空に焦がれる
「ニブ様、私、満月の日が恋しいです」
陽の光の下、銀髪の青年が佇んでいる。そのまなこは閉じられ、ルチアナの言葉に答えるのは龍の唸り声だ。
青年のまことの姿は古き龍だ。年老い、地を這うことしかできなくなった古龍だ。
古龍の花嫁となったルチアナには、彼の言葉は分からない。龍の姿を取っていても、人の姿を取っていても。彼がその口から発するのは岩を転がすような唸り声だけ。
唯一、彼女が彼の言葉を解することができるのは、満月の夜だけだった。
「ニブ様」
少女、ルチアナは青年の袖を引く。青年は一度、盲いたまなこでルチアナを見たが、すぐに目をそらし、青い空を見上げた。
そして、青年は太陽に向かって手を伸ばす。色素の薄い彼の掌が、陽の光を浴びて仄かに赤く染まる。ルチアナは袖から手を放した。
「それでもアナタは日に焦がれるのですね」
古龍は太陽に向かって手を伸ばす。
かつては自由に飛び回っていたであろう、青い空に。
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