第10話 「部室掃除2」
まぁ、掃除といっても前それなりにやっておいたからもうそこまでやることは残ってないんだけどね。ちょっとだけやることがあるだけだから今日の部活動は楽かも。
「んじゃ、玲はこの間拭いてなかった所拭いておいてね!」
「あぁ、憶えてる範囲でいいか?」
「うん!全然いいよ!」
「わかったー。」
「それじゃあ、私と香奈枝ちゃんは一緒に色々とやりましょうか。」
「わかった。」
と、各々それぞれの分担作業を行い始めた。
それから2時間ほどが経った頃、やっと部屋の全ての掃除が終わった。結局琴美は部活には来なくて、俺達三人だけで終わらせた。
「ふぅ、やっと終わったわね!」
「あぁ、なんとかな。ってもう時間ぎりぎりじゃん!」
「嘘!?…あ、本当だ!」
「美花。時間配分は考えとこうよ。」
「香奈枝、その通りだ!」
あ、そういえば香奈枝って呼んでるけど大丈夫なのかな…。まぁ、あっちが何も言ってこないからいいっか。
「なっ…。二人してなんなのよ!」
「だって…ねぇ?」
「…もういいわ早く帰りましょう」
美花は元々帰宅する準備ができていたのだろうか、机にあった自分の鞄を持ってドアの方に向かっていった。その美花の声のトーンは若干下がって少しだけ怒っているように感じた。
そして俺達の方を振り返りせかし始めた。
「ほら、早く出た出た」
「ちょ、帰る準備してからでもいいだろ?」
「じゃあ、10秒で」
「それは無理だ!」
「10」
「え!?カウントダウン開始!?」
「9」
「やべぇ、これ間に合うかな…。」
「8,7,6,5」
「なんかいきなり数えるのが早くなってるし!」
「4,3」
「あー!やべぇ!やべぇ!」
「2,1」
「よし準備かんりょ…」
「0」
「ちょっ!鍵閉めるなよ!」
準備が終わりドアに向かって走ろうとしたのだが時すでに遅し。美花はドアを閉めてしまった。香奈枝も準備は終わっていたらしく時間内にドアの向こう側へと行ってしまっており、部屋の中には俺だけが取り残されてしまった。
「おい美花!開けろって!」
ドアを叩いて問いかけるもドアの向こうから返事はなかった。……これは本格的に閉じ込められたな。しょうがない、少し時間が経って美花が落ち着いた頃にでも電話しよう。もしそれで電話に出なかったとしても、最悪見回りの先生がくるかもしれないし…。事情話すのは面倒だけど、家に帰れないよりはマシだと思おう。
俺はとりあえず様子を見るために持ってきていた本を読むことにした。
ちょうど区切りがいいところで本を閉じ、携帯に表示されている時刻を確認する。本を読む前にちらっと見た時刻からだいたい30分ぐらいが経過していた。
本を鞄の中に仕舞いふと部室を見渡してみる。
「あ、そうだ。ちょっと部室を俺風にアレンジしちゃおうかな!」
「どんな風にしようと思ってるの?」
「あー、えーっと。ここをこういう風に…って美花!?」
「やっほー」
そこには部室のドアにもたれかかってこっちを見ている美花がいた。
「やっほー。じゃねえよ!何で鍵閉めたんだよ!」
「いやー、ちょっとね」
「ちょっとね。じゃねぇよ!ガチでここで夜を過ごそうとしたぐらいなんだからな!」
もちろん嘘である。
「ご、ごめんね。そんなに怒らないでよ…」
「こればっかしは無理だな」
「すみませんでした!」
「無理」
「ごめんなさい!」
「無理」
「許してください!」
「無理」
「あぁぁぁぁ!!!もういい!」
「え?…」
美花はそういってドアの向こう側へと出てドアを閉めようとする。が、それを読んでいた俺は閉まりそうになるドアを手と足で抑える。
「ちょっ、何するのよ玲!」
「また鍵閉めて帰るつもりだろ?そうはさせねぇ」
「なっ…。ち、違うわよ」
「じゃあなんで、閉めようとしてるんだ?」
「こ、これは…その…」
「反論できないのか」
「うっ」
「全く…。こんなん気にしないで早く帰ろうぜ」
「え…?だ、だってさっき許さないって…」
「え?あんなんからかってたに決まってんじゃん。あ、もしかして本気にした?」
「なっ…もう!玲のばかぁぁぁ!!!」
「ちょ…待てよ美花!鍵、鍵閉めないと!!」
「もう知らないぃぃぃ!!!!!!」
美花は部室の鍵を持ったまま廊下を全速力で駆けていった。
「…待てよ美花!」
そういって俺はすぐに美花を追いかけることにした。
それからすぐに美花は捕まえられた。本気で走っていなかったのかすぐに見つかり、すぐに捕まえられた。
「ふぅ…やっと捕まえた」
「何よ!放してよ!」
「どうしてそんなにきれてるんだよ。からかった件でのなら謝るからさ」
「むぅ…。じゃあ今すぐ謝りなさい!」
「すいませんでした」
「心がこもってない!」
「すいませんでした!」
「敬意でしめしなさいよ!」
土下座…だよな。前も誰かにやったような気が…。
「すいませんでした!!」
「…よろしい」
「じゃあ、鍵閉めにいきますか」
「そうね」
案外距離は変わらないはずなのに、時間は短く感じられた。まぁ、実際さっきは走ってて、今は歩いているからさっきよりも時間はかかってるんだけどね。
「さて、鍵を閉めて…」
「お前ら!こんな時間まで何をしている!」
鍵を閉めた直後、背後から先生の怒鳴り声が轟いた。油断していた俺と美花はびっくりして恐る恐る後ろを振り返る。振り返った先に先生の怖い顔があると思ったのだが、意外にも外が暗かったからなのか人影しか見えなかった。
