第6話 「確認」
しばらく沈黙の時間が続いた。さすがに気まずくなってきたので、俺から話しかけてみることにする。
「美花?」
「な、何よ?」
「お父さんから聞いたのか?」
「…ええ、聞いたわよ。再婚ですってね玲の親と…」
やっぱりか。今日の反応的に気付いてたけど、やっぱり知ってたみたいだな。
「ああそうだ。どう思う?」
「ど、どう思うじゃないわよ!そっちこそどう思ってるのよ!?」
「俺か?もう俺は決心ついてるから別にいいと思ってる。だって俺はもっと前から知っていたからな」
「え!?嘘だ!いつ知ったのよ!」
「前、美花に電話した時だよ」
「……ああ!あの時ね。じゃあなんであの時に言わなかったの?」
「俺よりもお父さんから直接言われたほうがいいかなって思ったんだよ」
「そ、そんなわけ…ないじゃん…」
そこで、美花は顔を紅潮させて、俯いてしまいった。
「わ、私は…から言ってもらった方が…かった」
美花にしてはかなり珍しいのだが、かなり小声になって、途切れ途切れにしか聞こえなかった。
「え!?いまなんて言った?」
「な、なんでもないわよ!」
なんか必死な顔で言ってきたので、さすがに追求はしないことにした。こんな顔初めてみたな…。
「そうか。それでさ、これからは学校では誰にもばらさないようにして、名前はそのままで学校生活も変わらず過ごそうと思うんだが、これでいいか?」
「う、うん!それが一番いいと思う!」
「じゃあこれで決まりだな。ってことは俺達これから兄妹になるんだよな…」
「そうだね…。そういえば誕生日的には、私が妹ってことよね?」
「まあ、そういうことになるな。まさかこんなことになるとは思ってもなかったよ」
「そうだねー、高校入学してからこんなことになるだなんて思わなかった」
「一緒に暮らすんだよな俺達」
「ま、まぁそういうことになるわね」
「なんか、いつも一緒にいた気がするから、そんなに新鮮!って感じじゃないんだよな」
「え、そう?私は新鮮!って感じがするよ?」
「まじか!まぁ、また今度このことについてはゆっくり話そうや」
「そうだね。じゃあ私こっちだから。じゃあね!」
「おう、また明日な!」
なんとか気まずい感じにはならなかったけど、これから大変になるなぁ。もし学校中にばれたらどうしようか…。てゆうかそれより、ずっと一緒に帰ってたら付き合ってると思われそうで困るな。まあ、その辺は美花と話し合えばいいか。どうせまた明日、部室で会えるのだから…。
その夜、俺は夢を見た。美花と美花のお父さん、そして俺の母さんが、みんながリビングに集まって、夕食を食べているのを。本当に幸せそうでみんな笑ってた。ちゃんと過ごせてるなって起きた時に思った。まぁ、夢だからわからないだろうけど、きっと正夢になってくれるだろうと思い俺は学校へと向かった。
いやー、たまには誰にも会わずに学校に行くっていうのもいいなー。本当一人でいると心が落ち着くよ。
「おはよー!玲!」
いきなり誰かが俺の名前を呼びながら、左肩を叩いてきた。んな…、誰だ!俺の、のんびりできるこの時間の邪魔をするのは!?
そう思い横を見ると、琴美が俺に微笑みかけてきていた。
「って琴美かー。びっくりしたよ」
「あっごめん!びっくりさせるつもりじゃなかったんだけど…」
「いいっていいって。…そういえば昨日もこんなことなかったっけ?」
「…。あっ!あったねそんなこと!」
「俺が部室で待ってたらさ、琴美が入ってきていきなり驚いてさ」
「そうそう!そうだったよね!入った瞬間に挨拶されたからびっくりしたよ」
「ごめん。本当にあの時はびっくりさせるつもりはなかったんだけど」
「もういいって。気にしないでよ!」
「お、おう。あ、そうだ、琴美ってどこ中だったの?」
「えーと、八城中だよ。玲は?」
「あれ?八城なの?俺、湊中だよ」
「あれ!?案外学校近かったんだ!」
「みたいだな。じゃあいつも歩きで帰ってるん?」
「まあそうだけど…。疲れちゃう」
「まあな。俺も歩きなんだが結構疲れるんだよなあ…。そういえば方向どっちなん?」
「ん?帰る方向?」
「うん」
「えーとねー…。あっち」
「あ、俺と同じ方角だ」
「え、本当!?じゃあ今度送ってってくれない?いつも一人で寂しいんだよ…」
「まあいいけど。友達とかいないの?」
あ、その場合美花に先に帰ってもらえるように言わないとだな…。
「え?いるよ?だけど方角反対だったり、電車の子とかばっかりなんだよね」
「そうなのか…。それは仕方ないな」
じゃあ、美花の家も知らないみたいだな。よかったんだか、悪かったんだか…。
「ってことで今日部活終わったら一緒に帰ろうよ!」
「え?今日!?さっき今度って言ってなかったっけ!?」
「まあまあ!細かいことは気にしない気にしない!ほら学校ついたよー!」
うわっまじか!こりゃ部活の時に話をまとめるしかないな。
「じゃあまた部室で!」
「おう、またなー」
琴美は手を振って下駄箱の方へと走っていった。俺はその背中を見つつ下駄箱へとゆっくり歩いていく。さて、琴美にどう説明しようか…。
眠い。超眠い。なんなんだよあの先生。口調がのんびりしすぎて、もうむ…り。
はっ!つい寝てしまった!今は…、なんとかまだ授業中のようだな。っと、亮介寝てやがるぜ。起こしてやりたいがまた眠気が…。やばい。耐えろ俺。耐えるんだ俺。
…よし復帰したぁ!もうこれで大丈夫だぜ!さて、亮介をどう起こそうかなーっと。
うーん、ペンで背中を刺すか。いやいやつまらないな。こちょこちょは?いや、これは亮介の反応しだいでは注目されることがあるから却下だな。
よし!ここは俺の良心で普通に起こしてあげようではないか。
俺って優しいなーと思いながら、手を亮介の左肩に向かってのばしたその時。亮介の体が起き上がり、黒板に書いてあることを写し始めた。
え?ここで起きるか普通!?しかも写し終わった後、普通に寝始めやがったし!俺のさっきの努力はなんだったの!?
