第2話 ラプラスの悪魔はかく語りき
ヴィランをラプラス=デモンと協力して退治した一行。
その後、この街の事情を知っているらしいラプラス=デモンから、詳しい事情を聞くことにした。
なぜ自分たちのことを知っていたのか。そして、この想区のカオステラーのことについても。
ラプラス「私を警戒するのは分かるが、まあ順をおって説明するから、あまり殺気立たないでくれ」
ラプラス「さきほど言った通り、私の名はラプラス=デモン。人によってはラプラスの悪魔とも呼ぶ」
ラプラス「そしてここは、ラプラスの想区だ。学者が多く集う想区で、日進月歩で研究が進んでいる」
ラプラス「だから、シェイン君にとっては他の想区と比べて、興味深い物も多いだろうね」
シェイン「悪魔って、あんまりいいイメージが沸きませんけど。でも、シェインは知っていますよ。
シェイン「現在の事象をもとにすることで、その後に起こる全ての未来を演算可能な存在のことだって」
ラプラス「逆に君以外はあまり知らないようだね。これは私の名前であると同時に、物理学の用語でもある。シェイン君が言った通りに」
ラプラス「そして私も同様に、未来を演算することが出来るんだ」
シェイン以外「「……?」」
ラプラス「ふむ、こういえば理解してもらえるようだね。私はこれからこの想区で起こること、その全てを知ることが出来るのだ、と」
エクス「それって……未来が見えるってこと!?」
シェイン「厳密には、過程などが違いますけどね」
ラプラス「結果そのものは、他の者にとっては大差ないだろうからね。別に、そういう認識で構わないと思う」
ラプラス「ま、この能力で私がこの想区でしていることについては……私の運命の書を見てもらった方が早いか」
そう言ってラプラスは、自分の運命の書を一行へ手渡そうとする
タオ「おいおい。運命の書を簡単に人に見せても大丈夫なのか?」
ラプラス「見てもらったほうが早いし、君たちはこういった運命の書など見たことがないのだろう。言葉だけでは、理解不能なようだから」
タオ「随分妙な言い回しだな」
レイナ「でもこれは確かに……こんな運命の書、見たことない!」
エクス「運命が……どんどん書き加えられていってる!?」
ラプラス「それで分かって貰えただろう。私の運命の書は、ストーリーテラーからするべきことを、随時追記される仕組みとなっている」
ラプラスは、それからジェスチャーで催促することで、運命の書を巫女一行から返して貰う
シェイン「空白の書ともまた違う、新しい運命の書ですか。確かに、これは見たことがありません」
タオ「確かに、聞いただけじゃ理解するのは無理だったな、こりゃ」
シェイン「でも、おかしくないですか?」
シェイン「ラプラスさんは、別にストーリーテラーから運命の書に書かれなくても、全てを演算出来るはずでしょう?」
ラプラス「それはそうなんだが……知ることが出来ることと、やるべきことはまた別だということだね」
エクス「どういうことなんです?」
ラプラス「私は、いわば想区の自浄作用といったものなんだよ。他の想区では、どうやらヴィランがその役割を担っている場合もあるようだが」
ラプラス「調律の巫女とは違う手段によって、運命の書に記述されし運命に抗うものたちを機械的に律するもの。それが私という存在だよ」
ラプラス「時に人の運命に干渉して軌道修正をほどこし、時に運命に抗うものを罰する。だから私は、畏怖を込めて悪魔と呼ばれることもある」
レイナ「それって……」
エクス「もしかして、人を……」
ラプラス「時には、そういうこともある。あまり嬉しくも楽しくもない割に、厄介事だけは多い役回りなのだが」
ラプラス「だが、時にはそういったことも必要になってしまうんだよ。この想区内に、カオステラー自体を調律する能力の持ち主はいない」
ラプラス「だから、私は時には実力行使によってでも、カオステラーの発生自体を阻止する役割を与えられている」
ラプラス「出来るだけ穏便にことを進めたいんだが……大体は大元になりかねない人物を、殺すことになるケースも多い……悲しいことだが」
エクス「だからって!」
ラプラス「役割だから仕方ない、とは私もいいたくはない。だが、運命から逃れようとしたものがカオステラーになれば、結果的により多くの犠牲が出る」
エクス「それは……そうかもしれませんけど」
タオ「あんた……それで納得してんのか?」
ラプラス「実のところ、私も万事納得して事を成していることは多くない。だが、これが『ラプラス=デモン』に与えられた役割なんだ」
ラプラス「私が役割を放棄しようと、別の誰かが『ラプラス=デモン』を演じることになる」
ラプラス「君たちは、似たようなケースを知っているはずだ」
