第12話 サバイバル訓練を逆手にとれ
◇かりん隊
これらの訓練も、過程チェックテストも、そしてそれぞれの訓練最終テストも、すべてグループ単位で行われた。他のグループは、訓練の途中に時にシャッフルしたり、メンバーが入れ替わったようだが、周人のグループはメンツが最後まで変わらなかった。
「君たちのグループは既に、何というかチーム?……になっているし。グループ編成とかチーム編成も、結構疲れるもんなんだよね」
私たちのグループはメンバーが変わらないのかという周人の何気ない質問に、教官からも訓練生からも「部長」と呼ばれる教官は、そう答えていた。
「そうか。すでにチームになっているのか」そのとき周人は単純にそう思った。
実際にそれが分かったのは、第2種統合テストと呼ばれる12日間の山中サバイバルの時だった。
それまでも登山の基礎については学んでいた。毎回、山岳ガイド協会から優秀で一流のガイドが教官として派遣され、地図の読み方や観天望気その他もろもろを座学で学び、月に2~4回の山行で実地訓練をしてきた。
山中サバイバルは、その登山訓練だけに限らず統合テストとしての最終仕上げだ。
携帯も取り上げられてバックパックにそれぞれ三日分の食料と水を渡され、山中に放り込まれる。そうやって直線距離で約100キロほど先の、連なった山の向こうのゴール地点に、12日後の日没までに着かなければいけない。
テストが決行される山の場所は当時にそこに行ってやっと分かる。地図はその時に渡される。国内のどこかである、とだけ言われた。
スタートとゴールが決めてあるだけで、行き方は自由だ。どの道をとろうが構わないし、12日以内ならどうやっても構わない。続けばの話だが。
そしてそれぞれの人間に一つのGPS付きのエマージェンシーコールが与えられる。GPSといっても本部の地図に訓練生の位置が出るが、自分たちは自分たちの位置を分からない。
それぞれグループ6人のうち、何人がゴールにたどり着いたか、それが何日かかったか、脱落者が何人出たか。これらがカウントされ、最終的にはそのスコアが成績となる。場合によってはグループで相談して二つに分かれて山行してもよい。
とにかくサバイバルなのだ。グループで何名サバイバルできたか、何名がゴールに着いたか、それが総合的にカウントされることになる。
バックパックの隙間には、自分の換え服や持ちたい小物など詰めたいモノを積んでもよい。だがグループ全員のバックパックが一つに集められて、秤で正確に計られ、合計で設定以内の重さでなければいけない。
さらに当日の入山前に、大小様々な品物の山からグループで3点だけ選んで持っていっていいと許可が下りる。
選び次第、山に入る。
「6人のうち三日分の食料を3人に渡し、体力的に劣った3人が一日めでリタイアするということもありですか」という質問が出た。その方が効率的だと判断したグループなのだろう。教官はうなずいた。
「ルール内であれば、どの戦略も許される」
第2種統合テストのルール説明と質問は、山中サバイバルの1週間前に行われた。
「前提として、チーム全員で一つのサバイバーと見なすことにしたい。
だいたい、もしこの山中サバイバルがグループでなくていいなら、最初から独行サバイバルにするはずだ。統合テストでチームサバイバルにする理由が必ずあるはずだ」
周人は、最初にテスト説明会が会った時から考えていたことを宣言した。
「何より、一度もサバイバルという痛快な経験をさせずに、訓練を終えるヤツをチームからは出さない。誰かに食料を渡して初日に下山などは、愚の骨頂だ。
ゴールには全員で到達する。誰か一人が脱落する事態に陥った時は、直ぐにあきらめず、相談して知恵を出し、その時に最も良い脱落方法を考える。山行は準備こそ全てだ。全員で準備しよう」
これが、周人が皆に向かって言いはなった最初の決断だった。周人は訓練の段階から一応、チームリーダーとして指名されていた。
「よく言った、周人。さすがリーダーだ」
文也が即座に応じた。それから
