第20話 告白
ボウケンクエスト -はるかぜ街-
無事にウニュ町を抜けた僕らは、はるかぜ街に到着した。
町を抜けることが目的ではあったが、そのへんの平野とかに鈴木君やらxo魔梨亜oxを置いていくわけにはいかないので、この街まで来たのである。
あたりはもう暗くなり始めていた。
「いやー、ナツメグ、助かったよ!! ……鈴木は、寝てるっぽいけど……」
UFOから降りながら、xo魔梨亜oxはそう言った。
その長い赤い髪が風に揺れる。
鈴木君は寝ているというか、どうやら失神しているようだ。
「にしても……、ナツメグ。これって、どういうことなの……?? UFO…………」
xo魔梨亜oxが円盤を指差しながら言う。
僕はド派手な衣装で意識を失っている鈴木君を抱きかかえながら、その円盤から降りた。
道行く人がこの妙な光景を見たら、通報するだろう。
「どういうことと言われても……。ぼ、僕は今……。その……そうだね…………」
「ナツメグ、今、絶対ヤバいことに首突っ込んでるでしょ……??」
「GMに……なったんだ、僕は」
「GM……?」
流石に、ラスボスになったとは言えなかった。
UFOを街の入口の草むらのあたりに引き摺っていき、とりあえず草木の中に隠しておく。
これで大丈夫だろう。
「うん。GM。僕は、運営の手伝い的な……ことをしてるんだよ。このゲームを良くしようとしてさ! だから、パトロール的なことができるようにこの円盤をもらって……」
「ナツメグ…………。ナツメグにしては面白くないギャグだね!!」
「いや、ギャグじゃないんだけど……。ていうか、逆に、普段そんなに僕のことを面白いと思ってたの?」
「GMって……。だって、ナツメグがそんな簡単になれるものじゃないでしょ?? ナツメグは普通のプレイヤーじゃん!!」
「廃人だからっていう理由でスカウトされてさ……。信じてもらえないかもしれないけど……」
「廃人だとGMになれるの?? え??」
「このゲームのことを知りつくしてるからだと思う。流石に何も知らない人はなれないでしょ。xo魔梨亜oxの言う通り、僕はもう普通のプレイヤーじゃないんだ」
「そっかぁ…………。そっかぁ。確かに、ナツメグはそんな下らない嘘つかないしね…………」
さっきはギャグだと思ってたじゃないか。
「xo魔梨亜oxを驚かせてしまったみたいで……。何か、ごめん」
「…………!? 何でナツメグが謝ってんの?? 別に今までと何も変わんないでしょ??」
「まぁ確かに、そこまでは変わらないかなぁ……。こうして街に来て話したりもできるしね」
「……あ、わかった!! だからウニュ町にいたの……?? パトロールでさ!! パトロール!!」
「あー、まぁ、そんなとこかな…………」
「待って、もしかして、ナツメグともうダンジョンとか行けなくなったってこと?? なの??」
「いや、どうだろ。……行けるのかな? よく分かんないな……」
「行ける?? 行けるよね!! じゃあ後で行こうよ!! 月の塔!!」
「え……。だから、行けるかどうか……」
「このxo魔梨亜ox様と一緒に月の塔に行けることを光栄に思いたまえ!!」
「…………。まぁ、いいか…………」
……待てよ。
僕が塔なんかに登って大丈夫なのか……?
っていうかGMだって言ってんのに、何でこんな容赦なく誘ってくるんだ……?
……変わらぬ付き合いができると信じているからこそか。
それは何だか嬉しかった。
「じゃあ前と全く変わんないじゃん!! PvPもできるっしょ?? ゴーストの森にもこの前入ってたし……。いけるよね??」
「……そ、そのへんは僕も、なったばっかでよく分かんないんだよね……」
僕は本質的にラスボスだから、他プレイヤーからの攻撃は絶対喰らうはずだ。
なんならPvPエリアじゃなくても僕に攻撃できるんじゃないかと思う。
つまり、xo魔梨亜oxがモンスターに撃って起こった爆発に巻き込まれて死んだりする可能性もあるってことだ。
「いやー、楽しみだね!! 楽しみ!! GMと一緒にプレイできるなんて!! 運営を味方につけたようなものでしょ??」
「運命を味方につけたみたいな言い方だな……。あーでも、xo魔梨亜ox、周りには内緒にしておいてくれるかな…………」
「え、何で?? 自慢したい!! 自慢!!」
「いや……その、あれなんだよ、そう、それ…………」
「……は?? もしかして、ロメオαとかああいうチート野郎を捕まえたりするために、敢えて身分を隠してやってるとかそんな感じ??」
「あ、それ、……それ! そういうことだよ。流石、xo魔梨亜oxだよ。完璧。100点」
「……じゃあ何でこの前ゴーストの森で、ロメオαとか鈴木を捕まえなかったの……? あの時はもうGMだったんでしょ?」
「え……。そうだけど…………。うーん…………。まだ、捕まえる時じゃないって思ったんだよ」
「……え、何言ってんの……??」
「あいつらは、悪い奴じゃなさそうだし……。できることなら更生させたいんだ。プレイヤーを削除してしまうことは簡単だ。でも、それは教育の本質ではない」
「本質? 何かよく分かんないね。魔梨亜様は、難しい言葉は分からないの!!」
僕も何言ってるか分かんなくなってきた。
そよそよと吹く風が、xo魔梨亜oxの灰色のプリーツスカートをはためかせる。
僕はそこをじっと見つめながら話を続けた。
「あとはその……。多少泳がせておいて、アジトを突き止めたりしてさ、そこにいる仲間たちをまとめて処罰することもできるじゃないか」
「ここに仲間いるじゃん。失神してるやつ」
「そ、そうだね……。あ、そうだ。彼を復活させてあげるんじゃないの? xo魔梨亜oxの倉庫に預けてあるアイテム使ってさ」
「そうだった!! 倉庫に行かなきゃ!! 倉庫!!」
鈴木君を背負ったまま、xo魔梨亜oxの後を歩く。
それなりの人で賑わうはじまりの街。
ただ、この前よりも三分の一ほど人が減った印象だ。
何となく消えたという感じではない。
妙な胸騒ぎがした。
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