第13話「部屋選び」

 あの後荷物を運びこむ前に、美花と美奈の二人はリビングが見たいといってリビングの方に行ってしまった。

 そして一人取り残された俺はひとまず自分の部屋があるであろう二階から探索することにした。 

 部屋は階段を上ってすぐのところに一つ。後は左に曲がって二つの部屋が向かい合わせになっている状態で、そして、奥の方にトイレがあった。

「なるほど部屋は三つかぁ…」

 いきなり後ろから美花の声が聞こえた。

「げっ!?い、いつのまに」

「何?人を幽霊扱いしないでよ」

「ごめんって。そういやリビングに行ってたんじゃないの?」

「うん、そうなんだけどね、なんとなく上の方も気になっちゃって」

「そっか。それじゃあ美奈は下にいるのか」

「そうだねー」

 そう言って美花は俺の前に出て、階段を上がってすぐ目の前にある部屋を指さす。

「それじゃあ私、この部屋でいい?」

「おう。まあ、美奈に確認してからだけどな。それなら俺は反対側のこっちで」

「そうだねー。後で確認しないとだね。ん、りょうかい。それじゃあまた後でね」

 美花は半身になってドアノブに手をかけながら、左手をこちらに挙げてそう言いながら部屋の中へと入っていった。

そして俺は美花が部屋に入るのを確認してから自分の部屋になるであろう部屋へと入っていった。

 ドアノブに手をかけ中へと入る。

 なるほど、ここまで広いのか。前の部屋よりも広くて住みやすくなってるな。っていうのが第一印象だった。ただ、さすがにまだ何も荷物も入れていないため、特に家具も何もなく殺風景な状態となっていた。

 すると閉じていたドアが開かれる音がした。俺はそれを感じて後ろを振り返るとそこには美花が立っていた。

「どう?こっちの部屋は」

「んー。まあまあかなー。あっちの家よりは広い感じするから、俺はここでいいんだけど…。そっちは?」

「うん、私もあの部屋でいいかなーって。まあ、美奈と話し合ってからだけどねー」

「そうだな…」

 っとそんな会話していると、階段の方からものすごい勢いで誰かが駆け上がってくる音が聞こえた。

「ちょっとお姉ちゃん!!」

「わあ!どうしたの美奈!?」

 いきなり大声で呼ばれた美花はビクッと肩を震わせた後、階段の方に向かって大声で呼んできた主の名前を呼び返していた。

 そしてその主は美花が返事しているうちに階段を登り切って、俺たちの前に姿を現した。

「先に二階の部屋を見に行くって聞いてないんだけど!?」

「あー、ごめん。玲を追っかけてたらそういう流れになっちゃって…」

「えー…そうなの?」

 実の姉の発言に疑いをかけた美奈は俺の方を見て回答を求めてきた。

「いや、俺の方を見られても困るんだけど…」

「そ、そうですよね…」

 美奈は少し困り顔をしてから、俺ではなく美花の方に向きなおした。

「それで二人はどの部屋にするつもりなの?」

「えーっと私はその部屋にしようかなーって」

 美奈の問いかけにまず美花がさっき見た部屋を指さしながら答えた。

「それで玲がこの部屋」

 っと言って今度は今いるこの部屋を指さす美花。

「なるほどー。ってことは私はそっちの部屋ってこと?」

 美奈は話の流れを理解したのか、美花が見た部屋を見て、俺が見た部屋を頷きながら見渡した後、最後に残った部屋を見て指を指してそう言ってきた。

「ま、まあそうなるけど…。別に嫌だったら私のところと交換でもいいんだよ?」

「ううん。別にいいや。そんなことで揉めたりとかしたくないし」

「あ、そう?じゃあこの配置で決まりってことで。いいよね玲?」

 美奈は首を横に振りそう答えるのを見てから、美花は俺に対して同意を求めてきた。

 これに関して俺はいいのだが美奈が本当にそれでいいのか気になって、もう一度確認を取ることにした。

「あ、ああ。美奈がそれでいいなら…」

「ええ、構いませんよ」

 美奈はこちらを見ながらそう言ってきた。その顔を見る限りでは嘘をついているわけではなさあそうだなと思った。

「それじゃあ決まりってことで。リビングにでも行こっか」

 その美奈の言葉を聞いた美花は両手を合わせながらそう言ってから、下の階を指さした。

「そうだな。まだ俺見てないし」

「リビング凄かったですよー。広々としてて、キッチンとテーブルが近いんですよー」

 先に見に行っていた美奈が楽しそうに語ってくれた。その表情を見ると期待感が増してしまう。

「へえ~…それはいいねえ。料理を運ぶ手間が少しは省けるし」

「でしょ?ねっ、早く行こっ」

「わわ、ちょっと待ってよ美奈ー」

 美奈は表情を明るくさせたまま体を半分、階段の方に向けながら左手で手招きをしてから、階段を降りて行った。そしてその後を追うようにして、美花が階段を降りていく。そのまた後ろをゆっくりと俺が付いていくのであった。

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