少女のようなもの

皆さんは桃太郎という童話を一度は聞いたことあるだろ?


お婆さんが川へ洗濯へ行き、お爺さんは森に木こり?に行くんだっけか。

お婆さんが洗濯している時にどんぶらこ〜どんぶらこ〜桃が流れてきた。

お婆さんはその桃を拾い、家に持って帰った。たしかこんな感じ。


川に赤ん坊が入る様な桃が流れてくる訳がない、そう思っていた。

しかし此処は異世界なので…

川で制服洗っていたら、赤ん坊サイズが入る桃じゃなくて10歳くらいの子供が入る様な桃が流れてきました。

異世界の力ってスゲー!…なんて言っている暇はない。


「あの桃を陸に上げよう。もしかしたら食料かもしれないし」


俺はそう決めて、流れてくる桃を受け止め、桃を持ち上げた。


ーー思っていたより軽いな。本当に中に人でも入ってんのかな。


俺は桃を胸の高さまで上げ、ぐるぐる回った。

やばい。少ししか回っていないのに気持ち悪くなってきた。


目が回り、気持ち悪くなった俺はその場で倒れ、桃を地面にぶつけてしまった。そして何故か…


「あう!」


桃の中から可愛い声が聞こえた。男の子が出せそうにないくらいの高い声の様に感じた。


ーー桃の中に、何かいるッ!


俺は目の回った状態で桃に近づいてその場で座り、桃の頭のちょんと出たところに指をぶっ刺し、開いた。

そしたら…


みんなはどう想像するだろうか。桃を縦に裂いたら少女がいた。しかも全裸。

少女は体育座りをして首を傾げているであろう。そうだろ!?そうだと言ってくれ!


俺の場合は…


「パパ!」


全裸の少女に抱きつかれました。しかもパパ呼ばわり。

桃を縦に裂いた瞬間、全裸に少女が飛び出し、俺に抱き付いて、パパと呼んだのだ。どーいうこったい。

生き物で言うところの初めて見た生き物が親と思い込む、刷り込み現象ってやつか?


「あー、すまんが俺はパパじゃない」


俺は桃の少女を引き剥がし、肩に手を置いて、少女にめんと向かって言った。

こう言うしかないだろ。そしたら…


「じゃあパパはパパじゃないの…?」


桃の少女は上目遣い&涙目で俺に聞いてきた。

ヤバいこの時どうすんだ?なんて言えばいいんだ?どうしようどうしよう。

俺が黙って考えていると、


「うわああああん!わたしのパパ、いないんだああああ!うわあああああん!」


泣き出してしまった。

今度こそどうしよう。マジでどうしよう。マジと書いて本気でどうしよう。

もう一層のこと俺がこの子のパパになっちゃうか?いやでも、俺がこの子の父親になれるだろうか…。


…考えても仕方がない。可愛い子が泣いているんだ。このまま放置していたらゴブリンにあんなことやこんなことをされてしまうし、ゴブリンに会わなくても餓死してしまうかもしれない。


ーーよし。俺がこの子のパパとなろう。


「あのな、聞いてくれ」

「ふえ?」

「さっき言ったことは、本当のことなんだ。血が繋がっていないからね」


俺は桃の少女に真剣な眼差しで喋った。


「それじゃ…パパは…ふえぇぇ…」

「おっと!泣くのは早いぜお嬢ちゃん。確かに血は繋がっていない。でも繋がってなくても親子にはなれないってことはないだろ?」

「うん…それじゃあ…」

「そうだ!ということで今日から君のパパは俺だ!よろしくな?」


俺はそう桃の少女に言って、抱きしめた。


よしこれで完全に泣き止む筈だ。ふう…案外子育てって難しいもんなんだな。

俺は桃の少女を抱きしめながら頭を優しく撫でた。

ここで少女はやったー!って喜ぶであろう。


「ふえええん!パパぁ…寂しかったよおおおお!怖かったよおおおお!」

「 え!ちょっと!泣かなくてもいいじゃないか!…どうすればいいんだ?」


少女は何故かまた泣き出してしまった。なんで?どうしてなの?


俺はオロオロしながら、桃の少女が泣き止むまで頭や背中を優しく撫でまくった。




桃の少女が泣き始めてから数十分後。

少女は泣き疲れたのか、ぐっすり眠ってしまった。

考えてみればこの子は裸だったので、上の制服を下に敷き、その上で少女を寝かせて、毛布代わりに俺が着ていたYシャツを少女の体に被せた。


「ふう…」


俺は額の汗を着ているTシャツに擦りつけ、息を吐いた。


「あ、この子の名前聞いてなかったな。でもあるのかな?この子の名前」


もし無かったときの為に考えてみよう。


桃から出てきた女の子だから、桃子か?でも安直すぎて可愛くない。

英語にしてみるとか?ピーチガール…論外だ。全然可愛くない。


この子の外見は、髪の色は地球ではいないであろう、ピンク色の髪で、髪型は…ミディアムボブって言うんだっけ?肩に付かないくらいの髪の長さだった。身長は130cm後半ぐらいで、お胸は…壁とは言えないが、

決して大きいという訳ではない。多分…Aカップぐらいだろう。

多分というより絶対この子は美人さんになって、色々な人に告白されるであろう。…あれ?考えていたらなんかイライラしてきたぞ?これが娘を想う、父親の気持ちなのだろうか…。


おっと話がずれた。この子の名前を早く決めなくては。


ピンク色の髪とミディアムボブ…まさにT◯LOVEるに出てくるモ◯さんじゃないですか!VMC!

しかも桃から出てきた女の子。桃子は思ったより可愛くないし桃華もどうかと思ったが、やっぱりそのままでいいよな。


ーーこの子の名前はモモ。桃から生まれた、可愛い可愛い俺の子だ。


桃の花言葉では天下無敵、気立てが良い、という言葉がある。

この子には天下を取れるような美しさや、誰にでも優しく、そして誰にでも厳しくなれるような、そんな子になって欲しい。


そう思いながら俺は、桃から生まれた少女、モモの頭を優しく撫でた。

モモは撫でたことに気づいたのか、もしくは夢の中で嬉しいことがあったのか、笑みを浮かべていた。




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