第8話 「二人で過ごす放課後」
と、まあ少し経って俺の家の近くまで来たのだが…。あ、そういえば
「琴美は時間とか大丈夫なの?」
「うん。親が共働きだから帰ってくるのいつも遅いんだよね」
「そうなんだ。それだったら帰る時も送っていくよ」
「え!?本当に!?」
「うん。さっき言ったけど親コンサート行ってて帰ってくるの遅いからさ。どうせ家にいるの俺だけだし。それに、いつ出かけて帰ってきても親が帰ってくるまで大丈夫ってこと。だから全然琴美を送って帰るのも大丈夫!」
「そっか、ありがとね!」
「おう」
それから日常的な雑談をしていると俺の家の前についた。
「着いたぞ。ここが俺の家だ」
「あ、ここが玲の家なんだ。案外普通だね!」
「普通で悪かったな」
「いや、悪いってわけじゃないんだけど」
「そうなのか?」
「まあね」
「そっか。んじゃ中に入るか」
と、言って俺は家の鍵を手に取り、開けた。
「…玄関も普通だね」
「普通で悪かったな」
「それさっきも聞いた」
「まあ、どこの家もこんなもんだってことだろ?」
「そうともいうかもね。あがってもいい?」
「どうぞどうぞ」
「お邪魔しまーす!」
この一連の会話の間俺達は、靴を脱がずにずっと玄関で話していたのだ。
「まずはリビングから紹介するよ」
靴を脱いで琴美の横に行くと案内してほしいといわれたのでまずはリビングから紹介していくことにした。そのたびに色々なところを見ていたのは好奇心からなのかそれとも…。まあ、考えるだけ無駄か。
そして、リビングから色々と紹介していって最終的にはやはりというべきなのか、俺の部屋も紹介することとなった。
「そしてこの部屋が俺の部屋だよ」
「ふぅーん。素朴」
ここでも琴美はきょろきょろと部屋の隅々まで見ているようだった。少しだけ探りを入れてみるか
「そんなに俺の部屋じろじろ見て面白いか?素朴なんだろ?」
「いや、まあそうなんだけどさ…。自分の部屋じろじろ見られるの嫌だよね…ごめん」
「いいって謝るなよ。別に怒ってたわけじゃないんだし」
「そうだよね…えっちい本とか同学年のしかも同じ部活の女の子に見られたくないよね。うんうん」
琴美は俺の言葉なんか聞いてなんておらず、勝手に変な解釈をされていらっしゃった。
「言っとくけどそんな本ないからな?」
「本当に?じゃあありそうなところ探しちゃおっかなー」
「おう、二か所までなら探していいぞ」
「二か所…ねえ。まあ、いっか」
そういって琴美は心当たりがあるのか怪しそうなところを探し始めた。
少し経ってから手ぶらの琴美が俺の元へと帰ってきた。
「本当だなかった」
「だろ?」
「うん。これは認めるしかないね」
その後自然な流れで俺は近くにあったクッションへ。琴美は俺のベッドに座った。
あー、シーツがぐちゃぐちゃになっちゃった。後で直しておかないと…。
「そういえば、玲って中学で付き合ったことってあるの?」
「え、いきなりどうした!?」
「いや、ちょっと気になってさ」
「いや、誰とも付き合ったことないよ。琴美は?」
突然の質問に驚いたが、素直に答え琴美に聞き返す。
「私?私は一度もないよ」
「え、まじで?琴美なら付き合ってそうなんだけどなー」
「え?なんで?」
「その辺はご想像におまかせします」
「なんで!?」
「なんでといわれてもねえ…」
少しの静寂が流れ、逆に俺が質問することにする。
「じゃあなんで知りたいの?」
「そりゃ気になるじゃん?」
「っといわれてもな。ま、諦めてくれ」
「うぅ…」
ふぅ、なんとか言うのは回避できたか。理由なんて直接いうもんじゃないよな。
「そういえばさっき聞き忘れたけどさ」
「何?」
「何時まで大丈夫なの?」
「あー、帰る時になったら言うよ」
「わかった」
そして俺達は学校のことなどの雑談をしてその後を過ごした。
あれ?やば寝ちまった。琴美は!?っと思って左右を見るが琴美は見当たらなかった。
もしかすると俺が寝ている間に一声かけて帰ってしまったのかもしれない。
「あ、玲起きたんだ」
そう思ってた俺は後ろからいきなり声が聞こえてきてびっくりした。
「え、琴美!?」
「なにびっくりしてるの?」
「いや、だって俺寝ちゃってたから帰っちゃったのかと」
「いやいや、もし仮に帰ったとしたら家のドア開けっぱなしで帰らないとでしょ?そしたら泥棒とか入ってきた時大変でしょ?」
「あ、そうだね。ありがとう」
「いや、そこまでじゃないよ」
「いやいや。って言うか時間大丈夫なの?」
「うん。玲寝てたけど、実際30分ぐらいしか寝てないよ?」
「え、あっ本当だ!」
時計を見たらまだ6時28分だった。
なんだ結構寝てたのかと思っちゃったよ。
「そうだ玲。一緒に夕飯食べに行かない?」
「え?俺は丁度一人で食べないとだから大丈夫だけど、琴美は大丈夫なの?」
「親に友達と一緒に夕飯食べるからってメールしとけば大丈夫!」
「そっか。もう行く?」
「いや、もうちょい話してようよ」
「そうだね。まだ6時30分だし」
「うん!」
結局、駄弁ることにはなったのだが…。まだ少し眠い。
「玲もしかしてまだ眠いの?」
「うん。まだちょっとね」
「じゃあ7時30分まで寝ていいよ?」
「え?その間琴美はどうするの?」
「んー。隣で玲の寝顔でも見てよっかな」
「え…?」
「嘘だよ!実は本持ってきてるから読書でもしてるよ」
「そっか。んじゃお言葉に甘えて。おやすみ」
「うん。おやすみー」
と、俺はまたも寝てしまったわけで…。生活リズム崩れないかなと少しだけ心配してしまったが、まあいっかと思い夢の中へとおちていった。
ん…?どこからか音がする。上か?
