第14話「過去の話」

 その後、リビングや洗面所などを家族みんなで見て回った後、それぞれの荷物を自分の部屋に持っていくことになった。勉強机や、ベットなど重いものはすでに引っ越し業者さんによって運び込まれていて、あとは前の部屋にあった小物などを入れた段ボールを自分の部屋に持っていくだけだった。その中で段ボールの中から色々ものを取り出していると、卒業アルバムやら、昔のアルバムやらが出てきた。

「お?こんなものいれてたっけ?」

 準備の時は部屋にあるものをどんどん入れていっていたから、何をどこに入れていたのか覚えてなかった。卒業アルバムを入れたことはなんとなく覚えていたのだが、その下にこのアルバムを入れたことは覚えていなかった。

「うーん。ちょっと見てみるか…」

 なんとなく懐かしさを感じながらアルバムを開いてみると、昔の自分の写真が収められていた。

 幼稚園の頃の写真や、家族みんなで旅行に行った写真など色々入っていた。そしてその写真の中には所々に美雪も一緒に写っていた。

「美雪も写ってる…懐かしいなぁ…。あ、お父さんもいるや」

 まだ二人が生きていた頃、父さんが写真を撮るのが好きだったからなのか、その頃の俺と美雪との写真が多く収められていた。

 美雪は結構活発な妹で、よく何かを見つけては勝負を持ち掛けられることもしばしばあった。例えば、夏にキャンプにいったら虫を多くとったほうが勝ちだとか。他には雪が積もった日には雪だるまの高さを勝負したりだとか…。今思えば下らないようなことばっかだったけど、それはそれで楽しかった。そんな対決の最中や、結果発表の時の写真などが大半だった。

 それに小学校にあがってからはそんな俺達の家族に美花が加わることもあった。

 小学校に入り、登下校班が同じでその頃の家はお互い近く、なおかつ同い年もその班の中では俺達だけだったことからも、美花とはすぐに仲良くなり友達になった。そして、よくお互いの家に遊びに行ったりもした。そんな中で初めて俺の家に美花を招き入れた時、美雪は最初美花に怯えていて中々一緒に遊ぼうとはしなかった。だが美花が積極的に話しかけたことによって段々と打ち解けていって、最後は普通に姉妹と思えるぐらい仲良くなっていった。それからは三人で遊んだり、争ったり、時には協力したりとあの頃は本当に三人兄妹のように思えるぐらい仲が良かったと思う。

 そういえばこの頃の写真に美奈がいないのはなんでなんだろう…?後で聞いてみようかな…。

 そして小学校低学年辺りのページが終わって、高学年になったであろうページを眺めていると美花とは違う、もう一人よく一緒に写っている子がいた。美花と同じくらい…いや、それ以上に写っているかもしれない。しかも俺の家族と一緒に写ったり、前に住んでた庭で撮ったような写真があった。

 なのにだ、どうしてか俺はこの子を思い出せなかった。美奈でもない。美雪でもましてや美花でもない…。この子の名前を俺は思い出せなかった。後で母さんか美花にでも聞きに行こうか…。いや、一つだけ方法があった。

「この卒業アルバムさえ見ればわかるはず…」

 俺は段ボールからだした小学校の時の卒業アルバムを開き始めた。もしこの写真が小学校の時なら卒業アルバムにこの子の写真と名前が載っていてもおかしくないと思ったからだ。

 まず最初にそれぞれのクラス写真を見る。が、全てのクラスを見ても彼女はいなかった。さらに他のクラブ写真や、全体での運動会やらの写真にもいなかった。

 そして全部を見終わっても彼女が見当たらないのを確認した後、もう一度アルバムの方へと戻る。そこには笑っている彼女の姿が俺と一緒に写し出されていた。ただこの時期の記憶はほとんどなく、誰だったか思い出せない。なので、俺は止まっていたアルバムの先のページを見始めた。だが、写真は小学校の卒業式に美花と一緒に校門の前で撮った写真で終わっており、最後の方になるにつれて彼女の姿は無くなっていった。

「一体彼女は誰なんだ…」

 あまりにも謎すぎてつい声に出してしまった時、部屋のドアが叩かれる音がした。

「玲ー。夕飯できたってさー」

 声の主は美花だった。その言葉を聞いて携帯の時計を見たら夜の七時を越えている辺りだった。

 いつの間にそんなに経っていたのかと思いつつ、美花に返事をする。

「わかったー。先に下に降りててー」

 美花は俺のその言葉を聞いてか、何も言わずに階段を降りていった。

 とりあえずこのことは夕飯が終わって落ち着いたころに母さんにでも聞きに行こう。そして、その後に美花にでも聞けばわかるだろう。何せ美花もこの子と一緒に写っている写真があるのだから。

 そう思い、アルバムを机に置いて夕飯が用意されてるであろうリビングへと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る