調理するもの

魚の血抜きを終えた俺は早速調理を開始した。


モモは何ができるのかワクワクしている。あと服を着せといた。俺のYシャツだ。

モモの体のサイズに合っていないが、そこが萌える。可愛い。


作ろうとしているのはテイルナマズのステーキとコゴイの天ぷら…なんだけども。


「フライパン&鍋がない!」


そう。フライパンと鍋がないのですはい。もっと言うと調味料と調理油がない。

あと火を点けるものもない。どーすりゃいいんですかね。


「火起こさなかアカンなこれ…」


火起こし。

それは遥か昔から行われたものである。これはメンドくさいから説明しなくていいか。

火の起こし方はキリモミ式やマイギリ式、ヒモギリ式、ユミギリ式やノコギリ式など、色々な火の起こし方がある。

この中ではマイギリ式、ユミギリ式、ノコギリ式が簡単な方に入るんだけど、

マイギリ、ユミギリ式に必要な紐がない。

ノコギリ式は?と思ったが、竹がない。どこに生えてんの?


「…。となるとマイギリ式でやんなくちゃいけないのか…」

「パパ何するのー?」


モモがブカブカの裾の中から手を出して、俺の服を引っ張ってきた。

可愛い…じゃなくて!


「お料理作るためには火が必要なんだ。それでどうやって火を点けるか考えていたんだ」


そう言いモモの頭を撫でた。

モモは頭を撫でられるのが好きなのか。もの凄く眩しい笑顔を繰り出してきた。

ヨミは98のダメージを受けた。なんちって。


「火ならつけられるよ?」


そう言ったモモは指先から鶏の卵ぐらいのサイズの火の玉を出した。

なんてことだ…!父親であるこの俺が…早くも娘に抜かされるなんて…!


「そ、そうか。じゃあ一緒に木の枝と葉っぱを集めよっか」

「うん!」


俺はプライドというものを娘にズタボロにされながらも、モモと一緒に枝と枯れた葉を拾いに森に中へと入っていった。





枝と枯れた葉を集めに森に入って1時間ぐらいたった。

思ったより集めるのに時間がかかったが、それにより良い物が手に入った。


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コーシャ


説明

豆状だが、すり潰して使う。強い独特の香りで辛い。

主にステーキなどに使われるが、用途は沢山ある素晴らしい調味料。


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「調味料キターーーーー!!!」


初めて見つけた時は本当に喜んだ。だって調味料だよ?必要不可欠な物なんだよ?

発狂せずにはいられないじゃないか

…そんな目で俺を見ないでくれモモよ。俺が食に飢えた動物を見るような目で見ないでくれ。泣けてきちゃう。


そう心の中で叫びつつ、河原にあった石を積み上げその側に木の枝と枯葉を置き火を点けてもらう。モモに。

点けてもらったら火の大きさが安定するまで待った。そのあと少し大きめの石を放り込んだ。

石焼きステーキを作るためだ。


という下準備ができたら料理を開始します。

作る料理はテイルナマズのステーキとコゴイの塩焼きならず胡椒焼きを作ろうと思います。


先に血抜きしたテイルナマズを綺麗に水洗いしたまな板ならずまな石に置き、背びれから包丁を通す。

胸びれあたりまで通したら真下に包丁を落とす。この時に骨ごと切らないようにしなければならない。

なぜなら切れ味がバケモンだから。


骨に到達したら次は胸びれの下あたりに両方の面に刃を通す。通したらナマズの首をへし折って引っ張る。

そうすると内臓が取れるのだ。だけど内臓がまだ残っているから、肛門の場所に包丁を通し、腹を裂く。そうすれば残った内臓を取り出すことができる。内臓と頭は使い道がないんで土に埋めた。


次に3枚おろしをする。尾びれに近い身から切り込みを入れ、そこから包丁を入れ、骨に沿って切り込みを入れる。そうすると身と骨が分かれる。これを両面行う。3枚おろしができた。骨は3当分にしてこれも土に埋めた。

この光景を見ていたモモは、


「パパすごいね!」


眩しい笑顔を見せてくれた。なんて可愛いんだ俺の娘よ!

天使マイエンジェルには笑顔が1番似合うのです!


さて料理の続きをしましょう。


3枚おろしを終えたら次は皮引きを行う。

尾びれのほうに浅い切り込みを入れて今回は手で引く。そうすれば皮引き終了。


「きれいだねー」


モモの方が綺麗だよ。はい気持ち悪いこと言ってすみませんでした。本当に可愛いんです。

分からないか?小さい少女を可愛いと思ったこと。それと同じだ。……多分。


皮引きを終えたらすり潰したコーシャを身の上にまぶす。

ここからが難しい作業だ。俺はまだ死にたくない。なぜなら…


「火の中に手突っ込まないと石が取れない!」


そう、石が取れないのだ。炭トングがあれば良いんだけど…それがない。

熱いのは嫌だし、かと言って飯食えないのも嫌だしな〜。ここは腹を括ろう。


まず川に手を突っ込み、火の前に立った。そして、


「行くぞオラアアアアア!」


火の中に手を突っ込んだ。


「痛い痛い痛い痛いーー!!!」


もうね。熱いを通り越して痛いです。それでも僕は頑張ります。


俺は火の中から大きめの石を取り出し、その上にコーシャをまぶしたナマズの身を置いた。

じゅおぉ…と音を立てている間に俺は川の中に再度手を突っ込んだ。

防御力4桁越えてるのに火のダメージを食らうというね。さっさと属性耐性解禁してほしいっすマジで。

俺が川に手を突っ込んで動かせるまで待っているとモモが、


「パパだいじょうぶ?」


と泣きそうな顔で聞いてきた。


「う、うん。大丈夫だ、問題ない。ツゥ!」

「だいじょうぶじゃないじゃんパパのバカ!もう知らない!」

「嘘です冗談ですモモさん!大丈夫じゃないです死ぬほど痛いです!」


モモに嫌われたら俺は俺は…もう立ち直れないです!


「それで良いの!いたいのいたいのとんでけー!」


モモが可愛い俺の世界のおまじない的な何かを唱えた瞬間、みるみるうちに火傷が引いていった。


「おぉ…」


そして完全に火傷が消えた。手を握ったり開いたりして見痛みがない。

…完全に親としての威厳がなくなった気がするのは気のせいでしょうか。


「ありがとう…ありがとうモモ。お前ってやつは…」

「いーのいーの!パパのせわをするのはむすめのしごとだから!」


そう言って俺の頭を撫でてきた。

娘に撫でられるのも悪くないな。ってこれじゃ変態みたいじゃないか。


俺は調理を再開した。

ステーキは良い具合の焼き加減で美味そうだった。

それを見たモモは、


「ほわー!おいしそう!パパこれ食べていい!?」


よだれを垂らしながら俺に食べる許可をとってきた。


「まだダメだぞ。まだコゴイの串焼きを作んなくちゃいけないんだから」

「はーい」


モモは少し残念そうな声でステーキから離れた。

拗ねているモモも可愛い!


ちょっと微笑んだあと、俺はコゴイの胡椒焼きを作ることにした。


作り方はいたって簡単。コゴイの内臓を取った後、口から枝を突っ込んでコーシャを掛けるだけ。

その後火の前に持つところをつき刺せば勝手に焼けてくれる。


丁度いい焼け具合になったら枝を地面から引き抜きモモに渡した。


「それじゃ、いただきますか」

「はーい」


俺とモモは作った料理を美味しくいただいた。ちょいと辛かった。




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勇者召喚されたら無能とか言われ、知らない場所に転移された。 イルカとオルカ @kiyoinuco

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