「さてと」とにやりと笑った。
「リーダーが方針を示したんだ。ずるい戦略を考え出すのは、僕の役だな」
実は山行サバイバルには、仲間割れの要素や抜け道的な手法が使える点がいくつか仕組まれていた。
いかようにも応用できるルールもそうだ。
また、グループにたった一人だけこっそり携帯の所持が許された事もそうだ。
実際にそれに引っ掛かってあとでケンカになったチームがいたという。
また、喧嘩にまで発展しなくとも互いにあまり口を聞かなくなり、意思疎通のなさから危機があったチームもあった。それを、事後の確認報告チェックリストにいやいや書き込みをしているグループがいたのだ。何より、エマージェンシーコールをする羽目になって、最終日まで続かなかったグループが数組いたということだった。
後で考えると、むしろそれらに引っ掛かってチームが崩壊しないか、真のサバイバルが成し得ないことにならないかも、テストしていたふしがある。
最初、何が仕組まれた仲間割れの要素か周人は気づかなかった。
実は、こっそりと教官から呼び出しをうけて君だけ携帯を所持していいと許可が下りたのは周人だった。リーダーだから万が一のためだ、と。
だが周人はそれを、当然のようにあっさりとチームの皆に話した。
聞いたとたんに罠だと喝破したのは文也だった。
「それなら、地図アプリのあるスマホにしろ。あっちはこっちの位置を分かるのに、自分たちは分からないなんてイヤだね。僕の一番嫌いなシチュエーションだ。まるで手中にされたような感じだ。こっちがあっちを掌中に握りたい」
とことん参謀タイプで、またその線では負けず嫌いになる文也は、もっと教官側の仕込みがあると踏んだらしい。
全員に何か変わったことがないか聞きだした。
「そう言えば」
吹浦が言った。
「部長が、今度の山は君の故郷からちょっと近いね、って言っていた」
「なるほど。これで北海道はなしだな。山の名前は聞かなかったのか」
「聞かなかったけど、だいたい分かる」
「おい、日本アルプスの少女ハイジ。教えろ」
文也はそう言って、彼自身がすでに推測して候補地に挙げていた地域の山地図をいくつか出してきた。吹浦はその二つを指した。
「確かに。この地点からここまで、直線距離で100キロあるな。第1候補だ。それから約100キロ程度という言い方だと、120キロも許容範囲だ。これを第2候補と考えよう。場所はこの二つのどれかと想定していいだろう。この二つだったら何か事故が起きても当局は直ぐに救出できる。登山体制がしっりとしている山脈だ。季節も遭難のリスクが低い」
「そうか、教官は俺たちのことを考えていていくれるんだな」
周人の、人間を信じる単純な言葉を、文也は一蹴した。
「何か事故って、マスコミから責められてたくないんだよ。とにかくこれでシュミレーションしよう」
そしてその二つの地図を眺めていて、ふと
「おい。誰か、お金を持って言っていいと耳打ちされたヤツははいないか?」と妙なことを言う。
「えっ? 部長からなんかそんな風なこと言われたけど、持っていいの? 山の中でそれが役に立つの?」
そう答えたのは白秋だ。
「いくらだ」
「ええっと、見せられた袋には万札が何枚かあったような」
「よし。直ぐにもらえ。それで四日目くらいにこの山小屋に着くようにしよう」
「山小屋?」
「そんなの使っていいの?」
「閉鎖していないか?」
「カネ使っていいの?」
「それサバイバルになる?」
一斉に言葉が帰って来る。
「ルール聞いただろう」
文也は一括で返した。
「『君たちはそれぞれ自分の財布を持つことは許されない』と言っていた。つまり」
文也は皆に、教官の言葉を思い出させた。
「財布を持つなと言われたが、お金を使うなとは言われていない。それから」
皆が理解する時間を待って言う。
「山小屋に寄るなとも」
「だいたい、日本の何とかアルプスでサバイバルしようというのだ。どんな場所にも、登山者がいないなんて場所はない。山小屋も避難小屋も、あちこちにある。ここの教官だと、訓練生が山小屋使用を思いつくくらいは折り込みずみだ」
