第2話 「衝撃発言」

 数日後。結局俺は高校生活が始まったばかりなのに、いきなり風邪をひいてしまい仮入部や部活動見学が全くできなかったのだった。そしてどうしようかな…っと悩んでいたとき、隣で歩いていた美花が俺の心でも察したかのように、とあることを提案してきた。

「ねぇねぇ、私たちだけで部活作ってみない?」

「え?急にどうしたの?」

「いや玲、風邪で寝込んでて部活もろくに見れてないでしょ?」

「まあそうだけど…美花は部活動入らなくていいの?」

「うん。実は私も部活決まってなくてさ。それで生徒手帳みたら、こう書いてあったの」

 美花の見せてきた生徒手帳にはこう書いてあった。 

 第16条部員5名以上。そして部長、副部長の決定済み…書いてあることが多すぎる…。

「でね、もう部員四人集まったし顧問のサインも、もらったからあとは玲に入部してもらえばいいってわけ!だから、はいってくれるよね?」

「もうそこまでされてるのに入れないって言えるわけないだろ。入ってやるよ」

「やったー!よろしくね玲!」

 っと、意外な形で部活が決まってしまったのだが…。まあいっか、新しい部活動で、しかも5人という少ない人数で部活できるのだから。


 家に帰り、食事をしている最中に母さんが珍しく真剣な顔をしてこっちを見ながら言ってきた。

「玲、ちょっと話があるんだけどいいかな?」

「ん?どうしたん?」

 そう俺が問い返すと、少しだけ言うのを躊躇ったのか俺から視線を外した。が、すぐに俺の目を見て言ってくる。

「…実は母さん…再婚しようと思ってるの」

 いきなりすぎて声にならなかった。けど、これは母さんが決めたことだし、俺には止めることはできない話だ。少し知らない家族が増えるだけ。そう割り切れば全然大丈夫だ、きっと…。

「そっか。まぁ母さんが決めたんだからいいよ。再婚…しなよ」

「玲…ありがとう。ただ再婚するから引っ越そうと思うの。大丈夫?」

「まぁ、いいけどちゃんと学校には通えるんだよね?」

「えぇもちろんよ。別にここから近いし全然大丈夫よ」

「ならよかった。それでそのお相手さんって誰なん?」

「………」

 母さんは少しだけ俯いて黙ってしまった。俺はそんな母さんを見て話題を変えようとはしなかった。この話は話を変えていいほどの気軽な話ではない。そのくらい俺にでもわかる。だから母さんが何か言ってくれるまで俺は待つことにした。

 そして沈黙の時間が続き、だんだん気まずくなった来た頃に母さんは顔を上げて重そうな口を開く。

「……幼馴染の…美花ちゃんのお父さんよ」

 俺はその場に固まってしまった。ただただ理解が出来るまでずっと…。


 やっと、整理がついてなんとか飯を食べ終えた後、母さんが

「後、今週の日曜日に子供たちもふまえて、顔合わせという感じで集まることになったわ。だから、その時に美花ちゃんのお父さんにもちゃんとあいさつしてね」

 …そうだよな。そりゃ顔合わせとかはしないとだよな。

「そういえば、おじいちゃんとかのご報告的なあれって、もうすませたの?」

「うん…。もう済ませてあるわよ。後は挙式くらいかな」

「そっか…。ちょっと慣れるまでには時間かかるかもだけど、頑張ってみる」

「…っ。ありが…とうっ」

 母さんが泣き始めてしまった…。そんな親の決め事に子供が介入するのは良くないしな…。しかもそこまで話が決まっているのならなおさらだ。

「ほらっ、飯食べようよ。冷めちゃうし…」

「そうねっ…。食べましょっか」

 その後は終始無言だった。母さんは泣き止むまで結構時間かかったし、話しかけにくいムードだったというのもあった。けど、どこか母さんは嬉しそうで、本当によかったなって思う。是非とも幸せになってほしいな…。


 俺は自分の部屋に戻っていた。ただ、ひとつだけ疑問に思ったことがある。美花は…、美花はこのことを知っているのだろうか…。今確認してしまおうか…どうしようか…とずっと悩んでいた。

 それから数十分経ち、結局俺は今聞いてみることに決めた。もし美花が知っていたとして明日、俺はどんな顔をすればいい?何を話せばいい?だったら今聞いて話し合って、『普段みたいに接し会おう』って言えば楽じゃないか!と考えた。だから…俺は美花に電話をかけた。メールにしようかなと悩んだのだけれどもやっぱり電話のほうが美花が嘘をついているのかわかりやすいと思ったからだ。

「もしもし?玲、こんな時間にどうしたの?」

 美花は、電話をかけたらすぐにでた。携帯でもいじっていたのだろうか…。

「いや…。美花あのな…」

「ん?どうしたの?」

「いや。それがな…」

「ん?なんも用ないんなら電話切るよー?」

「あ、ちょっとそれは待ってくれ…」

 はぁ…。っと長いため息をついて、俺は覚悟を決めて美花に聞くことにした。

「美花、お父さんからなんか聞いたか?」

 俺心臓バックバクでやばい状態だった。

「んーいきなりどうしたの?」

「どっちなんだよ!?」

「うぅ…。なんも聞いてないよ?いきなりどうしたのそんなにこわばった声だして…?」

「いや、なんでもないよ。ごめんないきなり電話しちゃって」

「いいっていいって!じゃあまた明日ね!」

 と言って美花は電話を切った。はぁー…。よかったぁー…。これで美花が知ってたらやばかったな。もし、知ってたら明日会った時に、話にくくなっちまうもんな…。けど、いつか知らされるんだよな。ちゃんとそん時の覚悟もしておかないとなんだよな。

 そんなことを思いつつ俺は眠りについた…。

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