第1話 「再会と入学式」
入学式…俺はあいつと一緒に久しぶりに登校した。約三年ぶりだな…。
「ついに高校生だな…」
「そうだねー…、まさか同じ高校にいくだなんてね…」
「こんなこと想像できなかったな」
「うん。こんなことってあるんだね」
あはは…といつものように笑いながら高校までの道を歩いていた。
「そういえば今日暇?」
「えっ?まぁ暇って言えば暇だけど…。どうして?」
「いや今日ね、小説の新刊が出るから一緒に買いにいかないかな?って思って…」
「あぁ、全然大丈夫だよ。んじゃ集合場所とかはあとで決めるか」
「うんわかった」
とか話していると、もう校門についてしまった。駅から高校までの歩く距離は本当に短かった。
校門にはもちろん入学式と書いてある(よくある掛け軸的なあれだ)のがおいてあり1本の桜の木がたっていた。
その木はものすごく立派だった。
「いこっか…」
「うん。クラスとか気になるしね」
俺たちは校門をくぐり、新入生の生徒らしき集団がいる場所に移動した。そこはまるで合格発表のような感じに混み合っていた。
そこの先にはクラス名簿が貼ってあり、その中から自分の名前を探すというごく普通のものだった。
「ねぇねぇ、私2組だったけど、玲は?」
俺は、俺は…と。…あ、あった。
「3組だな。今年も違うクラスだな…」
小学生の頃、俺達は六年間ずっと違うクラスだったのだ。まぁ、仕方ないんだけどな。
「えー、またかぁー…。まぁ仕方ないね!」
そういって彼女は割り切ったよう表情をして、下駄箱の方へと歩いていった。俺はその後についていく。
「そうだな。そういえば集合場所はどうする?」
「んーとねぇ。校門前にしとこっか」
「わかった。んじゃまた後でな」
「うん、また後でね!」
そうやって別れた俺たちはそれぞれ違うクラスに向かった…。
「ここ…か」
教室の中はアニメとかを見ていたせいで、予想通りというかなんというかどんよりとした空気となっていた。みんながみんな席についていて、緊張をしているような感じだ。まぁそりゃあ、元々同じ学校の仲の良い友達とかクラスにいない限り、みんな初対面だからな…。
ちなみに俺は結構ギリギリについていたため、誰が誰だかわからないし、同じ中学の人がいるかさえもわからないまま、席に向かったのだが…。
俺の席の後ろには見覚えのある後ろ姿があった。あぁ、多分やつだ。きっとやつだ。けどここで話しかける勇気も俺にはない。だってそもまず、この空気で話しかけられるはずがない。
俺はその席を通り過ぎ、ひとつ前の自分の席に着き、教室の前のドアから担任が入ってきてホームルームに…。
「えーっと、これからこのクラスの担任を務める夏目優樺ですっ。これから1年間よろしくーっ。えーっと、まずは自己紹介からかなー…」
と、めっちゃ綺麗な20代後半らへんの担任の先生の自己紹介が終わり、クラスの自己紹介へ…。
各々が自己紹介を終え、自分の自己紹介を緊張しながらもちゃんと終えたのだが…。俺は後ろのやつの自己紹介の方が気になっていた。多分あいつだから。
「名前は佐藤香奈枝。大枝中出身。どうかよろしく」
えっ、佐藤香奈枝?まさか…ね?っと思いつつ後ろを向くと、そこには奴がいた。えっ…とは思ったのだが確かに俺が知ってる香奈枝だった。
もし俺の知っている香奈枝だとしたら、実は俺のはとこで昔会ったことがある。でも、昔といっても小学校低学年ぐらいまでしか会ったことがないからなんともいえないけどな…。それにあの時のあの顔から、ここまでかわいくなってるとは思わなかった。
髪はショートカットだったし、茶色かったはずだ。それが今は、髪はロングヘアになってるし髪は黒い色になっている。染めたのだろうか…、それとも…
「…なんかよう?」
っと、さすがに席に着いた後もずっとみていた俺が不思議だったのか、香奈枝が声をかけてきた。ちなみに、自己紹介のほうは次の人が始まるところだった。
「あ、いやなんでもないさ」
「なら、前を向いたら?周りから見たらおかしく思われるわよ?」
「あ、あぁ…うん」
俺達は、香奈枝が一番後ろの席、俺がさっきも言ったが、その席のひとつ前である。つまり、香奈枝の後ろにはロッカーがあり、不思議に思うのは、俺の席の列と香奈枝の列の二列だけなのだが…。確かに、おかしく思うよな…こんなにずっと後ろ向いてるんだもん。
そうか…あはは。あの反応からして香奈枝は俺のこと覚えてないみたいだな(泣)ふっ、悲しくないさ…うん。別に悲しくはないさ!