まぁいいや、今度こそはしっかりと起こしてあげよう。っと思ったがやっぱやめた。もう面倒になってきたし。
「ふわぁー…」
なんか俺もなんか眠くなってきちゃった。さっき完全復活宣言したのなー…。
やっぱ今日の睡眠時間が4時間だったのがいけないなかな…。あ、やばいもう無理…だ。
んー…。よく寝たー!っていつの間に夕方に!?やば俺寝すぎた!
「ってゆうか、亮介起こしていけし!」
「ん?呼んだか玲?」
「おぉ、亮介!っているんなら起こせよ!いつの間に夕方になってるじゃん!」
「え?寝てる玲が悪いんじゃないか。授業中に寝てる玲が悪い」
「はぁ?それならお前だって寝ていたじゃないか!」
「あれは寝ているふりだ」
「う、嘘だ!確かに亮介は寝ていたはずだ!」
「じゃあ確信できる根拠はあるのか?」
「な、ない…」
「じゃあ諦めろ。授業中に寝ていたお前が悪い」
「うぅ。けどせめて起こせよ!」
「お前なんか起こすわけないじゃん」
「な、なんで!?」
「お前が嫌いだからだよ」
「え…?」
「だから、俺はお前が嫌いなんだよ。だから見知らぬ他人を起こすなんておかしいだろ?」
「あー俺も斉藤のこと嫌いー」
「私もー」
「俺もー」
みんなが俺のことを嫌いって言ってるよ。俺泣く!てゆうかもう泣いてる!こんなクラスなんてやだー!!
「じゃあな、斉藤玲くん。まあお前の顔なんてもう見たくないけどな」
う、うわーーーーーーん!!!!!亮介がー!!!!
「玲…玲!!」
はっ、あれここは?教室?
「おいどうしたんだよいきなり泣いて。」
そこには亮介がいた。あれ?今は休み時間なのか?夕方じゃないし。ってことは、まさかさっきのは夢!?
「お前、寝ながらいきなり泣き始めたからみんなびっくりしてたぞ?何があったんだ?」
あ、そうか。今はさっきの授業が終わった後の休み時間ってわけか、なるほどなるほど…じゃねぇし!
「いや、夢の中でな、俺このクラスの全員に俺のこと嫌いだ!って言われまくった夢見てさー、夢の中で超大泣きしてたってこと」
「お、おま…お前かなりやばい夢を見たな。もしかして俺も嫌いだって言ったのか?」
「ああ、もちろんな」
「まじかよ!まあ、それは夢だ。現実じゃなかっただけよかったじゃん」
「お、おう。本当にひやひやしたよ」
「まあ、夢だったってことで。ほら授業始まるぞ!」
亮介がそう言って前を向くと、始業のチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
さっきのが夢で本当に良かったが、まさか正夢になんかならないよな!?なったら絶対に不登校か退学するな。まあ、気にしないで授業しっかり受けるとするか。
あれ?亮介なんか泣いてないか?しかも寝ながらって…。
まさか俺と同じ夢を見たのか!?授業終わって今は休み時間だし、そろそろ起こして事情を聞くかな。
俺は亮介の肩をたたいてやった。
「ぐすっ。ぐすっ」
やっぱり泣いてやがった!
「大丈夫か、亮介?」
「うっ…うっ…。玲ー」
おい、泣きついてくるなよ気持ち悪い。
「さっきの玲と同じ夢見た…」
やっぱりか。お前も辛い思いしたんだな、うんうん。わかるよその気持ち。
「大丈夫だ、わかるぞその気持ち!」
「玲と状況は同じだけど、内容は逆だったよぉー!!」
え、今なんと?逆だと?
「それはいったいどういう意味だ?」
「玲とは逆にみんなから、ほめられたりした!」
「お前、嬉し泣きかよ!」
今度は俺が泣いていたよ。
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