第21話 ラスボスとしての決断
僕らは倉庫に到着した。
倉庫……。
何だか懐かしい気持ちになる。
「まぁ、ナツメグの身に起きたことをまとめると、チートマンとかを罰することができる機能がついたってことでしょ?? 警察みたいな状態になったって感じ!! 警察!!」
「大体はそんな感じかな……」
「じゃあチート使ってるやつ見かけたらナツメグに言えばいい??」
「そうそう、そんな感じでいいよ。ロメオαと鈴木君は今マークしてるところってことで」
「そっかぁ……。あんなやつらはやくアカウント停止してやれば……とも思うけど、何か憎めないんだよね」
「僕もそう思うんだ、不思議と。……だから、きっとそのうち心を入れ替えてくれると願ってるんだよ。根は良い人たちだと思うんだよな……」
「無理だと思うけど……!! いや、思うっていうか、無理でしょ!!」
「まぁ、出来る限りやってみるよ。というか現状、xo魔梨亜oxは、彼ら以外にチート使ってるプレイヤーって見たことあるの?」
「……ないかな…………。このゲーム、そこまでバグが横行してるってわけでもないからね。やろうと思っても意外と抜け道がないらしいよ!!」
そんなようなことをロメオαも言っていたな……。
瀬津那少年はやっぱりヤバいやつだったんだ。
xo魔梨亜oxは倉庫から、回復アイテムを引き出す。
鈴木君は僕におぶられていて、全く動かなかった。
元々HPがかなり少なかったのに加え、UFOに乗せたことで、小心者の鈴木君は意識が飛んだのだろう。
「鈴木君が起きる前に、xo魔梨亜oxに言っておきたいことがあるんだ。……ていうかさっきも言ったことなんだけどさ。僕が運営側になってしまったことを、誰にも言わないでほしい」
「それは分かったよ、魔梨亜様とナツメグだけの秘密!!」
「ロメオαにはもう感づかれたっぽいんだけど…………」
「えっ…………。一番気づかれちゃダメな人じゃん!!」
「ぽ、ぽいってだけだから……! うん!」
「えーっ!! ナツメグと魔梨亜様の秘密がーっ!! ……じゃあ鈴木にバレるのも時間の問題のような気もするけど……、でも、とりあえずあたしは誰にも言わないことにするよ」
「ありがとう、xo魔梨亜ox」
xo魔梨亜oxはハンブンポーションを鈴木君に使う。
僕におぶられていた鈴木君は、ゆっくりと動き始めた。
回復薬を使っても、回復するのは一瞬ではない。
数十秒はかかるのだ。
「ていうかxo魔梨亜oxさ、この街まで来たんだったら、宿屋に泊まっても良かったんじゃない?」
「今、結構混んでるんだよ、宿屋!! 皆が塔に挑戦するようになったからさ。あとは、お金の節約!! 宿屋の値段バカ高いしね!! 高い!!」
そういえばそうだ。
回復系のことは何かと金がかかる。
鈴木君のHPが半分まで回復し、自ら地面に降り立った。
彼は大きく伸びをする。
「ここは……、はじまりの街かい?」
「この、xo魔梨亜ox様とナツメグに感謝してよね!! ホントだったらあそこで死んでたとこだったんだから!!」
「その節は……本当に君たちには感謝している、ありがとう」
鈴木君は頭を下げた。
彼は回復薬をxo魔梨亜oxにあげたりもしてたし、最近彼がイイ奴に見えてきていた。
見た目はおかしいが。
「じゃあ、ナツメグ、ついでに鈴木、暇でしょ?? 今から月の塔攻略しようよ!! 月の塔!!」
「xo魔梨亜ox君、それはいい考えだ。俺もそこを攻略したいと思っていたところだからね」
「攻略したい……?? 強くなるための修行中って言うなら、まずその塔に行くべきじゃないの……?? 既に攻略しておくべきところでしょ!! 逆に他にどこで修行するんだよ!?」
「い、いや、その……。時間がなかったんだ、基礎訓練でね、色々と…………」
「相変わらず鈴木は言い訳がすごいな……!! 言い訳の星から来たのか?? ……まぁいいや。月の塔はこの街の北の『平野』にある。すぐだよ。よし、皆で行こう!! ナツメグも!!」
僕らは平野に向かって歩き出した。
鈴木君は特に円盤のことなど気にしていないようだった。
結構なダメージを負っていたし、忘れているのかもしれない。
……ノリで今xo魔梨亜oxについていってるけど、僕は月の塔を攻略することができるのだろうか……?
僕はモンスター側の人間だ。
よって、モンスター側の攻撃は受けることはないだろう。
むしろxo魔梨亜oxたちからの攻撃は受けてしまうような気がする。
気がするっていうかほぼ確定で喰らうだろう。
何しろラスボスなのだから。
つまり、xo魔梨亜oxや鈴木君には、明らかに僕が敵だとバレるということになる。
やっぱり、冷静に考えてラスボスが自らダンジョンに行くってどうかしてるよな。
その様子をモンスターたちが見て「ナツメグが寝返ったぞ」ということになって、大変なことになるかもしれないじゃないか。
……よし、やめよう。
いいことがまるでない。
ここは全力で、断ろう。
そういえば、夜、最後の塔に戻らなくてはならないんだった。
ユーリと話をつけるために……。
僕は呑気に月の塔なんて行ってる場合じゃない。
そんなことを思っていた矢先に、その事件は起こったのだ。
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