そう思い腕を上げ、音のするところを叩いてみるが伝わってきたのはベッドの柔らかい感触だけだった。どうやら空振りしたらしく、音は鳴りやまない。
「くっそ…なんで目覚ましがかかってんだよ…っと!」
俺は改めて目を閉じたまま音のなる方へ手を振り回していたら、なんとか目覚まし時計を叩くことができ、止めることに成功したようだ。
そして目を開くと、そこには琴美が目の前で寝息をたてて、すやすやと眠っていた。
…!?なぜ琴美が俺のすぐ横で寝ているんだ!?やべぇ超緊張してる。顔ちけぇ!しかも唇とほんの数センチぐらいだし!そして何でだ?なんで琴美が横で寝ているんだ!?んーまああれだ、まずは起きるか…。
さて、あーなるほどねそういうことか。俺の予測に過ぎないが、多分琴美も眠くなってしまい、そのまま寝るとお互い7時半には起きれないと判断したのだろう。それでその十分前、つまり7時20分に目覚ましをセットしておいた。ってところだろうか。肝心の本人は起きてないけどな…。実は琴美は朝が弱かったりするのだろうか?…んまあ、その辺は後で機会があったら聞くとして、今は琴美を起こすことにするか。
そして俺はしゃがみながら寝ている琴美に声をかける。
「琴美ー。おーい琴美ー!」
「うーん。あ、玲!」
「おはよー!」
「おはよーじゃないよ!って一応目ざましやっといてよかったみたいね」
「そうだね。てゆうかなんで目覚ましかけてあんの?琴美起きてたんじゃないの?」
「いや実は…私も眠くなっちゃって。じゃあ起きなかったら大変だから目覚ましかけておこうかなって思ったわけ」
「なるほどね。だからこんなにシーツがぐちゃぐちゃになったのか…。もしかして琴美って寝ぞう悪い?」
「うっ…。わ、悪い!?」
「悪くはないが。そのせいで俺の隣で寝てたんだぞお前」
うわっ誰が見てもわかるような感じに顔が赤くなってくよ。やっぱ恥ずかしくなるよなぁ。俺も起きた時そうだったし。
「ちょ、そ、それは本当なの!?ど、どうせ嘘とかなんでしょ!?」
「違うよ。本当さ」
「…。もう!玲のえっち!痴漢!変態!!」
はい、ぶたれましたー。俺悪くないよね?絶対にあっちが悪いよね?
「ちょっ、いきなりぶつのはないだろー!」
「だってー。よし!この件はなかったことにしよ!」
「琴美が言うな琴美が!!」
「え!?まぁそうだけどさー。別にもうお互い忘れようよ」
「わかったよ。あっ!もう7時30分過ぎてんじゃん!早くいこうよ!」
「あ、本当だ。玲は準備とか大丈夫なん?」
「うん大丈夫!じゃあ行こうか」
「うん!」
そして俺達は部屋を後にし、しっかり鍵を閉めて目的の場所へと向かうことにした。
俺達二人は車道沿いにある歩道を並びながら歩いていた。
にしてもまだ四月だからなのか、そこまで暑くなくて制服でいても丁度いい感じだ。
「な、なんかこうやって歩いているとデートしてるみたいだね」
あー、確かに他の人からみたらデートしてるみたいだよな。あっ確かこういうデートを…。
「これって制服デートってやつだっけ?」
「う、うん!そうだね!」
「琴美は今日楽しかった?」
「うん!すごく楽しめたよ!」
「そっかよかった」
「こんな楽しかった放課後は初めてだよ」
「え?あ、そっかいつも一人で帰ってたんだもんね」
「うん。今日はありがとね!」
「って言ってもまだ飯を食べに言ってないけどね」
「あっそうね。早く行こっか!」
「そうだね」
俺達はゆっくりと歩きながら、今までのことや学校での世間話などの話しをして店へと向かっていった。
「ここ?」
「うん。ちょっと遠かったけど大丈夫だった?」
「大丈夫、大丈夫」
「じゃあ行こっか」
「うん」
俺がドアを引いてから、俺達は店の中に入ったのだが。かなりがら空きだった。やっぱ平日だからなのかな?