俺はこれは相手側にも見えてないはずと思い、とっさに美花の手をとって下駄箱の方へと走った。
「ちょっ何するのよ!」
「静かにしろ。声でばれちまうだろ…!」
「あっ…」
なんとか美花も理解したらしく黙りこんでくれた。後はこのまま全速力で逃げて先生を振り切るだけだ。
「ま、待てぇぇぇ!!!」
先生が必死に追いかけてくるが追いつかれる気配はなかった。
「美花、手、放すんじゃないぞ」
「う、うん…」
少し走った後、後ろを振り返ると先生はいなかった。
「よし、もう大丈夫だな」
「うん…。はぁ…はぁ…」
「疲れたのか?」
「うん。ちょっと…ね…」
「よし、まずは校門から出よう」
「そうだ…ね」
俺達はその後も先生に見つかることなく下駄箱に着き、靴を履いて校門の外へと向かった。
なんとか逃げ切れた…。ただ、なんか忘れてるような気がする…。
「ねぇ、玲」
「どうした?」
「部室の鍵…、どうしよう」
あ…、それだ。部室の鍵を閉めたのだが職員室に返してはない。しかも部室の前にいると考えられるのは部員としか考えにくいはず。だから、さっきいたのは俺達の部員ということとなるわけだ。
やばいなこのままじゃ、ばれやすいな…。部員は5人だが、冬香ちゃんが休みで、今日いたのは4人だ。その時点でかなり絞られている。しかも、琴美は一緒に仕事してた人が証人としているからいなかったと潔白を証明できる。これであとは俺と、美花と、香奈枝に絞られる。
…うわぁ、これは完全にばれやすいよなぁ…。香奈枝はおとなしい子だからこんな夜まで学校に残ってるってイメージつかないだろうし。完全に俺と、美花だってばれてるよな…。
「ねぇ、どうすればいいと思う?」
「うーん…。先生が勘違いとかしてくれてればなー…」
「それはないと思うよ?」
「だよなぁ…。あ!」
「どうしたの?」
「言い訳を考えよう!」
「え?」
「もし、先生に俺達だってばれた時に言い訳を考えて逃れよう!ってわけ」
「あ、なるほどね!それなら…!」
「ただ、どう言い訳するかだな」
「確かにそうね。どうやって言い訳をしましょうか…」
「これはどうだ?部長と一緒に帰ってたら、部長が鍵をかけたか忘れたといってきたので学校に戻って確認をしにきただけです。これでよくね?」
「無理ね」
「なんで!?」
「だって、怪しすぎるし、まず鍵は職員室においてから帰るわけだから私達があの時鍵を持っていること自体おかしい訳。もしさっき言ってたことが正しいことだとしたら、まず私達は職員室によっていることになる」
「けど、もしその見回っていた先生が鍵を取りに行った時に職員室にいなかったとしたら?」
「まぁ、確かにその場合は言い訳としても大丈夫かもしれないけど、逆に職員室にいた先生たちが、私達が職員室にきていなかったとその見回っていた先生に言ってしまった場合、私達が嘘を言っていたとばれてそれで怒られるのは確定だよ?」
「あ、確かに…。じゃあ、これは却下だな」
「えぇ、なんか推理してるみたいだね!」
「うん。なんか探偵みたい」
俺達はお互いに微笑みあった。ただ、これがだめだとなると…。あ、これならいけるな!
「部室に忘れ物をしてしまったので取りに来ました!とかは?」
「それもさっきの説明どおり、職員室に行ってない時点でアウト」
「そうだな…。ってことは言い訳無理じゃね?」
「いや、ひとつだけあるよ」
「え!?何々!?」
「途中までは今日あった通りに言うの」
「あの、掃除のところまで?」
「えぇ、あの時もうすでに6時半近かったはずだった。そして私達が先生に見つかったのが大体7時半ちょっとすぎだったはずだから、この空白の1時間に嘘を加えればいいって訳」
「なるほど!さすが美花だ!」
「ありがとう。ただ、まだ安心はできないわ」
「なんで?」
「1時間も学校で見つからずに過ごす方法ってある?」
「…結構きついな」
「でしょ?」
「うん…。あ、あるかも!」
「え?」
「俺達の部室から下駄箱までは結構時間がかかる。だから、俺達は下駄箱まで行ったとして、美花が鍵を持っていたことに気付いてあわてて職員室に行こうとする。ここで約20分。けど俺があれ?鍵閉めたっけ?的なことを言ったことで俺達は部室に戻ろうとした。ここで約30分。けど途中にトイレに行きたくなり、トイレへと向かった。ここで約50分。そして部室まで向かって、部室前について鍵がかかってなかったことに気が付き、鍵をかけようとしたその時先生が来てしまったってことでよくね?」
「おぉ。それはいい考えね!」
「じゃあこれでいいか?」
「えぇ。これでどうにかなればいいけどね」
「まぁ、ひとつ欠点?ていうか言われたら反論できないことがあるんだけど…」
「何?」
「なんであの時逃げたんだって言われたらやばくないか?」
「え?そんなこと?」
「え、そうだけど…」
「そんなん、先生がいきなり大声出して怒鳴ったからびっくりして逃げただけですよ~って言えば大丈夫じゃない?」
「あ、それいいね!」
「でしょ?」
「うん!じゃあもし先生に俺達だってばれたらそうやって言い訳しよう!」
「そうだね。んじゃまた明日ね!」
「おう!また明日なー!」
丁度いいところで別れ道となり美花と別れ、帰路についた。
その翌日から数日間ほど、夜の校舎に二人の幽霊が出ると噂になったのはきっと俺達のせいじゃない…っとそう思っている。
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