を歩き始めた。俺はその横に並んで歩き始めた。

 そしてこうやって二人並んで歩いて買い出しに行くのも新鮮だなあっと思いつつ、スーパーへと向かうのだった。


 家から徒歩5分ほどにある色んな店が入っているこの地域では一番でかいであろうショッピングモールへとやってきた。そしてその中にあるスーパーに着いて、買い物籠とカートを取った美花に改めて聞いてみることにした。

「そういえば、何作るんだ?」

「んーとね…。って私の一番得意な料理でいいんだよね?」

 美花が買い物かごを持ちながら振り向いて再度夕飯の料理について確認してきた。

「うんそうだね。それで?」

「それで…って?」

「だから、何作るんだ?」

「あぁー…、教えないっ!」

「え!?なんで!?」

「なんとなく!」

「だったら教えてくれても良くね!?」

「やだっ!」

 と、俺達が言い争ってると近くにいたおばさんたちが

「あらあら、若い子は元気があっていいわねぇ~」

「そうねぇ~いいわねぇ~」

 うふふ。などと笑いながら去っていくおばさんたち…。俺達は途端に恥ずかしくなって、言い争いを即座にやめて、店内を歩き始めた。

「思ったんだけど、どっちにせよ作る料理わかる気がするわ」

「なんで?」

「だって、買ってくもの見ていったらわかるじゃん?」

「あっ、確かに…」

 美花は言われるまで気が付いてなかったようで、拍子抜けしたなんとも言えない顔をしていた。

 そういや昔から本当たまに抜けてるところがあったなあ…昔と全然変わってないや。

 俺はこんなことで楽しみな料理をわかりたくはなかったので、美花とは別行動をとることにした。せっかく美花が驚かせようとしているんだし、ここは美花のためにもそうした方が得策だと考えた。

「じゃあ、俺はそこら辺ぶらぶらしてるわ。夕飯楽しみにしてるよ」

「あ、う、うん…。わかった」

「そうだ。買い物終わったら電話してな」

「了解ー」

 そういって美花は野菜コーナーの方に、俺はお菓子のコーナーの方へと歩き出した。


 さて今日のアイスはどれにしようかなーっと思いながら、アイスコーナーで物色をしていると誰かに肩を叩かれた。なので振り返ってみるとそこには琴美がいた。

「お、やっぱり玲じゃん!」

 琴美は買い物かごをひっさげながら少し驚きつつなおかつ嬉しそうな顔をしてこっちを見ていた。

「おぉ、琴美じゃないか。どうしてここに?」

「それはこっちが聞きたいよ!」

「あぁ、俺は…」

 こう聞き返されるとは思っていなくて、全くもってかわす言葉を考えていなかった。美花ときたと正直に言うわけにもいかないし…。しょうがない、ありえるような嘘をつくしかないな。

 そして俺は少し乾いた笑いをしながら、適当な嘘をつくことにした。

「あはは…ちょっとおつかい頼まれてね」

「ちょっ、この年で?」

 琴美は嘲笑いながら問いかけてくる。

「むっ、う、うるさいなぁ~。そっちは何しに来たんだよ」

「ああ、私は夕飯の買い物だよ。玲とは違って、買い物!だから」

 やけに買い物の部分を強調されたような気がした…。

「お、おう…。ってことは家で料理作るの?」

「そうそう。私の家弟と妹がいるんだけど、二人ともまだ小学生だから料理させるわけにもいかないし、親は仕事でいないし…で私がほとんどの家事を担当してるってわけ」

「なるほどねえ…。すごいじゃん、家のほとんどの家事こなすって。結構大変じゃない?」

「まあねえ…。でもやらないとだからさあ。それに長女の責任だよね…仕方ないことなんだけどさー」

「それは大変だな…。ご苦労様です」

 俺は日ごろの労いを込めて琴美に向かってお辞儀をした。

「どもども。それにあいつらもここに慣れてないと思うからさー」

「え、それってどういう意味?」

 顔を上げて琴美を見ると明後日の方向を見ていた。そして琴美は俺の方を向かないまま話を続けようとしている。

「私昔はここらへんに住んでてさ。その時はまだあいつら幼稚園くらいの頃だったからさ、ほとんど覚えてないみたいだし学校も今年から転校して変わっちゃったから、慣れるのが大変だろうしさー。まだ多少ここの土地を覚えていて、なおかつ見知った人もいる私が頑張らないとかなーってね…はは」

 途中までは明後日の方向を向いていた琴美が最後の方は照れくさそうに笑ってこっちの方を見た。

 その姿を見て何かを感じたのだが、その感覚はすぐにどっかに消えていってしまった。

「そっか…。色々大変なんだな琴美は」

「そうなんだよね…。おっと、そろそろ家に帰らないとあいつら帰ってくるじゃん!それじゃ玲、私は買い物の続きがあるから」

 琴美は会話が一区切りついたところで左手首につけていた時計を確認すると、慌てて背を向けてから手を挙げてそう言ってきた。

「おうわかった。じゃあまた明日!」

「うん。また明日ー!」

 琴美に手を振って別れを告げると、琴美はこっちを一瞬振り返って手を振り返してくれた。

 ただ、よくよく考えたら一つ質問し忘れていたので、琴美の背中越しに聞いてみることにした。

「琴美ごめん。一個聞き忘れてたんだけど琴美がここを離れたのって何年ぐらい前なの?」

 俺の問いかけに琴美は立ち止まって少しだけ振り返る。

「ごめん、それについては言えないや。それじゃまたね」

 それだけ言ってっから軽く手を振ってレジの方へといってしまった。

 琴美の後ろ姿を見送った後、たまたま時間がなかったから教えてくれなかったのだろうか?っと少し疑問が残った。なので、後日改めて聞いてみることにしようと心に決めて、俺はまたアイスの物色へと戻るのだった。


 今日のアイスが決まって、レジに通した後少しして美花から電話があったので、居場所だけ教えて待つことにした。そして数分後、両手に荷物を抱えた美花がこっちに向かってきていた。俺はそれを迎えに行く。

「ごめん。待たせた?」

「いや、全然。荷物持つよ」

「ありがとうー。助かる」

 美花はそのばで荷物を手渡しで渡してきた。その時なるべく袋の中身は見ないようにしていたのだが、ちらっとひき肉が見えてしまったので、ハンバーグだけは確定だろうなと思った。だがもちろん口には出さない。

「中身見ないでよ」

 美花は何かを感じ取ったのか、こっちを少し睨みながらそう言ってきた。

「わーかってるって。俺を信じろって」

「なーんか信用できないんだよなあ…玲って」

「ええ…それひどくない?」

 こんな他愛のない会話をしていると荷物を完全に俺へと引き継いだので、俺達は帰路へと着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る