「少なくとも、円城寺文也が考えつくというくらいは予想するだろうな」
白秋が口を挟んだが、文也はさらりと笑って
「何より」と続けた。
「訓練生を死なせるわけにはいかないだろう。……そこで」
文也はさっさと行程計算に入った。
「始めの食料で三日は持たす。四日目くらいに山小屋に泊まってまともな休憩と食事。この線で行程を考えよう。周人、そうなると期間内であと調達すべき食料は何日分だ?」
「だめだ。食料一日分は、必ず残していたい。非常食とは別に」
「では三日間で許されるのは二日分の食料だ。そのころに着く山小屋にしよう。あるか?」
「体力と足にもよるが、ここら辺に点在しているどれかの山小屋なら、いいだろう。だがどれかに決めないと。山小屋だって予約が必要だ」
「行程の途中で、判断するか?」
「その方がいい。みんなの足を見たい。半日で行程を予測できる。あとはこの電話を使って山小屋の予約をするさ」
皆が笑った。
「小屋を出る日の昼に食べる弁当までな。それから周人、途中で山を降りて、ふもとの町で食料の買いだしができるとしたら、どのあたりだ」
「ええ?!」
「いいのか?」
再び皆の驚きの声を文也は一括した。
「君たちそろそろ、ここがどんな人間を輩出したいか分かってもいいころだろう。この柔軟なルール応用は、我が組織の訓練意図と目的に沿っている。」
思わず、皆が笑った。部長の真似だと分かったからだ。
「この連山だったらここまで縦走して、5日目くらいでこの街に下りられる。だが下山と買い物、再びの登山で一日は必要だ」
「ここは風呂あるか?」
「温泉がある」
「じゃあ一泊2日使おう。行程のまん中あたりで、下山してまともな宿に泊まってお風呂と後半の食料調達。できるか」
周人が答える前にさくらが言った。
「できる、って言ってよ。」
周人にねだる。
「臭いままで12日間なんていやよ」
「そうよ。お風呂入りたい」
鬼頭と吹浦が、さくらの側に立った。
「でもそれだったら、テストになるのか?」
白秋が心配してく口を挟む。
すると、文也はいつものように、知恵と知識と情報を圧倒的に持っている人間の優位さで語った。
「これは『第二種統合サバイバルテスト』だ。いいか、統合だ。全てを統合しろ。それから、登山が目的ではない。登山をするために山に入るのではない。山を抜けて向こう側に行く。山腹をいっても、山里をずっと歩いて迂回してもゴールに着けばいいのだ」
そして続ける。
「日本の国土でサバイバル訓練なんて、そうそうできるもんじゃない。教官たちは、条件の中での課題解決のためのサバイバル能力を見たいんだ。調達能力や柔軟性、応用性その他だ」
文也一人で教官100人に匹敵する。
周人はいつもそう持っていたが、第一種統合テストを経てからは特にそう確信していた。そして、いまや確信はさらに強まった。
文也は不敵な笑みを口元に浮かべて言う。
「これは知恵のサバイバルだ。頭脳の勝負だ。教官たちとのな。勝ち残るのはこっちの方だ」
そういうわけで、山中を舞台とし教官を相手にしたサバイバル合戦が幕を切ってとおとされた。
目的がサバイバルテストに合格することではなく、いかに教官たちの裏をかき、上手くルールを応用し、自分の有利に持ちこみ、このテストを切り抜けるからの「頭脳のサバイバルゲーム」になったのだ。
もちろん、勝つのは文也という天才参謀を擁した周人のチームだった。
かりん隊は、矢倉周人以外は体力のない連中ばかりに思えたのに、何よりも、知恵と知識と妙な能力は格段にある。
ルールが説明されたその日から一週間、チーム全員での話し合いとシュミレーションと準備が始まった。
まず周人の采配でそれぞれが背負おうバックの重量を按配した。すでに数回の登山実施訓練で、皆の実力は分かる。必要なものを全部持ちたいのはやまやまだが、荷物が重すぎても12日間動けない。個人装備さえ、もうしかし誰かに背負ってもらう可能性があるため、厳重に点検する。