まぁ俺は、はとこって言われて初めて会いに行ったときに、明るくてすごく印象に残ったから覚えてただけであって、まぁあれ以来2,3回しか会ってないから、覚えてなくても普通だけどさ…。まあ、仕方ないか。
朝のホームルームも終わり授業までの自由時間になった。
「おい玲!なんだあの美少女は!知り合いなのか!?」
あー、こいつおんなじ高校だったんだっけ。
いきなり休み時間になって話しかけてきたこいつは白仁田亮介。なぜかこいつも関わりがあって小学、中学ともに同じで、まぁ一番の友達の仲ではあるのだが、まさか高校まで同じだとは知らされてなどいなかった。
「おぉ、亮介~同じ高校だとは知らなかったよー」
「はぁ!?お前相変わらずさらりとひどいこと言うよなぁー。さっきの俺の自己紹介聞いてなかったのかよ…」
「いやあ…ちょっとぼーっとしてまして…」
本当は後ろにいる香奈枝のことが気になってて他の人の話なんか聞いていなかったってところなんだけどな。
「いや、みんなの自己紹介の時にぼーっとするなよ…。じゃなくて!!誰だよあの美少女!知り合いなのか!?」
って言われましてもねー…。あっちは俺のこと、はとこって知らないわけだし、今事実を言って変に誤解されるのもやだしなー…。よし、ここは嘘をついといてしのいでおくか。
「いや、たまたま後ろの席で話しただけさ。だから何の関わりもないさ」
「そうか…。知り合いだったら紹介してもらおうと思ったのに」
「お前相変わらず美少女には、目がないんだなぁー」
「まぁな。美少女はほとんどチェック済みだからな!」
と、なんか胸をはって答えている亮介。こいつ顔はかっこいいし、運動もできるからもてるっちゃあもてるんだけど、なんかもったいないというか、残念というか…。中学のときも美少女から告白されてもなぜか断るし…。本当によくわからないやつだ。
「ふーんお前らしいなー。そういえば部活どうすんよ?」
「あぁー、俺はサッカー部にはいるつもりだぞ?玲は?」
あ…。話をふっときながら自分は決めてなかった。どうしたもんか…。
んまぁここはいつものあれでいくか。
「亮介とは違う部活に入る」
「お前…またかよ!中学の時もそうだったよなぁー」
そうなのだ。中学のときもこいつがサッカー部に入るといったから、俺は亮介とは違う、文化系の部活動に入ったのだ。しかも、たまたま2年の時に同じクラスで、文化祭の案が出された時もあいつとは逆の意見を出したりと、すべてにおいて違うことをしてきた。なのになぜだろうか、そういう学校関係に関すること以外は案外意気投合するんだよなー。だからこんなにも仲がいいんだろうな…。
「仕方ないだろー、俺お前ほど一緒に運動したくないやついないもん」
「うわ~、いまのは傷ついたわー…」
「ご、ごめんって。まぁ、また今度暇あったら遊びにでもいこうぜ」
「むぅ…。わかったよ」
と、ここで授業開始のチャイムがなった。
「おっと、もう時間か…。また後でな」
といって亮介は自分の席に帰っていった。
まぁ、授業といっても今日は入学式のため授業という授業ではなく、ちょっとした学活みたいなもので、そう急がしいものではなかった。
そして入学式。なんかこの高校は午後に入学式をやるらしく、入学式の前に自分のクラスの人の顔はなんとなくわかってしまうのだ。
「なぁなぁ、あの校長のハゲ方やばくねぇ?」
あぁーなんでここで話かけてくるんかな?場をわきまえてほしいものだ…。
「あぁそうだな。すげぇーすげぇー」
「お前…。まぁ見てみろってやばいから」
………。あはははは!やべぇ!なにあのハゲ方!まじうける!
「亮介。お前はやっぱり最高の人間だ…。だがちゃんと場をわきまえようか。…くっ」
「なんだよー。お前今笑ってたくせにー…」
という愚痴ってる声が後ろから聞こえながらも無視していた。まぁ校長が話してる間ずっと笑ってたけど…。
入学式も無事に終わり教室に戻った俺は、帰りの連絡やら色んなかったるいことを終わらせ、帰宅の準備を始めた。
「玲ー、帰ろうぜぇー!」
「わりぃ、今日は先に帰ってくれないか?」
「なんでだよ?」
まずい、ここで美花の話を出すわけにもいかないしな…。ここは定番のあれでいこうか。
「家庭の用事だ」
「ちぇー、じゃあその辺の美少女誘って帰ろうかなー」
などといいながら教室を去っていった。あいつ、本当にその性格は直したほうがいいと思うが…。そういえば今日、あいつに二度も嘘ついちまった、まぁ、あいつだからいっか!
それに今日は約束があるから仕方ないんだ。そう、今日は美花との約束があるのだから…。
放課後…。俺は約束した校門の前で美花を待っていた。ただ、帰宅する生徒がかなり俺を見て不思議がってた時は恥ずかしかったなー…。
「ごっめーん!待たせた?」
「いいや。いこっか」
うん!と返事してきて俺たちは書店に向かった。
その後本屋に行ったものの、結局俺は元から買おうとしていたものが売ってなく、ずっと美花の付き添いをしていたわけで…。
けど、美花は買いたい本が買えてご満悦のようだ。
「ごめんね玲、付き合わせちゃって」
「いいっていいって!気にするなよ。買いたいもん、買えたんだろ?」
「うん!これほしかったから。ありがとね!」
って美花は言ってくれるが、本当におごったわけでもないし、ありがとうって言われる理由がわからないのだが。
まぁ美花が喜んでくれたんなら全然いいんだけどね。
「あ、私こっちだから。じゃあね!」
「いいって今日ぐらいは送っていくよ」
「えっ?本当に?いいって別に…帰るの大変になっちゃうよ」
「別に一緒に帰りたいって言ってんだからいいだろ?」
「うぅ…じゃあお願いしようかなー!」
と、彼女の家の方向に向かって歩いていく俺たちだった。
美花を家まで送ったあと、家に着いた俺はただいまーと言って自分の部屋に入り、制服を脱ぎ捨てた。
ふぅー今日は色々あったなぁー…。
入学式、佐藤香奈枝との再会、親友が学校に入学してたこと…。まだまだ色々あったな…。けど、これからこの学校で俺の高校生活始まるんだな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます