暗闇のシンデレラ

滝尾 陽

再びのシンデレラの想区

久々に新たな想区に来た僕たち。森を5日ほどさ迷った。

やっとの思いで森を抜け町の手前に来て早々にシェインが

「あのお城見覚えがあるのですが…」

「俺にもあるけど…」

と、タオが呟く。

「シンデレラの想区だよね…」

困惑したようにレイナが言う。

「だと思うけど…」

僕も困った。

「これは違いすぎないか!!!」

と、一同あきれたように叫ぶ。

驚くのも無理はない。

広大な高層ビル群に空を飛ぶ飛行機。

高速で走る車の群れに蛍の群れのように輝く信号機。

町の中心部にはシンデレラ城がひっそりと置かれている。

童話にあってはならない姿をそのまま形にしたような街並みだった。

「お前の想区って、こんなだったっか…」

と、タオが僕にあきれたように聞く。

「違うはずなんだけど…」

と僕は困ったように言う。

「実はまだ偶然来たことない想区に、偶然シンデレラ城みたいな建物が偶然あんなところにあるだけなんじゃないのかな…」

と、レイナが願望を混ぜて言ったが次の瞬間にはその期待も崩れてしまった。

主人公たちに見えるビルの入り口に、きっちりとスーツを着た三人の女たちと、大量の荷物を抱えた雑用係のような女の子がいた。

女の子が荷物を落としまった。

「全くグズでクズで力もなくて」

と、一人目の女が言う。

「どんくさくてバカで」

と、もう一人の女が言い

「挙げ句の果てには風邪はよくひく」

と、三人目の女が言う。

最後に

「本当に使えないわね!」

と、息ぴったりの三姉妹らしき女たちが言う。

「す、す、すみません。」

と、一人の女の子が本当に申し訳なさそうに言った。

「まさかとは思うが…」

と、タオが言う。

「シンデレラの想区だね…」

「嘘でしょ…」

と、レイナが呟く。

「あり得ないほど文明が発達してますね…」

と、メカが好きなはずのシェインもあきれてしまった。

そんなふうにあきれていたのもつかの間…

「少し遠くからクロアリの軍勢らしきものが来てるんですが…」

シェインが突然ビルの谷間を指差して言う。

「ウィランだよね…」

「ウィランですね。」

「ウィランだね…」

「さっそくこちらも登場かよ!」

タオが疲れたように言う。

「此処に来てから驚き過ぎてもう疲れるわね。せっせと片付けるわよ。」

レイナが諦めたように言った。

そして、四人は戦い始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る