「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?」
「はい」
「では席へご案内します」
俺達は店員さんについていった。まぁ俺も昔はよくここに来てたから大体店の中は把握できてるのだが。なるべく端の方にしてほしいっとひそかに願う。
「こちらになります」
おぉ!壁際の端きたぁぁ!!!今日は運がいいな!
「ご注文がお決まりになりましたらこちらのボタンを押してください。ごゆっくりどうぞ」
そう言って店員は去っていった。
「今日は俺がおごるよ。なんか好きなもの食べていいよ」
「え!?そんな、いいっていいって!ちゃんと払うから!あっ」
「どうしたん?」
「いや、財布家に忘れてきちゃった…。だけどおごりだなんて…。ちゃんと今度返すよ!」
「いいっていいって。今日はおごらせてくれよ」
「なんで?」
「まぁその辺は気にするなって!ほら何食べる?」
琴美は少し不満そうな顔をしたが、どうやら諦めたらしい。
「えーと私はこれだね!」
「じゃあ俺はこれにしようかな」
お互いの注文するメニューが決まり、各テーブルに置いてある呼び出しボタンを押す。
すると、音が鳴りそれに気が付いた店員がこっちに向かって歩いてきた。
「はい。ご注文はお決まりでしょうか」
「私はこれで」
「じゃあ俺はこれで」
「はい。かしこまりました。少々お待ちください」
そういって、去っていった。
「そういえば、琴美って俺の連絡先知ってたっけ?」
「ううん」
「じゃあ教えるよ」
「え!?あ、うん!」
「じゃあQRコード出すから読み取ってね」
「おっけー」
おっきたきた。あれ?俺っていつからこんなに積極的になったんだろうか。
「あっ、俺が今からメッセージ送るよ」
「あ、うん。わかった」
ふぅ。これで連絡先交換完了っと。
人があまりいないからかお互いの連絡先を交換し、俺がトイレに行っている間に料理は運ばれてきていた。
「あれ、もうきてたのか」
「うん、ついさっき」
そう言いながら琴美はナイフとフォークの先端を俺の料理の上にハの字で置く。
「お、ありがと」
「いえいえ、それじゃ食べよっか」
「うん、そうだね。いただきまーす!」
「いただきます」
ハンバーグをナイフとフォークで一口大に切って頬張る。
「うーん!さすが大手チェーン店だけあって昔と味が変わらないや!」
「あれ?玲も、昔これ食べてたんだ」
「まーね。よく親が連れてきてくれたんだよ」
「そっか」
そんな他愛もない普通な会話をしながら食べ進めた。にしても、玲『も』ってことは琴美もよく食べたのだろうか?んま、その辺は気にしなくてもいっか。
いやーおいしかったおいしかった!超満足だ!
「おいしかったね!」
「うん」
「んじゃ、食べ終わったことだし帰りますか」
「そうだね。もう8時過ぎちゃってるし」
「大丈夫なの?」
「え?何が?」
「いや、家の事情とかさ」
「大丈夫だよいつも遅いし。この時間帯にはまだ帰ってないんだ」
「そっか。じゃあ琴美の家まで行きますか!」
「え、あ、ありがとう!」
「いいって。別に最初っから送っていくって言ってたじゃん!」
「あー、そっか。そうだったね」
「じゃあ行こっか」
席を立ち会計を済ませた後、俺達は琴美を家に向かった。
その店から琴美の家はそこまで遠くなかった。だけどそれまでの時間はものすごく楽しかった。美花と話すとき並に。
だけど、どうせまた部活で話せるやって思ったらそこまで別れるのは苦ではなかった。
「あ、あそこが私の家ね」
「…結構普通だな」
「さっきのおかえしとかかな?」
「なに!ばれてたか!」
「ばればれだよ!」
「そっか。んじゃまた明日学校でな!」
「うん学校でね!」
そういって琴美は自宅の中へと入っていった。
さて、ここからが問題だ。全くもって帰り道がわからない。でもまあさっき来た道を戻って店につけばそのあとはわかるから、とりあえず来た道を戻るとしよう。
その考えは功を奏し、なんとか無事に日付を回る前には帰ることができた。
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