女性とさくらには男性より多めの下着と着替え用の服が許された。さくらの力説に、文也も周人も白秋も、納得してしまったのだ。
そうやって一つ一つ検討した品は、誰が持つバックに入れるかまで話し合われた。誰かが間違って自分のリュックを一つ失うはめになっても、別の誰かのリュックにその代用品が入っている状態にした。
それからバックパックの隙間に詰めるものを持ち寄ることにした。共同装備に何を含めるか、知恵の出しあいだ。
それぞれが持っていきたいもの、持っていくべきだと判断したモノを集め、全員で一点一点、検討する。ムダなものを複数持って、全員で脱落するはめにはなりたくない。
詰め込みたいモノを賛成してもらうために、それぞれ説得したり議論したりする。そうして全員で吟味した荷物を、それぞれのバックパックに分担した。
周人は山行に慣れている。以前の所属組織で1週間の山中訓練をしたこともある。だから今回のキーポイントが予想できた。食料と水、そしてこの季節でさえも寒さ対策だ。
それらを考えて、ルートをとるのは、周人だ。
最良のルートにするには、山の稜線を捜してそこを行けばいい。谷や沢に降りてはいけない。山を越えるのが難しくなる。
だが食料と水を自給しなければいけない状況が出てくる。また自分たちで調達した食料を、食べれるように調理する必要がある。生だと、必ず体調を崩す。コンロと燃料は大目に持とう。
それぞれができそうなことを話し合い、もらった食料は1食はかならず非常食用に取っておく。装備は、基本的に寒さを防ぐことと洋服以外には、ほぼ食料を調達し調理する時に役立つものばかりになる。だが服は予想より多めに。山はいつでも急に寒くなる。
入山時にグループで3点選んで持っていってよいギアの中から、周人のチームは迷わず防水カバーにも使えるシェラフ1枚、ランタン、無線セットを選んだ。ちょうど皆が欲しいけど重量の関係で持てないね、と言っていたものだ。
とにかくそうやって、一緒に山に入ったのだ。だから、自分が持ちこんだものが使われる段になると「どうだ」と喜ぶ。使用頻度を高くなると「お前、よく持ち込んだな」と感心される。
詰めこんだ品が、互いが主張した以外の用途で役立つと驚きあい、サバイバル後半になると品物を別の使い方や用途で使用する試みをするようになった。楽しみの一つになったのだ。
事前の申告どおり、吹浦は食べられる山菜や実のなる木をあり場所をよく知っている。白秋を従えて、次つぎに摘んだり集めてきたりする。
文也と周人は沢で川魚を釣ることができた。文也は釣りは初めてだが水を怖がらないし網を仕掛ける漁を好んだ。水の流れを観察して毎回どの川でも、仕掛け場所のコツを直ぐに掴む。どうやら水に対しては、ほんとに勘が聞くらしい。
鬼頭は意外にも料理が得意だった。さくらを助手にして見事に何かをつくっていた。食料が多く調達できた時には、持ち越しができる保存食まで作りジッパー袋に詰めていた。
ガールスカウトも経験したという彼女は、野外生活に慣れている周人と一緒に、初日のうちに太い枯れ木から全員のステッキをつくった。
白秋は空ばかり見ていて、天候の変化を敏感に分かるようになったらしい。吹浦のもともとの山岳地帯に育った人間の感覚を参考にして、直ぐに天気予報をするようになった。
吹浦は、キャンプ地の場所を選び、位置を判断するのが非常に的確だった。地形を読み、周囲を眺め、白秋の天気の予想を聞いて、ここにしましょうと決める。それからたった二つのテントを樹木の間に上手に空き地を使って張る。
最初に決めたことだがテントは自律型ダブルウォール3人用テントを二つ。
6人用テントを一つ持っていくグループも、全員が一人用テントを持つグループもあったが、このチームは周人の主張を聞いた。危険分散と荷物負担を考慮すると、一番それがいいというのだ。
男性4人が一つに、女性二人が一つのテントに入る。
だがこの計画は直ぐに崩れた。まずさくらは女性からすると男にカウントされないようで、初日に一緒のテントに入って以来、平気で毎日一緒にいる。