主人公たちは、アラジンを思い出す……彼が死んだ後、レイナの調律によって想区は元に戻ったが、アラジンは本人が蘇ったわけではない。
『アラジン』という名の、運命の代行者が登場しただけだった。
しかし……レイナはラプラスの言葉に疑問も感じていた。
レイナ「いえ……確かにアラジンは調律後だったから代行者が登場したけれど……貴方はなぜ代行者が登場すると確信しているの?」
ラプラス「……それは私が、人間の姿をしたヴィラン、とも言える存在だからさ」
調律の巫女一行「「……!」」
ラプラス「人の感情を解し、人の言葉を操り、人の姿で忍び寄る『悪魔』……他の想区では馴染みがないようだけど……」
ラプラス「運命を受け入れぬ咎人へ刑を執行する、ヴィランの代替品とも言える自浄作用。それが私、ラプラス=デモンとその役割なのさ」
調律の巫女一行「「……」」
ラプラス「だから許される……とまでは思っていない。とはいえ、結局役者が代わるだけなら、役割を放棄すべきではないと私は考えているんだ」
そう語るラプラス=デモンが見せた表情からは、拭い去れない葛藤と自嘲のようなものを感じた。
きっと、ラプラス自身も全てに納得してはいないのだろう。だからこそ僕らは、その表情に沈黙で応えるしかなかった。
ラプラス「まあ、この想区は学者が中心の想区だからね。半端に賢い者ほど、己の運命に抗いたくなってしまうらしい」
ラプラス「そういった輩は対応策もそれなりに小賢しかったりするし、ヴィランだけではかえって大事になることも少なくなかった」
ラプラス「そういった事情を踏まえて、この想区では私のようにヴィランとも異なるアプローチによって、自浄作用を担う者も必要になったんだ」
ラプラス「とはいえ、最近は運命の書に書かれた内容を無視していることも多いのだが」
レイナ「どういうこと?」
エクス「それだとカオステラーが発生してしまうと、言ったばかりじゃないですか」
ラプラス「既にこの想区には、カオステラーが発生してしまった。他のカオステラー候補を倒すのも大事かもしれないが」
ラプラス「とはいえ、私はカオステラー自体から目をつけられてしまっているし、今までは独りでヴィランの退治も行わないといけなくてね」
ラプラス「今までは、それらの対処で手一杯だったのさ。未来が見えたところで身体は一つなのだから、一定期間で対処可能な数には限りがある」
エクス「なるほど……」
シェイン「たしかに、それはそうですね」
ラプラス「第一、調律の巫女が来たからにはね。調律が行われれば、想区の状態はリセットされるだろう?」
ラプラス「そういうわけだ。大事の前の小事ということで、今から火急ではない運命の書の内容は、意図的に無視させて貰うことにした」
レイナ「想区の内容がリセットされることまでもう知っているなんて……」
エクス「やっぱり、未来が見えるということに嘘はないらしいね」
シェイン「ラプラスの悪魔ですからね。なにも不思議なことではないです」
タオ「けどよ、そこまで凄い能力の持ち主なのに、なんでカオステラーの発生を防げなかったんだ?」
ラプラス「全ては不可抗力なんだよ。本来なら自浄作用であるラプラスの悪魔が、その対処にあたるのだが
ラプラス「しかし、その能力を持ってしても、対処不能な事態が生じてしまったのさ」
ラプラス「いや……それゆえに、と言うべきなのだろうな、この場合は……」
エクス「あの……?」
レイナ「言っている意味が、よく分からないわよ」
ラプラス「すまない……ちょっと感傷に浸ってしまった。今の話は、頭の片隅に置いといてもらえるかな」
ラプラス「ともかく、私自身は調律を行えないために、こうして君たちを待たなければならないような事態となっていたわけだが……」
そこでラプラスは、突如として後方を見渡す。
ラプラス「おやおや、噂をすれば影というが……やはり邪魔をしにくるか」
その言葉の後に、突如湧き出るヴィランたち。その様子に巫女一行は驚く。
エクス「今、反応が早すぎなかったですか? まるでヴィランが出てくるのが分かってたみたいに」
シェイン「分かってたんだと思いますよ、新入りさん。なにせ、ラプラスの悪魔ですからね」
レイナ「全てを知ることが出来るって……ヴィランがどう出現するかまで分かるっていうの!?」
ラプラス「その通り。これから起こること、その全てを演算することが出来るのが私の能力だ。この想区で起こる出来事は、全て知ることが出来る」
ラプラス「さて……続きの講釈はこの後としよう。調律する必要があるカオステラーの核までは、まだまだ遠いしね」
そうして、ヴィランとの戦いがまた起こる。(引き続き、ラプラスがゲストとして選択可能)
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