2回ほど雨の日があり、森林限界を超えた地点でのビバークもあったが、平気だった。シートを地形と風雨に対してちょうどいい位置に張って軽減する。それから夜じゅう快適な位置にテントを張る。
持っている服を全部着こみ、寝袋の中に入る。寝袋と身体の間に隙間をつくるな。それが周人の知恵だった。
一度などは、長雨の間、全員でトランプをした。その代わりに、行程の遅れは昼間の晴れた日に多く歩くことで取り戻した。
状況の変化があると、直ぐに皆で話し合って案を出す。そして判断し、決定して、行動していった。そういう時にも、誰かが詰めたモノや、入山前に皆で相談して選択した3点が役立った。
キャンプ以外は、途中の山小屋宿泊と、里への食料調達と風呂下山は、行程の二日ほど前で予想し、周人の電話を使って予約した。
まるでゲームのようだ。
実際、到着地点が近い最後の夜のキャンプでは、皆で評価コンテストをやった。予想通りのお役立ち品物ベストテン、思いもよらず役だった品ベストテン、1回だけ使ったで賞、全員がお世話になったで賞、役に立たないのに心慰めましたで賞、あれはどこに行ったで賞、……。それこそ、笑ったり拍手したりだった。
お塩と砂糖を多めに持つべきだと主張した鬼頭は、株が上がった。
万能ナイフを当然のように3つ持つよう進言した周人は「よく気がついた」と褒められる。3つあると作業が早く、二人一組で行動するときにそれぞれ一つあると便利だった。それぞれの場所と役割の中で重宝した。
同じように防水マッチを複数持つ事を主張した文也に、皆は感謝した。
女性のどの服を持つかまで指定したさくらは、先見の明があると言われた。洋服があれほど便利に使えるとは誰も思わなかった。
記録用にと持ったペンとノートを使って、二人で自家製の地図を作製した白秋と吹浦には、尊敬の視線が集まった。
鬼頭と文也はそのペンとノートをフルに使って、ほとんどすべてのことを記録した。地図はなくともコンパスを持とう、そう主張したのは文也だ。
それが皆の命を救い、行動を助けたことを全員が実感していた。
周人に対してはもう「一家に一台、矢倉周人だな」「お前が一番、重要なアイテムだったな」と賞賛が集まった。
一番多くの荷物を運び、広葉樹の枝を塊にして毎回野営地の風除けをつくり、沢から何回も重い水を運び、女性陣が風呂代わりに沢に入るときはその上流で見張りをしながら釣りをし、皆を待たせて休ませておいて先に行って道を確かめてはまたもどり、とにかくケロリとして野外活動をこなしていた。
とにかく全員が、最後の自家製コンテストで気分よくなった。
他のチームは準備の段階から、目的を登山と勘違いしている人間がいた。周人もついそうなるところだったが、文也の冷静さで我に返ったようなものだ。
周人のチームは話しあって課題を分析して、準備して山に入り、サバイバルゲームを最終日までめいっぱい使って楽しみ、笑いあいながら降りてきた。
周人のチームが、訓練を無事に終えて最終ゴール・チャックポイントへ帰還したとき、教官と他のチームに驚かれた。
まるで学生のクラブ合宿最終日のように和気あいあいと笑いながら下山したからだ。
そうやって山を出てきたチームを、部長と呼ばれる教官が片方の眉をあげて見た。
そしてその後も統合テストが修了するたびに言うことになる言葉を、大声で行った。「第3組、第2種統合テスト合格。チーム準備完了」
教官や他のチームからは不思議がられた。
だが当然だ。入山する前から、勝負は決まっていたのだ。
こうやって数10種類の訓練と、それを複合した実力をはかる統合テストは7種類行われた。
約1年の訓練期間が修了した後、メンバーは最後の実地テストとしてバラバラに行く先を割り振られた。
矢倉周人は、避暑地の山荘の見張りを命じられた。
そこで、博士と呼ばれる女性と会った。
そして、そのテストに失敗して、いま帰されたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます